お知らせ

相続の放棄と相続税の計算

私が相続を放棄すると子供たちが相続人になるのですが、その方が相続税が少なく計算されますか?

Q
今月のご相談

 私には長男、長女、次女、三女の4人の子がいます。
 夫は15年前に亡くなり、その際には、跡継ぎである長男がほとんどの財産を相続しました。
 その長男が、先日亡くなりました。長男は独身で子供もおりません。私が相続人になるといわれましたが私も年老いていますので、今更財産を相続するのもどうかと思っております。
 相続人が多ければ多いほど相続税は安くなると聞いています。私が相続を放棄すると他の子供たちが相続することになりますが、子供たちが相続した方が相続税は少なくなりますか?(長男の財産は1億3,600万円です。)

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談者様が相続を放棄されたとしても、その放棄がなかったものとして相続税を計算しますので、相続税は少なくなりません。

A-2
詳細解説
1.相続の順位

 相続に関するルールは、「民法」という法律に定められており、お亡くなりになった方(以下、被相続人)の財産を相続する方には、優先順位があります。まず優先的に相続できるのは、配偶者と子供(子供が先に亡くなっている場合には孫)です。子供や孫がいない場合には、配偶者と両親や祖父母、子供(孫)も両親(祖父母)もいない場合には、配偶者と兄弟姉妹が相続することとなります。

 両親はいるけれど「相続を放棄する」場合には、相続人は次の順位に繰り越され、被相続人の財産は兄弟姉妹が相続することとなります。

 つまりご相談の場合には、ご相談者様であるお母様が相続を放棄することによって、ご長男の財産は他のお子様3人が相続することとなります。

2.相続税の計算

 上記1.のとおり、相続は民法に従うことになりますが、相続税の計算は、相続税法に従って計算を行います。

 相続税法は「課税」を目的とした法律ですので、人によって課税が不公平になることのないように、同じ相続に関するルールでも一部、民法とは異なる特別なルールが設けられています。

 例えば、ご相談のようにお母様が相続を放棄したために、相続人が次の順位の方(兄弟姉妹)に移行した場合にも、この特別ルールが適用されます。

●相続の放棄があった場合の相続税法の特別ルール

  相続税法における取扱い
法定相続人の数 放棄がなかったものとした場合の法定相続人の数
法定相続分 放棄がなかったものとした場合の法定相続人の各法定相続分

 これら法定相続人の数や法定相続分は、相続税の計算過程において、基礎控除や生命保険の非課税金額、相続税の総額の計算などで使用します。

3.ご相談の場合

 ご長男の遺産総額を1億3,600万円として、お母様が相続を放棄した場合の概算の相続税額を試算してみましょう。

相続人 ご長女、ご次女、ご三女
遺産総額 1億3,600万円
法定相続人の数 1人(お母様)
基礎控除額 3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円
相続税の総額 1億3,600万円-3,600万円=1億円
1億円×1/1(お母様の法定相続分)×30%-700万円=2,300万円
相続税額の加算総額(※) 2,300万円×20%=460万円
概算の相続税額(合計額) 2,300万円+460万円=2,760万円
(※)配偶者、および一親等の血族、すなわち子(代襲相続人である孫を含み、代襲相続人ではない孫養子を除く。)および直系尊属(父母)以外の方が相続等した場合には、その人の相続税額が20%加算されます。
ご相談の例ではお母様の相続放棄後の相続人全員が加算対象者ですので、相続税の総額全額に20%が加算されます。
お母様が放棄せず相続した場合には、加算されません。

 民法上の相続人は3人ですが、相続税の計算上は1人となります。また、民法上の法定相続分は各人1/3ですが、相続税の総額を計算する上で用いる法定相続分は1/1となります。このように、民法上と相続税法上で一致しないケースがありますので、ご注意ください。

 相続や相続税に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

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 20代の若者中心に、昭和歌謡曲がブームになっています。
 流行ったのは生まれる前、テレビやネットで聴くことも少なく、
 「エモい!」とばかりに話題になり、
 カラオケでも上位にランキングされる曲もあるそうです。

