お知らせ

 今回は相談事例を通じて、相続登記義務を履行しない場合の罰則や、できない場合の対応方法などについてご紹介します。

 法改正により、相続登記が義務化されることになりましたが、義務を履行しない場合やできない場合は、どうなるのでしょうか。

 正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料の対象となります(改正不動産登記法第164条第1項)。「正当な理由」とは登記官の判断となりますが、相続登記をするには困難な状況だと認められる必要あります。

 相続登記の義務化に関する法改正は、2021年(令和3年)4月28日に公布され、2024年(令和6年)4月1日より施行されます。
 原則として、相続や遺贈により不動産の所有権を取得した相続人は、その相続人が、「自己のために相続が開始したことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日」から3年以内に相続登記の申請をする義務が生じます(改正不動産登記法第76条の2第1項・第2項、第76条の3第4項)。

 法律施行日(2024年4月1日)より前に相続が開始している(「自己のために相続が開始したことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日」がある)場合も、施行以降は、相続登記の義務の対象となります。この場合、義務の履行期間は、2024年4月1日から3年間となります。

 相続登記の義務履行期間内に、遺産分割協議がまとまらず、具体的にどの相続人がどの不動産を取得すべきか決まらない場合は、相続登記の義務履行期間内に、法定相続分どおりに相続登記を申請し、遺産分割が成立してから3年以内に、遺産分割の内容どおりの相続登記に直す義務を履行するという方法が考えられます。

 その他、新たに創設される「相続人申告登記」を使うという方法もあります。この申告登記は、ひとまず自己が相続人である旨を申告しておく制度であり、相続登記の義務履行期間内にこの申告登記をすることで、義務を履行したことになります。この方法による場合も、遺産分割が成立してから、3年以内に遺産分割の内容どおりの相続登記をする義務があります。

 なお、遺贈により不動産を取得した者が相続人ではない場合には、相続登記義務の対象ではありません。

 

 

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 相続時精算課税制度を適用して贈与をした場合でも、基礎控除が控除できるようになると聞きました。本当でしょうか?

 相続時精算課税制度を適用して贈与をした場合でも、令和5年度税制改正により、基礎控除が控除できるようになると聞きました。これまでは基礎控除がなかったと思いますが、本当でしょうか?

 現行の相続時精算課税制度は、非課税贈与額は累計で2,500万円とし、これを超えた場合に一律で20%の贈与税が課される制度です。基礎控除はありません。これが、令和5年度税制改正において、基礎控除として毎年110万円を控除できる改正が予定されています。

1.相続時精算課税制度とは

 相続時精算課税制度とは、贈与を受けたときの贈与税の計算において、自ら選択することで適用することができる制度です。

 その特徴としては、主に以下のとおりです。

  • 通常の贈与税の計算(暦年課税による計算)とは違い、原則、この制度を選択して贈与を受けた財産の合計額が累積で2,500万円を超えるまで贈与税は課されず、超えた段階から一律20%の税率で贈与税が課されます。暦年課税とは違い、基礎控除はありません。
  • この制度を適用することができるのは、原則、父母又は祖父母から贈与を受けた子又は孫であり、それぞれに年齢制限があります。
  • この制度を選択した場合には、その後の相続時精算課税に係る贈与者(以下、特定贈与者)からの贈与については、相続時精算課税制度を適用して贈与税の計算をしなければなりません。
  • 特定贈与者が亡くなった場合には、相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)の合計額を相続財産として、相続等により取得した他の財産と合算して相続税を計算した上で、すでに納めた贈与税額がある場合には、相続税額から控除して相続税額を算出します。その際、控除しきれない贈与税額があるときは、相続税の申告をすることで還付を受けることができます。

 なお、特定贈与者と受贈者の年齢制限については、以下のとおりです。

  その年1月1日現在の年齢
特定贈与者 60歳以上
受贈者 18歳以上
(2022年3月31日以前は20歳以上)
2.令和5年度税制改正

 2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」には、次の改正が記載されています。

  • 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとする
  • 特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする

 この改正は、2024年(令和6年)1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されることが予定されています。

 なお、上記の他に、相続時精算課税制度の適用に係る贈与財産について、その贈与の日からその特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に、災害によって一定の被害を受けた場合には、その被害を受けた部分に相当する金額を控除することができる旨も改正として予定されています。こちらは、2024年(令和6年)1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用されることから、すでに贈与されている財産であっても適用対象となる点にご注意ください。

