お知らせ

 会社の経理や財務のチェックを任される仕事をしていると、
 つくづく、世の中にはいろんな商売があるものだと感心することがあります。
 取り扱っている商品や、販売方法、販売ルート、商売の糸口は無数にあり、
 チョットしたことがきっかけとなって広がっていくものだと教えられます。

 その時代にマッチしていたからこそ、ビジネスにつながった事。
 現在では、どんなに対抗しても、
 同じ仕組みを築くのは不可能な事もたくさんあります。
 スーパーが普及するまで、一般的であった牛乳などの宅配サービスも、
 町で牛乳販売店を目にすることはなくなりました。

 乳酸菌飲料の宅配サービスを維持し続けているヤクルトも、
 ユニークな特徴を持った会社です。
 宅配サービスを担うヤクルト・レディは、パート社員などの雇用形態でなく、
 歩合制による外注扱いとなっているそうです。

 深刻な人手不足に陥っている運送業をはじめとする各種の宅配事業。
 売上の半分を宅配に頼っているヤクルトでは、
 さぞかし営業に苦しんでいんだと思っていましたが、
 それはまったくの勘違いでした。

 その理由は、主婦を中心とする構成で宅配を行ってきた、
 50年を超える歴史にあります。
 営業所に併設された保育所は全国に1200ヶ所あり、
 売上代金の入金を簡単に行う自動入金機の設置も進めています。

 現在のヤクルトというのは全国の販売会社が集まって出来た会社で、
 一般的な会社の成り立ちとは逆の経緯をたどっているのです。
 それゆえ、主導権争いなどの揉め事が絶えませんでした。

 ヤクルトというのは、代田稔氏が京都大学の教授時代に
 人腸乳酸菌(L.カゼイ・シロタ株)(ヤクルト菌)の
 強化・培養に成功したことから始まります。
 
 全国に代田保護菌普及会という販売会社が設立され、
 製品ヤクルトは日本中に広まっていきます。
 それに伴い代田保護菌普及会も各地に広まり
 一時は500社を数えるようになってしまいました。
 
 しかし、販売会社どうしは製品ヤクルトを販売する仲間というより、
 競争相手として対立しあうことも多かったのです。
 その代田保護菌普及会を統合し、現在のヤクルト本社が出来上がります。
 名前も各地に広がった販売会社を取りまとめる会社として、
 「本社」という名称が付けられたのでしょう。
 
 1955年にヤクルト本社が設立された後も、販売会社の統合は続き、
 全部が完了するまでには20年の年月がかかりました。
 ヤクルトの販売会社は各地の金持ちがその権利を買い取り、
 家業として営んでいたため、その統合には猛烈な反発があったからです。
 
 その統合にあたったのは、松園尚巳氏であります。
 松園氏が、専務になったころは命の危険を感じるほどで、
 特に九州ではその勢いは強く、
 「九州に足を踏み込んだら、生きて帰えさない」と、
 多くの業者が反発の態度をあらわにしていました。
 
 「いつまででもお山の大将気分に浸っていないで、
 ヤクルトはまとまれば大企業になれる事業、
 目先の金儲けだけを考えず、将来に向けて協力していこう。」
 松園氏が販売会社に対して言った説得の言葉です。
 
 臨時株主総会で、専務の職をおろされても、
 松園氏は身を引くことなく1カ月の出社拒否で対抗し、
 そのことで世論を味方につけたのでした。

 今回は相談事例を通じて、証券保管振替機構への開示請求による、被相続人の金融機関の取引状況を確認する方法をご紹介します。

 先日、母が急死しました。遺産を整理しようと思いましたが、母とは疎遠状態だったため、母が生前どのような金融機関を利用していたか全くわかりません。タンスの中から通帳を何冊か見つけたので中を確認すると、証券会社の名前がありましたが、今も取引をしているのかわかりません。母の金融機関の取引状況を一括で確認できる方法はあるのでしょうか。

 金融機関の取引を一度に確認する制度は、今のところありません。
 ただし、上場株式等の口座が開設されている証券会社や信託銀行等は、証券保管振替機構(以下、「保振(ほふり)」)に開示請求をすることで口座の有無を確認することが可能です。