 そして、歌謡曲ブームから派生して、70年代、80年代に流行った音楽、
 ニューミュージックにも注目が集まっています。
 こちらは海外でも話題となり、
 当時発売されたアナログレコードが高値で輸出されているそうです。

 そんな、何かわからないけど「エモい」感覚に引き寄せられている若者は、
 音楽から映像の世界へ引き寄せられています。
 ビデオ・テープ専用に編集されたショートフィルムを鑑賞できる喫茶店が、
 東京にオープンしました。

 小さいころ、家族で鑑賞した記憶があるくらいで、
 現在、ビデオデッキが自宅や実家にあるはずもなく。
 デジタルネイティブにとって、味わったことがないメカニカルな操作に、
 戸惑いと感動を感じながら、そんなひと時を過ごすそうです。

 「エモい」に酔いしれている若者は知るはずもない、
 その頃のビデオ・テープの規格争い。
 製品の開発に一歩先に出たソニーの「ベータ」に、
 巻き返しを図るビクターの「VHS」の猛攻勢はすさまじいものでした。

 当時のビクターは業界8位の中堅メーカーにしか過ぎず。
 技術力の高さはソニーがダントツで、
 かなり水をあけられる形で松下が入り、次にビクターがついてくる。

 「そんな会社が、家庭用ビデオを作れるとは到底思えない」
 と言うのが世間での評価でした。

 また、社内でも新しいビデオ開発には見切りをつけ、
 業務用ビデオの改良・販売をおこなっていくことに方針転換したのでした。
 「他社に先を越されれば、
 ビデオ事業にかかわる社員、協力工場すべてが仕事を失うことになる」

 当時の事業部長がこう決意したことから、
 本格的に家庭用のビデオ開発に取り掛かることになります。
 それは、本社には黙って「秘密開発部隊」としてスタートしたのです。

 一度も黒字を出したことのない部門、
 業務用ビデオを売り歩き、自らの給与を稼ぎながら、開発を進めていきます。
 また、理由をつけ、売れる見込みのない業務用ビデオを生産し続け、
 事業に携わる人々の首を繋ぎます。

 在庫は溜まりにたまり、月商の7、8ヶ月にもなりました。
 本社からの借入金は年商をはるかに超え30億円以上に…
 金利は6、7パーセントだったので、
 通常の会社なら既に倒産していてもおかしくない状況でした。

 ソニーに遅れること、1年5ヵ月後
 ビクターは家庭用ビデオを発売することが出来ました。
 対抗策として、ビクターが取ったのは、技術を他社に公開することでした。
 日立、松下をはじめとするVHS規格に賛同する企業に、
 試作品を貸し出し、生産ラインまで公開することとしたのです。

 その結果、VHSが家庭用ビデオ規格の主導権を握ることとなったことは、
 歴史が証明するとおりです。

埋蔵文化財包蔵地と解体工事への影響

相続した倉庫の解体工事をする際に、埋蔵文化財が及ぼす影響について教えてください。

Q
今月のご相談

 相続した倉庫が古いため、建物を解体し、更地にした上で売却することを検討しています。お隣の方から「このあたりには、埋蔵文化財が埋まっている可能性がある」と聞いたことがあります。埋蔵文化財が埋まっている可能性について、確認する方法はあるのでしょうか。また埋まっている場合、解体工事等に影響はあるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 埋蔵文化財が埋まっている可能性については、教育委員会等へ“周知の埋蔵文化財包蔵地”の照会をすることで確認することができます。“周知の埋蔵文化財包蔵地”に該当した場合は、解体工事等について規制を受けることになります。

A-2
詳細解説
1.埋蔵文化財とは

 埋蔵文化財とは、土地に埋蔵されている文化財のことを指します(文化財保護法第92条)。

 文化財とは、日本にとって歴史上または芸術上価値の高いものとされる、建造物や絵画、彫刻などの有形文化財、演劇や音楽などの無形文化財、生活の推移の理解のために欠くことのできない民俗文化財、学術上の価値の高い貝塚・古墳等の記念物その他文化的景観や伝統的建造物群などを指します(同法第2条)。いずれもその文化財の保存と活用を図り、国民の文化的向上に資するとともに世界文化の進歩に貢献することを目的に制定された、文化財保護法により保護されています。