 相続税や贈与税に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP「No.4103 相続時精算課税の選択
 財務省HP「令和5年度税制改正の大綱」PDFなど

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 お正月の前後1ヶ月の間、テレビ番組を見ていると、
 日ごろ見たことのない会社のCMを目にすることが無いでしょうか。 
 この時期は、CMの放映料金が安いからかなと思っていましたが、
 理由はそれだけではないようです。

 こちら京都では、地元銀行の 「ながーい、おつきあい。」というCMが、
 長く続いていて、文字通り長く親しまれています。
 また、村田製作所のCMもずいぶん長く放送されています。
 以前には、ロポットと異星人的な女の子が登場する
 ちょっと変わったCMが作られていました。

 どうして村田製作所が正月にCMを多く流すかというと。
 過去に、社員が帰省した際、「○○製作所」という社名から、
 町工場に勤めていると勘違いされ、気まずい思いをしたことが多くあり。
 知名度を上げることを考慮してのことだそうです。

 京都にある電子機器メーカーの村田製作所は、
 セラミックコンデンサーの分野では世界に屈指のシェアを誇る会社です。
 創業者である村田 昭氏が家業の陶磁器類の焼き物製作を引き継いだ時には、
 一般的な陶磁器や絶縁体に使う碍子を作っていました。

 戦時下における政府の統制により、同業者を集めてひとつの会社とする
 企業合同体制を敷かれていたときのことです。
 財閥系のメーカーから、特殊陶器を製作する依頼が入ってきたのですが、
 業界が伸びるチャンスと見る村田氏に対して、
 他の同業者は首を縦に振る気配がありませんでした。

 そこで、手持ちのお金をはたいて工場を借り、
 単独でその注文の製作に取り掛かったのです。
 しかし、陶器を焼くための燃料の調達に手をこまねいている間に、
 メーカーから返ってきたのは「別に工場を作ってしまった」とツレナイ返事でした。
 その代わりに紹介されたのが、セラミックコンデンサーの製作だったのです。

 その時に知り合ったのが、京都大学のある助教授でした。
 終戦後の混乱期の中で、売れるものは何でも作り、
 その日を食いつなぐのが精一杯の時期でした。
 助教授も研究費を捻出するため、
 簡単な電気製品を作るアルバイトのようなことをしていたのです。

 そこで、研究応援する代わりに、セラミックコンデンサーの開発に
 協力してもらう様申し入れをします。
 まもなくして民間ラジオ放送の開始により、
 コンデンサーを多く使うラジオが普及し、
 村田製作所は電子機器メーカーへと礎を築いたのです。

 企業の草創期における出会いは、事業が大きく変化するきっかけとなります。
 出会というのは、人の結びつきもそうですし、手がける商品の場合もあります。
 特に、人との出会いは、お互いの良さを引き出す「触媒」の役割を果たし、
 決して一人では成し得なかった、大きな実りをもたらすことになるのです。

 相続を理由に契約を中途解約し、土地の明渡しを求めることはできますか?

 第三者に貸している土地を相続しました。この土地について、今と違う形での活用や売却を検討しています。相続を理由に契約を中途解約し、土地の明渡しを求めることは可能でしょうか。

 契約の中途解約ができるか否かは、契約の種類等により異なります。まずは契約内容を確認しましょう。

1.中途解約を検討する場合の確認事項

 中途解約を検討する場合、下記を確認する必要があります。

  • ①賃貸借契約の種類
  • ②貸主の死亡によりその地位は相続されるのか否か
  • ③②で相続される場合、契約期間内に貸主から中途解約することはできるのか否か
2.土地の賃貸借契約の種類別中途解約の可否

 土地の賃貸借契約には、主に次の(1)から(3)の3種類があります。それぞれの契約について、上記1.の3項目を中心にご説明します。

(1)建物建築を目的として土地を貸す契約(普通借地契約)
  • ①普通借地契約
  • ②貸主の地位が相続される
  • ③契約期間内の中途解約は不可。契約期間満了時に更新を拒絶することはできるが、その場合は「正当事由」が必要

 上記①のような借地契約における借主の土地に対する権利を、「借地権」といいます。この借地権は「借地借家法」で定められた権利であり、借地借家法は立場の弱い借主保護を目的とした法律です。したがって、借地権は強い権利であり、貸主から中途解約することはできません。

 また、上記③の「正当事由」は、貸主がその土地を利用する正当な理由があるとき、借主の土地利用状況が賃貸借契約時から大きく変わっているとき、並びに貸主が立退料等を支払ったときと定められており、単に「相続したから」は、正当事由として認められません。