 開示請求に際し、ご相談者様を開示請求者、請求にかかる方をお母様として、今回のケースで必要となる書類は以下のとおりです。

  • ①開示請求書(保振ホームページより、PDF様式の請求書がダウンロードできます)
  • ②請求者の本人確認書類の写し(氏名、生年月日、住所が確認できるもの)
  • ③請求者とお母様の関係(請求者が法定相続人であること)を示す戸籍等の写し
  • (※)続柄によって提出範囲は異なりますが、今回の場合はご相談者様の現在戸籍とお母様の死亡日の記載のある除籍謄本が必要となります。
  • ④お母様の住所の確認書類の写し
  • (※)住所を元に調査が行われるため、調べたい住所が記載されたものをご用意ください。本籍地では調査不可です。
  • (※)確認書類、手数料等の詳細は保振ホームページの手続要領でご確認ください。

 必要書類を提出し、開示費用を振り込んでから約2~3週間で「登録済加入者情報通知書」が発行されます。

 なお、この開示請求により発行される通知書から確認できることは「加入者口座コード」と「口座を開設している口座管理機関の名称」のみで、支店名や取引の内容まではわかりません。具体的な取引の状況は、お母様が最後に住んでいた最寄りの支店へ問い合わせて確認します。その際、お母様が亡くなった旨と加入者口座コードを伝えると、スムーズに調べてもらえる場合があります。

 

 今回ご紹介した保振への請求は、代理人からも可能です。時間の確保が難しい方は、一度専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。

 

参考:
証券保管振替機構「ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合

 

 

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 改正後の相続時精算課税制度では、毎年110万円までは贈与税もかからず、将来の相続でも加算する必要がないと聞きました。本当でしょうか?

 先日、ある相続セミナーに参加したところ、令和6年(2024年)1月1日以後の贈与について相続時精算課税制度を適用した場合、毎年110万円までは贈与税もかからず、将来の相続でも加算する必要がないと聞きました。本当でしょうか?

 令和5年度税制改正で相続時精算課税制度が見直され、令和6年(2024年)1月1日以後の贈与について特別控除の2,500万円だけでなく、毎年基礎控除として110万円を控除することができるようになりました。そのため、ご相談のとおり、毎年110万円までは贈与税がかかりません。また、将来の相続時において加算することとなる金額は、この基礎控除を控除した残額となるため、毎年の贈与が110万円に満たない場合には、結果として加算する金額がないこととなります。

1.改正前の相続時精算課税制度

 相続時精算課税制度とは、贈与を受けたときの贈与税の計算において、自ら選択することで適用することができる制度です。

 改正前における制度の特徴としては、主に以下のとおりです。

  • 通常の贈与税の計算(暦年課税による計算)とは違い、原則、この制度を選択して贈与を受けた財産の合計額が累積で2,500万円を超えるまで贈与税は課されず、超えた段階から一律20%の税率で贈与税が課されます。暦年課税とは違い、基礎控除はありません。
  • この制度を適用することができるのは、原則、父母又は祖父母から贈与を受けた子又は孫であり、それぞれに年齢制限があります。
  • この制度を選択した場合には、その後の相続時精算課税に係る贈与者(以下、特定贈与者)からの贈与については、相続時精算課税制度を適用して贈与税の計算をしなければなりません。
  • 特定贈与者が亡くなった場合には、相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)の合計額を相続財産として、相続等により取得した他の財産と合算して相続税を計算した上で、すでに納めた贈与税額がある場合には、相続税額から控除して相続税額を算出します。その際、控除しきれない贈与税額があるときは、相続税の申告をすることで還付を受けることができます。

 なお、特定贈与者と受贈者の年齢制限については、以下のとおりです。

  その年1月1日現在の年齢
特定贈与者 60歳以上
受贈者 18歳以上
(2022年3月31日以前は20歳以上)
2.令和5年度税制改正

 令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度が見直されました。ご相談の内容ですと、以下の改正が該当します。

  • 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、改正前の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとする
  • 特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする

 この改正は、令和6年(2024年)1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。

3.ご相談の内容について

 ご質問は、以下の真否を問うものでした。

  • ①改正後の相続時精算課税制度について、毎年110万円までなら贈与税がかからない
  • ②改正後の相続時精算課税制度について、毎年110万円までなら、将来の相続において加算する必要がない