 埋蔵文化財の取扱いは、この文化財保護法の規定に基づくこととなります。

2.埋蔵文化財が埋まっているかどうかの確認方法

 埋蔵文化財が埋まっている可能性については、その工事予定地について埋蔵文化財が埋まっている土地(以下、埋蔵文化財包蔵地)として、その存在が知られている土地(以下、周知の埋蔵文化財包蔵地)の範囲内か否かを教育委員会等に照会等することで、確認することができます。具体的な手続は、各市町村のホームページなどでご確認ください。

 なお、文化庁によれば、周知の埋蔵文化財包蔵地は全国で約46万ヶ所あるそうです(文化庁HP「埋蔵文化財」)。

3.解体工事等への影響

 確認した結果、周知の埋蔵文化財包蔵地に該当した場合には、解体工事等について、下記のような規制を受けます。

(1)埋蔵文化財発掘届を教育委員会等へ提出

 工事の60日前までに、文化財保護法第93条に基づく届出を行う。(建物解体工事も含みます。)

(2)教育委員会等から「試掘調査」、「立会調査」、「慎重工事」の指示を受ける
  • ①試掘調査…埋蔵文化財の保護が必要と認められた場合。工事着手前に実施する必要がある。
  • ②立会調査…埋蔵文化財に与える影響が軽微であると判断された場合。工事施工時に立会により調査を行う。
  • ③慎重工事…埋蔵文化財に影響はなく、①や②の必要がないと判断された場合。慎重に工事を行うことを条件に工事着手可。
(3)埋蔵文化財の記録保存等を行う

 上記①及び②により埋蔵文化財が発見され、予定されている工事が埋蔵文化財の保存に影響を与えると判断された場合、発掘調査を実施した上で、埋蔵文化財の記録保存等を行う。

 上記①や②の結果、発掘調査まで行うことになった場合、その調査は慎重に行う必要があることから、調査に時間を要する可能性があります。したがって、解体工事を行う時期が大幅に遅れることが想定されます。

 事前に教育委員会等へ問合せすることにより、教育委員会等が把握している当該地周辺の過去の工事や発掘調査等を踏まえて、上記①や②の調査が指示される可能性について聞き取りできる可能性があります。工事予定地が周知の埋蔵文化財包蔵地の範囲内かどうかを含めて、事前に教育委員会等へ照会等してみることをお勧めいたします。

<参考>
 文化庁HP「埋蔵文化財
 江戸川区HP「埋蔵文化財に関するフローチャート

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二次相続に備えるための生命保険

二次相続対策として生命保険を活用する際のポイントと注意点を教えてください。

Q
今月のご相談

 夫は不動産賃貸業を営んでおり、アパートを所有しています。夫の相続対策は数年かけて検討し、納税や遺産分割で困らないよう生命保険に加入しています。夫が亡くなった後、自宅とアパート、死亡保険金の1/2を妻である私が相続する予定です。私自身も実家から相続した土地を所有しており、駐車場として貸しています。

 このような状況の中、私の相続対策(二次相続対策)として生命保険を活用したいと思いますが、介護やリフォームなどにも備えたいため、保険料を払うことに不安があります。お付き合いのある金融機関に相談したところ、夫の資金で契約するプランを提案されました。このプランのポイントと注意点を教えてください。

【金融機関からの提案プラン】
  • 保険種類:一時払終身保険
  • 保険金額:1,000万円
  • 契約者:夫(※)
  • 保険料負担者:夫
  • 被保険者:私
  • 死亡保険金受取人:夫(※)

(※)夫の相続発生後に、契約者を私、死亡保険金受取人を子に変更することを前提とした提案

【家族構成】
  • 夫:78歳、不動産賃貸業
  • 私:70歳、専業主婦、駐車場の不動産収入あり
  • 子2人:独立してそれぞれ別世帯
【資産状況】
  • 夫:金融資産20,000万円、生命保険死亡保険金5,000万円、自宅土地建物(※)3,000万円、賃貸アパート土地建物1億5,000万円
  • 私:金融資産3,000万円、自宅土地建物(※)3,000万円、実家から相続した土地2,000万円