 なお、建物建築を目的として土地を貸す契約としては、普通借地契約の他に契約期間満了後、契約更新はなく必ず更地で土地が貸主に返還される「定期借地契約」もありますが、この契約でも貸主からの中途解約は不可であり、相続を理由とした中途解約はできません。

(2)駐車場・資材置き場等での利用を目的として土地を貸す契約
  • ①建物建築を目的としない借地契約
  • ②貸主の地位が相続される
  • ③一定の場合は契約期間内の中途解約は可能だが、解約予告期間は契約内容による

 建物の建築を目的としない借地契約は、借地借家法ではなく民法が適用されます。民法が適用されると、賃貸借の期間の定めがない場合には、いつでも解約の申し入れをすることができます。つまり貸主からの中途解約は可能であり、その条件は当事者間の取り決めで定めることができます。特に相続を理由とする必要はありません。また、期間の定めがあったとしても、契約に期間満了前に当事者の一方の意思表示のみで契約を終了させることができる“中途解約条項”が定められている場合には、中途解約が可能です。

 一般的な解約予告期間としては、駐車場の月極め契約であれば、契約書に1ヶ月から3ヶ月前の予告で中途解約可能と定められている場合が多いですが、期間の定めがない場合は、解約予告をした日から1年後の解約となります。また、契約期間満了時に解約することも可能であり、その際も正当事由は不要です。

(3)無償で土地を貸す契約
  • ①使用貸借契約
  • ②貸主の地位が相続される
  • ③一定の場合は契約期間内の中途解約は可能だが、いつまで契約期間が存続するかは、その土地の利用状況や前後の事情により変わるため判断が難しい

 使用貸借契約は上記(2)と同様、民法が適用されますが、適用する条文は異なります。
 使用貸借契約は期間の定めがないケースが多く、このような場合には、契約の目的を定めていれば、その使用及び収益をするために必要な期間が経過したときに、定めていなければいつでも解約をすることができます。つまり、使用貸借契約の目的によって中途解約ができる時期が大きく変わります。

 例えば自宅の建替えのために、一時的に駐車場として無償で土地を貸した場合、建替えが完了すれば目的を果たしたことになり、その時点で解約可能となります。しかしながら、土地の上に建物が存している場合、「使用及び収益をするために必要な期間が経過したとき」の判断が非常に難しく、過去の判例を見ても判断が分かれています。

 今回のご相談の場合、上記(2)の契約であれば比較的容易に解約することができます。他方、上記(1)の契約は中途解約できず、契約期間満了時の更新を拒絶する場合にも正当事由が必要とされるため、明渡しを求めることは容易ではありません。また、上記(3)の契約は土地の利用状況等により変わります。

 このように、中途解約ができるか否かは契約の種類や内容により異なりますので、まずは契約内容を確認されることをお勧めします。ご不明な点等がございましたら、お気軽に当事務所へお問い合わせください。

<参考>
 借地借家法4条、5条、6条、民法597条、598条、617条、618条

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 町に親しまれていた書店が相次いで姿を消していく中、
 TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、
 書店チェーンとしても最大手となっています。
 図書館を運営したことでも話題になりましたが、
 商業施設の中核テナントとして入るなど独自の戦略で攻勢を強めています。

 また、日本最大規模のポイント会員を誇る「Tポイント」運営会社にもなっており、
 ポイントサービスやコンサルティングサービスの分野でも力を誇っています。
 ここにきて、電子マネーの普及により弱点だった決済サービスを強化するため、
 三井住友フィナンシャルグループの「Vポイント」と統合することが発表されました。
 
 音楽好きの若者や、少ない小遣いで最大限に欲求を満たそうとする学生の支持で、
 レンタルレコード店は街中に一気に広がりました。
 駅前近くの雑居ビルの上部階に店を構え、
 穴場的な雰囲気のスタイルが主流でしたが、
 その一つが、現在のTSUTAYAであったのです。

 サラリーマンをしていた増田宗昭氏が、噂を聞きつけて大阪の枚方市で
 レンタルレコード店をオープンしたのは82年のことでした。
 姉が喫茶店を始めるというので、それなら今流行のレンタルレコード店を
 一緒にしてはどうかと提案したのがきっかけでした。