 上記①については、上記2.にあるとおり、改正後は課税価格から基礎控除110万円を控除することができるため、毎年110万円までの贈与について、贈与税はかかりません。

 また相続時精算課税制度は相続時において相続財産に加算して相続税額を計算することになりますが、上記②についても上記2.にあるとおり、改正後は加算する額は基礎控除110万円を控除した後の残額となることから、毎年110万円までの贈与について加算する金額がない、ということになります。

 同じく令和5年度税制改正では、相続税の計算上、相続財産に加算される“生前贈与加算”の対象となる期間が3年から7年へと延長されました。生前贈与加算の場合に加算される贈与財産の額は、基礎控除110万円を控除する前の金額であるため、過去の贈与が毎年110万円未満であっても基本的には控除前の金額を加算することとなります。そういった意味において、相続時精算課税制度を利用した節税は、今後検討する余地があるのかもしれません。

 相続税や贈与税に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

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2023年8月3日

夏季休業日のご案内

弊事務所では、下記期間を休業とさせて頂きますのでご案内いたします。

休業期間中は何かとご不便をお掛けすることと存じますが、
何卒よろしくお願い申し上げます。

■夏季休業日 8月11日(金)~8月16日(水)

 テレビの旅番組やバラエティ番組でとりあげられることもあり、
 コロナ感染禍の間も、人と顔を合わせる機会が少ないと、
 ちょっとした秘湯・秘境人気が続いています。
 この様な中、秘湯を紹介しつづけている「日本秘湯を守る会」が、
 もうすぐ半世紀を迎えます。

 当時、高度成長期の波にのみこまれ、
 日本中の旅館が「ホテル化」していく中で、収容力が少ない小さな温泉宿や、
 交通も不便な山の宿を守る為に宿主が集まり結成されたのが、
 「日本秘湯を守る会」でした。

 じわりと人気が高まり、所属する旅館を利用するリピーターも多く、
 いわゆるポイントカード式のスタンプ帳も発行しています。
 利用の都度スタンプが押され、10個溜まると1泊無料招待となっていますが、
 最近では、年間1万4千人を超える招待があるそうです。

 京都の西部に位置する嵐山に、
 観光スポットから少し離れたところに「嵐山温泉」があります。
 渡月橋の1キロ程上流にあり、船を使って川を渡り宿にたどり着くのですが、
 桂川に面した客室からの眺めは、まさに日常を忘れる思いです。

 休業状態あった温泉宿を高級旅館として、リニューアルオープンさせたのは、
 軽井沢に本社を置く星野リゾート。
 業績不振であった家業の温泉旅館の立て直しを成功させ、
 その後、次々とリゾート施設の再建を成功させているのが、
 星野リゾートの社長 星野佳路氏です。

 90年代に、銀行の金余りのはけ口として利用された、
 リゾート施設や老舗旅館は、バブル経済の終焉による不況により、
 多額の借金を負うことになってしまいました。

 その中でも、星野氏に依頼が回ってくるのは、
 通常では再生の見通しが低いとされた、問題のある案件です。
 金融機関の手を借りて借金を整理、圧縮したのち、
 自らの経験を生かして、これらの施設や旅館を、蘇らせているのです。

 どれも、経営が行き詰まったのは、
 身の丈に合わない過剰な設備投資により、
 借金返済額が膨れ上がったことによる資金不足が大きな原因です。
 しかし、再建を進めていくうちに、色々なところに、
 経営の無駄が潜んでいることがわかってくるのです。

 ある老舗旅館では、内装や施設も申し分なく、
 料金も決して安くない設定なのに、利益が上がらない。
 よく調べていくと、リピーターの多くが特別料金で宿泊していて、
 お客の中には半額以下の金額で利用している人もいたのです。

 また、人件費の抑制のためか、従業員のほとんどが、
 アルバイトやパートタイマーで賄われていて、勤続期間が極端に短かったのです。
 そのため、仕事に対する責任感が低く、会社に対する帰属意識が高くないため、
 お客様に対するサービスは低いままでした。

 ホテルや旅館の客室の稼働率は70%を取れれば良いとされています、
 地方の旅館では50%台のところもざらです。
 少しでも空室を埋めようと、閑散時期には料金の値下げを行い、
 旅行会社からツアー客を呼び込むことが行われています。

 星野氏が力を注いでいるのは、リピーターを増やすことです。
 他のホテルなどでは味わうことの出来ない環境を演出することで、
 宿泊したお客様が「是非、もう一度泊まりに来たい…」と思わせます。
 こうして、外資系高級ホテル並みの料金でありながら、
 高いリピート率を誇っています。

 マンション価格の高騰による相続税評価への影響はありますか?