 オープン当初からの思いもよらない繁盛ぶりに驚いたのは、
 誰より本人の方でした。
 そんな気持ちに酔いしれているのも束の間、
 すぐに不安が頭をよぎります。

 こんなに儲かる商売なら、すぐにみんなが手を出すはずだ、
 今のようなちっぽけな店なら、ライバルが出てきたらひとたまりも無い。
 本気でビジネスをしようと考えた増田氏は会社を辞め、
 今の店から見て、駅の反対側に店を出すことを決意します。

 いざ計画してみると、本格的な店を作るとなると
 6000万円位お金が必要なことがわかります。
 不足する資金は銀行から借りることになるのですが、
 ここで自らの事業計画と資金の返済方法を見つめなおすことになるのです。

 成長の見込みはあるけれども、海のものとも山のものともわからない商売、
 仮に売上がゼロであっても、人件費や家賃の支払いが出来て、
 返済も出来るにはどうしたらいいかを考えます。
 店の立地、周辺の客層、品揃え、販促方法など綿密に調査したのです、
 サラリーマン時代に店舗の開発をしていたことが役に立つことになります。

 その原点には、「売上がゼロでも維持できる体制」と、
 「やってダメならいつでもやめることが出来る会社であること」だと述べています。
 スタートが順調であればあるほど、ずっと右肩上がりが続くと過信して、
 回収の目処も無く事業拡大に投資する経営者が多い中、
 着実に足元を固めることは大切なことです。

 儲かるビジネスであればあるほど、その旨みを嗅ぎ付けて
 続々とライバルが現れてくることは覚悟しないといけません。
 すると、儲けはどんどん減少して、外の商売と変わらなくなってしまうのです、
 事業拡大に投資するには、そこの所を理解しておかないといけません。

 今回は相談事例を通じて、相続した土地の抵当権を抹消するための、清算人の選任申立についてご紹介します。

 今般、父から土地を相続しました。相続登記は完了して私への名義変更は済ませたのですが、祖父がこの土地を所有していた頃に設定された、ある会社が抵当権者となった古い抵当権が残っていました。抵当権の抹消の依頼をするため、その会社の登記事項証明書を取得したところ、登記記録に破産宣告、20年前に破産終結との記載のある消滅した会社でした。
 この抵当権を抹消したいのですが、どうすればよいでしょうか。

 解散、清算結了した会社が抵当権者であり、抵当権抹消の登記義務のみが履行されていない状態の場合は、解散・清算結了した会社に清算人として記載されている者と共同して抵当権抹消登記申請が可能です。しかし、破産終結した会社は代表者がいない状態となっています(※)ので、このような共同での登記申請ができないということになります。
 そのため、会社法に基づいて裁判所に対して当該会社の清算人選任申立をし、裁判所に抵当権抹消の登記義務者として、あなたと共同して登記申請の当事者となる清算人(代表者)の選任決定(会社法478条2項)をしてもらう必要があります。

 その清算人選任申立をすることができるのは、利害関係人に限られていますが、あなたと破産会社は抵当権設定者と抵当権者の関係に立つので、その点において利害関係があり、自ら裁判所へ清算人選任申立ができる、ということになります。なお、申立をする裁判所は、破産会社の本店を管轄する地方裁判所になります。(会社法868条1項)

 裁判所により清算人が選任されれば、抵当権抹消登記申請をする当事者が揃うので、抵当権抹消の合意(や弁済)が破産終結前にあった場合には、抵当権抹消登記申請の手続きに進むこととなります。

 ご注意いただきたいのは、あなたの意向としては、当該申立により選任された清算人と共同して抵当権抹消登記申請をすることとなりますが、当該清算人は会社の代表者として選任され活動するため、必ずしもあなたの意向どおり抹消登記の手続きが進む保証はないということです。例えば、清算人の調査などにより、抵当権の被担保債権が弁済されていないことが判明した場合など、抵当権抹消のために弁済を請求するなどの可能性を否定することはできません。

 このようになる可能性を低減させるため、ご相談のような場合には、お近くの司法書士や弁護士等の専門家へご相談をされることをお薦めします。

(※)取締役は破産により当然取締役の地位を失うのであって、同時破産廃止決定があったからといって、すでに委任関係の終了した従前の取締役が商法417条1項本文(現:会社法478条1項)により、当然清算人となるとは解し難くこのような場合には商法417条2項(現:会社法478条2項)に則り、利害関係人の請求によって裁判所が清算人を選任すべきものである。(最判昭和43・3・15民集22・3・625)

 

 

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弊事務所の年末年始休業日をご案内します。
ご不便をおかけしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■ 年末年始休業日
 2022年12月29日(木)~2023年1月4日(水)

 墓地や墓石は生前に購入した方が相続税対策になると聞きました。本当でしょうか?