 最近、首都圏を中心にマンション価格がかなり高騰しているとのニュースをよく見聞きします。相続税評価への影響はないのでしょうか。

 国税庁はマンションの「相続税評価額」について、適正化を検討するための有識者会議を設置し、評価の見直しに着手しています。今後、マンションに係る相続税等の評価方法が見直されるものと思われます。

1.現在のマンションの市況について

 国土交通省が公表している不動産価格指数によると、2010年を100としたマンション(全国)の価格指数は、2023年1月時点では189.4と2倍近くまで上昇しています。

 

 また、民間の調査会社である不動産経済研究所が公表している「首都圏 新築分譲マンション市場動向」(2023年4月)によると、首都圏の新築分譲マンションの平均価格は7,747万円、特に東京23区は1億1,773万円であり、一般的なサラリーマン世帯では手を出しにくい水準まで高騰しているといえます。

2.マンションの相続税評価の方法について

 相続税法では、相続等により取得した財産の価額は「当該財産の取得の時における時価(客観的な交換価値)」によるものとされており、その評価方法は国税庁の財産評価基本通達に定められています。

 マンションの相続税評価の方法は以下のとおりです。

マンション(一室)の相続税評価額(自用の場合)
=区分所有建物の価額(①)+敷地(敷地権)の価額(②)
  1. ①区分所有建物の価額
    =建物の固定資産税評価額(注1)×1.0
  2. ②敷地(敷地権)の価額
    =敷地全体の価額(注2)×共有部分(敷地権割合)
  1. (注1)「建物の固定資産税評価額」は、1棟の建物全体の評価額を専有面積の割合によって按分して各戸の評価額を算定
  2. (注2)「敷地全体の価額」は、路線価方式又は倍率方式により評価

 上記のように、土地については「相続税路線価」を用いた路線価方式(又は倍率方式)、建物については「固定資産税評価額」をもとに土地は敷地権割合、建物は専有面積の割合により按分して算定されます。このため、敷地面積あたりの戸数が多いマンションは、一戸建て住宅より「相続税評価額」と「時価」との乖離が生じやすいといわれています。

 特に戸数が多く高層階ほど時価が高くなるタワーマンションではその傾向が顕著で、富裕層が相続税対策のために高額なタワーマンションの高層階を購入する、いわゆる“タワマン節税”という言葉も一般的です。

3.行き過ぎた節税対策が問題となるケースも

 なかには「相続税評価額」と「時価」の乖離を利用し、過剰ともいえる節税対策を行ったことにより、その有効性をめぐって相続人が国と裁判で争うケースもみられます。

 特に2022年4月19日の最高裁で、あからさまな相続税の負担軽減を意図したものと認定され、鑑定評価額を適用した課税処分が適当であるとの判決が出たことは、記憶に新しいところです。

4.国税庁の対応について

 このような事例を受けて、令和5年度(2023年度)与党税制改正大綱では、マンションの相続税評価額について、適正化の検討が記載されました。

 この流れを受け、国税庁は市場価格との乖離の実態把握とその要因分析を的確に行った上で、不動産業界関係者などを含む有識者の意見も聴取しながら通達改正を検討することになり、有識者会議がすでに何度か開催されています。

 2023年6月22日に開催された有識者会議では、通達の見直し案が提示されました。今後マンションに係る相続税等の評価方法が、パブリック・コメントを経て改正されるものと思われます。改正による評価への影響を注視する必要があるといえます。

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 保険料負担者が複数人いる死亡保険金の課税関係はどのようになりますか?