 先日参加した「相続セミナー」で、墓地や墓石は生前に購入した方が相続税対策になると聞きました。借金をしてまでも購入した方がよいのでしょうか?

 たしかに、墓地や墓石を生前に購入された方が、相続税対策になります。ただし、借金をしてまで購入することは相続税対策になりません。

1.墓地や墓石の相続税評価

 相続開始時に、被相続人(お亡くなりになったご本人)が所有していた一定の財産に対して、相続税が課税されます。

 ただし、被相続人が所有していた財産のうち、墓地や墓石は祭祀財産(※)として、相続税が課税されない“非課税財産”となることから、相続税は課税されません。

 他方、相続開始後に購入する墓地や墓石の費用は、相続税の計算上、財産から控除できる「葬式費用」に該当しません。

 (※)祭祀財産には、墓地や墓石のほか、仏壇、仏具なども該当します。

2.生前の購入(相続税対策)

 生前(相続開始前)に墓地や墓石を購入しておくと、その分相続税が課税される現預金が減り、相続税が課税されない墓地や墓石が増えます。

 一方、相続開始後に墓地や墓石を購入する場合には、墓地や墓石を購入するための現預金に対して相続税が課税され、墓地や墓石を購入する費用は「葬式費用」に該当しないため、課税対象となる財産から控除することができません。

 つまり、相続開始前か後かで、墓地や墓石を購入するための現預金相当について、相続税が課税されるか否かが異なってきます。

3.墓地や墓石購入のための借金

 被相続人が所有していた財産から控除できるものとして、先に述べた「葬式費用」のほか「債務」があります。

 この場合の「債務」とは、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものを指します。

 ただし、この「債務」に、墓地や墓石の未払代金や借金など、非課税財産に紐づく債務は含まれません。

 つまり、相続税の計算上、課税される財産から控除できない借金をつくって、課税されない墓地や墓石を購入することは、相続税対策になりません。ご注意ください。

 相続に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP
No.4108 相続税がかからない財産
No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
No.4126 相続財産から控除できる債務

 私が住む京都では「地方都市」でありながら、
 技術や経営に関するセミナーが盛んに行われています。
 古くから、伝統産業が続いたせいか、
 機械、電気、電子といった分野の会社が多く誕生しています。

 そのなかでも、京セラの経営学であり、
 昨年8月に亡くなられた稲盛和夫氏の「アメーバ経営」は有名です。
 会社が大きくなってくると、「大企業病」というか、
 どんどん個人の役割、重要性が曖昧になり、
 「自分、一人が…しても」というような考え方が強くなってしまいます。

 社員が数十人の頃には、みんなが仲間同士で団結していたものが、
 100人そして何百人という規模になると、
 個々の顔も見えず、いくら頑張っても日の目を見ない者も出てきます。

 そんな時、一人ひとりの能力を、十分に発揮してもらえるには
 体制をどうしたらいいのか考えました。
 考え抜いた末、創業時代に戻ってしまえば、良いことに気づいたのです。
 「小さな会社」「周りの事を気遣う」「大家族のような経営」
 創業当時の会社の良い所を生かし、
 社員みんなが「小さな会社の経営者」になるようにしたのです。

 京セラは「小さな会社」の寄せ集まり、
 当然の事ながら自分の会社の利益を上げないといけませんが、
 メンバー(社員)や他のセクション(仕入先、売上先)のことも
 忘れるわけにはいきません。
 自分が前面に出すぎると、いずれみんなからそっぽを向かれてしまいます。
 稲盛氏は「利他の心」を持つことを、社員に説いて回ります。

 京セラは、「セラミック」を武器にして成長を遂げていきますが、
 いくら良い武器を持っていても、それを使いこなせる「人」がいなくては、
 経営は成り立っていかなかったはずです。
 「アメーバ経営」にも見られるように、
 日本の経営には「家族主義」的な発想が流れています。

 戦後の経営に多大な影響を与えた人物に、
 安岡正篤(まさひろ)氏がいます。
 安岡氏は、政界、財界を問わず、日本を率いていく人達に、
 いわゆる「帝王学」を叩き込んだのです。
 その教えを請うた人の中には、
 吉田茂、佐藤栄作、田中角栄などの総理大臣経験者や
 平岩外四、牛尾治朗、江戸英雄の名経営者が名前を連ねます。

 「家族主義」のもととなる儒学の考え方に立ち、
 中国の長い歴史に生きた指導者や思想家の生き方、
 考え方から原理原則となる「帝王学」まとめ、
 その時代の解釈を加えて、日本のトップに伝えたのです。

 その安岡氏の考え方には、中国の儒学者 王陽明(おうようめい)が
 興した哲学が流れていています。
 陽明は、学問であった儒学を、実践に対応できるものとして
 「陽明学」を作り上げたのです。

 彼は、若くして高級官僚の試験に受かったのですが、
 上司の批判をして、僻地に左遷されてしまいます。
 しかし、彼はこの時期を好機と思い、自らの思考を重ねながら、
 新しい学問「陽明学」を誕生させたのです。
 彼のこのような経験があったからこそ、
 実践的な考え方が生まれたといえるのでしょう。

 弱音を吐きたくなるとき、
 勉強しなければならないとき、
 スランプのとき、挫けそうになったとき。
 「陽明学」には、人生色々な場面で直面する事態に対して、
 どのような心構えでいれば良いのかを教えてくれます。

 「陽明学」から「帝王学」、
 このように永く積み重ねらねられた「哲学」があったからこそ、
 京セラの「アメーバ経営」が作り上げられたのではないでしょうか。

 住宅及び駐車場に適した土地を選ぶポイントを教えてください。

 金融資産中心の財産構成のため、将来の実需(子供の住宅用地)及び相続を見据えて、100坪程度の土地を購入し、しばらくの間、駐車場として賃貸したいと考えています。つきましては、住宅及び駐車場に適した土地を選ぶポイントを教えてください。

 住宅及び駐車場に適した土地を選ぶポイントは、主に次の4点です。それぞれの詳しい内容は、詳細解説にてご確認ください。

  • 形状
  • 道路
  • 地勢
  • 用途地域

 住宅及び駐車場に適した土地を選ぶポイントは、以下のとおりです。

1.形状

 土地の形状は、整形地がよいでしょう。100坪(約330㎡)の土地を想定した場合、間口15m超、奥行20m超の長方形が理想の形状です。

 一般的に、駐車区画は幅2.5m・奥行5m、通路部分は幅5mを目安としており、駐車1台あたりに必要となる面積の目安は25㎡(2.5m×10m)となります。前記の理想形状の場合、通路の両側に駐車区画を配置することができるため、少なくとも1列あたり8台(20m÷2.5m)、2列で合計16台の駐車が可能となり、駐車1台あたりの面積は、目安より17.5%少ない20.625㎡(330㎡÷16台)となります。

 なお、最も効率のよい形状は、通路が不要となる間口65m超・奥行5m超(65m÷2.5m=26台)となりますが、住宅を含む駐車場以外の用途には適しておらず、おすすめはできません(滅多に実在しない形状でもあります)。形状の最大のポイントは間口15m超であり、15m未満や15mを大きく超える場合、16台の確保が難しくなります。

2.道路

 土地に接する道路は、6~10m程度の広すぎず狭すぎない幅員がよいでしょう。
 将来住宅用地としてお考えであれば、土地からみた道路の方角は南、土地が角地となるようであればさらによく、理想は土地が東南角地となるような道路です。

3.地勢

 地勢としては、平坦地がよいでしょう。高低差があると駐車場整備費用が高額となり、かつ理想形状であっても駐車台数が減少する可能性があります。また、平坦地は駐車しやすいため、需要も多くなります。

4.用途地域

 第1種・第2種低層住居専用地域を除く、住居系地域(第1種・第2種中高層住居専用地域、第1種・第2種住居地域、準住居地域)及び近隣商業地域がおすすめです。

 第1種・第2種低層住居専用地域は、住環境はよいのですが、駐車場として賃貸したい場合には敬遠したい地域です。理由として、この地域は建蔽(ぺい)率(※)が低く、自宅敷地内で十分駐車場を確保できるケースが多いこと、また分譲マンションや賃貸住宅が比較的少ないため、駐車場の需要は限定的といえるでしょう。なお、準住居地域や近隣商業地域の場合、月極駐車場に加え、コインパークの需要も見込める可能性があります。

(※)建蔽(ぺい)率:敷地面積に占める建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合

 以上のように、住宅及び駐車場に適した土地は、相続税評価において、加算の必要はあっても補正は不要の土地となります。一般的に、土地の個別要因により生じる評価(価格)の加算又は補正の程度は、相続税評価より実際の取引(実勢価格)の方が顕著であり、住宅及び駐車場に適した土地を購入することは、相続対策としても有効となるケースが多いといえます。

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