 私の祖父が亡くなりました。私は祖父の相続人ではありませんが、祖父は生命保険に加入しており、私が受取人になっていたため、死亡保険金を受け取りました。保険料を3人(祖父、父、私)で負担して、払込みは終わっています。この場合、受け取った死亡保険金の課税関係はどのようになるのでしょうか。契約内容は以下のとおりです。

【契約内容】
  • 保険種類:終身保険
  • 契約者:祖父
  • 被保険者:祖父
  • 死亡保険金受取人:私
  • 保険金額:6,000万円
  • 保険料総額:5,000万円(支払い済み)
  • 保険料負担の内訳:
     祖父負担分:3,000万円
     父負担分:1,000万円
     私負担分:1,000万円

 今回のご相談の場合、受け取った死亡保険金の課税関係は、誰が負担した保険料に対応する保険金かによって異なります。

1.死亡保険金の受け取りに対する課税の取扱い

 死亡保険金の受け取りに対する課税の取扱いは、保険料負担者と保険金受取人との関係で、次のとおり異なります。

契約形態 課税関係
  被保険者 保険料負担者 保険金受取人
甲(被相続人) 甲(被相続人)
(甲の相続人)
相続税
(非課税枠の適用あり)
甲(被相続人) 甲(被相続人)
(甲の相続人ではない)
相続税
(非課税枠の適用なし)
甲(被相続人) 贈与税
甲(被相続人) 所得税
住民税

①・②:被相続人である甲が負担した保険料に係る死亡保険金については、相続または遺贈により取得したものとみなして、相続税が課税されます。ここでの「非課税枠」とは、死亡保険金の受取人が相続人の場合に、相続税の課税上、相続税の課税財産とみなされる死亡保険金の合計額のうち、「500万円×法定相続人の数」までが非課税となる制度のことを指します。乙は甲の相続人のためこの非課税枠が適用できますが、丙は甲の相続人ではないため、非課税枠は適用できません。

③:保険料負担者が被相続人以外の者で、保険金受取人が保険料負担者と異なる場合に死亡保険金を受け取ったときは、保険料負担者から保険金受取人に対して死亡保険金を贈与したとして、贈与税が課税されます。

④:保険料負担者と保険金受取人が同一人であり、かつ、その者が被相続人以外の場合に、死亡保険金を受け取ったときは、一時所得として所得税及び住民税が課税されます。

2.ご相談のケース

 ご相談の場合、保険料負担者は、ご祖父様、お父様、相談者ご本人の3人です。一方、保険金受取人はご相談者様のみとなります。
 このような関係の場合の課税関係は、次のとおりとなります。

契約形態 課税関係
被保険者 保険料負担者 保険金受取人
ご祖父様 ご祖父様 ご相談者様
(ご相談者様の相続人ではない)
相続税
(非課税枠の適用なし)
ご祖父様 お父様 ご相談者様 贈与税
ご祖父様 ご相談者様 ご相談者様 所得税
住民税

 被相続人であるご祖父様が負担した保険料に対応する保険金額は、遺贈により取得したものとみなして相続税が課税されます。この場合、ご相談者様はご祖父様の相続人ではないため、非課税枠は適用できません。

 また、お父様が負担した保険料に対応する保険金額は、贈与税が課税されます。
 その他、ご相談者様(孫)が負担した保険料に対応する保険金額は、一時所得として所得税・住民税が課税されます。

3.保険金額の按分計算

 保険金額は、各々が負担した保険料の保険事故までに支払った保険料全額の割合によって按分計算します。
 ご相談の場合は、次のとおり按分計算します。

<ご祖父様から遺贈によって取得したとみなされる保険金額>

<お父様から贈与によって取得したとみなされる保険金額>

<ご相談者様(孫)本人が取得したとみなされる保険金額>

 このように死亡保険金の受け取りに対する課税の取扱いは、保険料負担者と保険金受取人の関係によって異なります。どのパターンが最も有利となるかは、状況次第で異なります。相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

 

 

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 ライセンスビジネス。
 古くはサンリオが行ってる、オリジナルなキャラクターを
 他社に使ってもらい、使用料を得るビジネスモデルが有名なところです。
 デジタル技術の進化により、様々なものが知的財産権として価値が高まり、
 最近では、ソニーや任天堂もこの分野に力を注いでいます。

 私が社会に出た頃は、
 アパレルを中心に欧米のブランドのライセンス商品が多く販売されていました。
 直輸入品は高くても、日本製のライセンス商品であれば、
 かろうじて手の届く価格だったので、
 ブランドのロゴマークを見せびらかすため、競って買ったものでした。

 当時、アパレルや雑貨品など、ファッション関係の商品を扱う企業の多くは、
 海外ブランドのライセンスを買取り、売上を伸ばしていました。
 バーバリーのライセンス商品で、一大ブームを巻き起こした、
 アパレルメーカーの三陽商会もその一つです。

 しかし、このようなビジネスも半世紀が経ち、
 ライセンスの更新が出来なくなると、売上の大半が欠け落ちる結果となります。
 日本企業は、モノづくりには長けていますが、ブランド作りは得意とは言えません、
 ライセンスを作る方、使う側、どちらにしても長期的な視線が必要となります。

 石油販売会社の経理をしていた吉原信之氏が、
 独立して手がけたのは切断砥石の販売でした。
 終戦の混乱期には、軍から出た廃材に目をつけ、
 防空暗幕や風船爆弾用の紙、スポンジなどを売りに回りました。

 暗幕は服に仕立て上げ、風船爆弾用の紙は子供用の雨合羽へ、
 スポンジはボールに加工しました。
 どれも、廃材だけにいつでも手に入るというものではなく、
 量にも限りがあったため、商売には向いていませんでした。

 ある時、少しではあるものの、
 絹(オイルシルク)を手に入れる目処がつきます。
 やっと、継続的に仕入れることが出来る商品にめぐり合い、
 この生地を使ってレインコートを作る商売をしようと決意したのです。

 最初の頃、レインコートをデパートへ営業に出向くと、
 決まって、担当者から製造元のブランドでは困ると条件をつけられました。
 吉原氏は、「製品に責任をもちます、お店に迷惑をかけません」と、
 何度も説得を繰り返し自主ブランドでの納品に漕ぎ着けたのです。

 商品の良さが顧客の目に留まり、三陽商会はコート業界ではトップとなり、
 コートの「サンヨー」として名が知れ渡るようになります。
 そして、レインコートを「雨よけ」の実用品から、
 ファッション商品の仲間入りをさせたのです

 一方、このままでは小さな商売に終わってしまうという危機感から、
 早くから、海外の有名ブランドと提携することを考えます。
 その理由は、「いろんな人の知恵と手をつかってやっていく」
 ことだと語っています。

 自社以外のブランドという力を借り、
 自分では出来ないことを行って事業を発展させていったのです。
 原動力となったのが、海外ブランドのライセンス商品でした。

 こうして、レインコートから出発した「サンヨー」でしたが、
 スーツ、ドレス、カジュアルウエアにアイテムを増やし、
 アパレルメーカーと成長していくのです。

 三陽商会では、バーバリーの後継を目指す新ブランドで、
 ワンピースやブラウスに撥水加工を施した新商品を発表するなど、
 得意分野のノウハウを利用して、認知に向けて力を注いでいます。

 また、「100年コート」と銘打って、国内の縫製工場で製作し、
 専用に選んだ生地で、ボタンは手作業で付けられています。
 しかし、大きな看板を失った損失は大きく、
 リストラや経営陣の交代等、前途多難な経営が続いています。

 今回は相談事例を通じて、登記済証(権利証)を紛失した場合の対応についてご紹介します。

 終活を始めようと思い、まずは土地の登記済証(権利証)を探したのですが、見当たりません。悪用され、不正な登記をされないか心配です。不正な登記を未然に防ぐ手段はありますか。

 不正登記防止の申出制度(不動産登記事務取扱手続準則第35条)があります。この制度は、不正な登記がされる差し迫った危険がある場合に、申出から3ヶ月以内に不正な登記がされることを防止するための制度です。
 申出は不動産の所在地を管轄する法務局に対して行います。申出本人の出頭が原則ですが、代理人が出頭して行うこともできますので、ご希望があればお近くの司法書士へご相談ください。

 不正登記防止の申出制度は、現在発行(通知)されている登記識別情報の場合にも利用できます。登記識別情報の場合は、不正登記防止の申出制度のほかに失効制度(不動産登記規則第65条)も利用できます。

 失効とは、発行(通知)されている登記識別情報を無効にすることです。失効をするには、不正な登記をされる危険のある場合に限られず、理由は問われません。ただ、登記識別情報は一度失効すると再発行(再通知)はされませんのでご注意ください。なお、権利証を紛失した場合にも再発行はされません。

 登記済証や登記識別情報をなくした場合でも、以下の代替措置により登記はできます。

(1)法務局からの事前通知による方法

 法務局より登記名義人に対して、登記の申請があった旨及びその内容について事前通知が発送されます。事前通知は、登記名義人の住所地にあてて本人限定受取郵便にて送られます。受け取った登記名義人が、申請に間違いない旨の通知を法務局に対して返送することで、登記済証・登記識別情報の確認に替えるものです。

(2)司法書士等の本人確認による方法

 登記の申請を司法書士等の資格者に依頼する場合には、その司法書士等が登記名義人について確認した、本人確認情報を提供することで、登記済証・登記識別情報の確認に替えるものです。また、公証人に本人確認情報の作成を依頼することもできます。

 なお、本人確認情報の作成手数料は事務所によって異なりますので、お近くの司法書士までご相談ください。

 

 

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 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例は、いつまで適用できますか?

 父が生前住んでいた家(私にとって実家)を相続することになったのですが、相続人である子3人とも自宅を所有していることもあり、誰も欲しがりません。そのため一旦、子3人の共有名義とし、売却後に売却代金(諸費用を除いた手取分)を等分することになりそうです。
 たしか、相続した居住用財産を一定期間内に売った場合は、特別控除が適用できると聞いています。この制度は当分の間、適用できるでしょうか?

 ご相談の特別控除(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例)については、令和5年度税制改正で一部見直しの上、適用期限が4年延長されました。そのため、2027年(令和9年)12月31日までの間に売って、一定の要件に該当することで当該制度を利用することができます。

1.被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例とは

 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例とは、相続又は遺贈により取得した一定の被相続人の居住用家屋又はその敷地等(以下、空き家)を、一定期間内に売り、一定の要件に該当するときに、所得税の計算上、譲渡所得の金額から最高で3,000万円まで控除することができる制度です(以下、空き家の3,000万円特別控除)。

 一定の要件とは、主として次のとおりです。

  1. (1) 売却対象となった空き家について、一定の要件に該当していること
  2. (2) 空き家を取得(家屋と敷地の両方を取得)した人が売っていること
  3. (3) 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  4. (4) 売却代金が1億円以下であること
  5. (5) 売却対象となった空き家について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除などの、一定の特例の適用を受けていないこと
  6. (6) この空き家について、すでにこの特例の適用を受けていないこと
  7. (7) 親子や夫婦、内縁関係者など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
2.令和5年度税制改正

 令和5年度税制改正において、空き家の3,000万円特別控除は主に次の改正がされた上で、適用期限が4年延長されました。これにより改正後の適用期限は、2027年(令和9年)12月31日となりました。

  • 適用対象となる空き家の要件について、一部見直しがされた
  • 空き家を取得した相続人の数が3人以上である場合は、特別控除額を最高で2,000万円とする

 この改正は、2024年(令和6年)1月1日以後に行う空き家の売却について適用されます。

3.ご相談のケース

 ご相談のケースは、ご実家が一定の要件に該当し、かつ、一定の要件に該当する売却を行っていれば、2027年12月31日までの売却について、空き家の3,000万円特別控除の適用は受けられるものと思われます。売却日の留意点として、この改正による適用期限よりも前に「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日」が到来する場合には、その到来する日までに売却する必要があります。その点にご注意ください。

 なお、2024年1月1日以後の空き家の売却については、上記改正のとおり、「空き家を取得した相続人の数が3人以上である場合は、特別控除額を最高で2,000万円とする」こととなります。ご相談のケースはまさにこの制限の対象となるため、2023年中の売却であれば3人で最高9,000万円(3,000万円×3人)控除できるものが、2024年以降の売却になると最高6,000万円(2,000万円×3人)の控除に減ります。この点もご留意いただきながら、売却時期をご検討いただければ幸いです。

 相続財産の譲渡に関する税のご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
 財務省HP「令和5年度税制改正の大綱」など

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