(※)自宅土地建物は夫、私共有

A-1
ワンポイントアドバイス

 今回のご相談の場合、奥様の二次相続に備えて死亡保障を確保する方法としては、このようなプランを活用してもよいでしょう。ただし、相続発生の順序によっては相続対策としての効果を得られない可能性もありますので、ご注意ください。

A-2
詳細解説

 相続が発生する順序は確定できませんが、ご主人様が先にお亡くなりになると仮定して、この提案プランの税務上の取扱いとポイントを解説します。

1.税務上の取扱い
  • ご主人様がお亡くなりになったとき(一次相続)
    生命保険契約に関する権利として、相続発生時の解約返戻金相当額がご主人様の相続財産に含まれ、相続税の対象となる。
  • 奥様がお亡くなりになったとき(二次相続)
    一次相続後、契約者を奥様、受取人をお子様に変更して継続していれば、お子様が受け取る死亡保険金は奥様のみなし相続財産として相続税の対象となる。お子様が相続の放棄をしない限り、生命保険の非課税枠を適用することができる。
2.提案プランの有用性と注意点

 金融機関から提案されたプランの有用性は、主に次のとおりです。

  • ご主人様が契約者(保険料負担者)になることで、手元資金に不安を感じる奥様が二次相続に備えた死亡保障を早期に確保できる。
  • 想定どおりの順序で相続が発生し奥様が保険契約を引き継いだ場合、例外を除き、二次相続において生命保険の非課税枠を適用することができる。
  • 一次相続発生時、解約返戻金相当額が払込保険料を下回っていればご主人様の相続財産としての評価額が下がることになる。

 通常、二次相続は一次相続から配偶者が抜けることで相続人の数が減ることとなり、基礎控除額が下がります。また、配偶者の税額軽減措置が適用できないため、一般的に税負担が重くなると考えられます。資産状況によると、二次相続で相続税が発生する可能性が高いと推察されますが、現状では奥様ご本人の金融資産に余裕があるとはいえません。奥様の二次相続に備えて死亡保障を確保する方法としては、このようなプランを活用してもよいでしょう。ただし、以下については注意が必要です。

  • 相続発生の順序が想定と逆に奥様が先に亡くなると、ご主人様が受け取る死亡保険金はご主人様の一時所得として扱われ、相続対策としての効果が得られない。
  • 環境や資産状況の激変等により余儀なく解約する場合、解約返戻金が払込保険料を下回ることがある。

 一次相続での財産の分け方や、奥様の生活設計によっても二次相続対策の考え方は異なってきますので、十分な検討をお勧めします。二次相続対策について悩まれた場合には、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

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 16日、米のウォルト・ディズニー社が設立100周年を迎えました。
 有名なキャラクター、
 ミッキーマウスが1928年に公開した短編映画で人気となり、
 映画製作会社の一歩を踏み出すことになります。
 現在では、ディズニーランドの運営をはじめ、
 その傘下には放送局、映画会社をもつエンターテイメント企業です。

 アニメの生みの親ウォルト・ディズニーは、
 イラストレーターとして広告会社に勤めていた時、
 アニメーションに興味を持ち、そこで技術の基礎を学びました。
 自ら会社を作り、アニメ映画の製作に取り組みますが、
 自分のアイデアを買ってくれるところを探し歩く日が続きます。

 最初のヒット作は、ウサギをキャラクターにしたアニメでしたが、
 キャラクターの所有権を持つことが出来ず、
 資金的に苦しい状態が続いたのです。

 夜中の仕事中にゴミ箱に集まってくるネズミにヒントを受け題材とした、
 「ミッキーマウス」の映画は大成功を収めることになります。
 ところが、配給会社との力関係で制作費の割には、
 手元にはわずかなお金しか残らなかったのです。

 あることがきっかけで、そんな状況は一変します。
 ミッキーマウスを大々的に宣伝を行い、
 アニメの本を出版し、新聞にコマ割り漫画を載せたのです。

 その後、アイスクリームのライセンス契約を皮切りに
 様々な商品のライセンス契約を取り付けるようになったのです。
 ライセンス料のお陰で、アニメ制作の事業はかなり潤うことになり、
 経営は安定することになったのです。

 アニメ映画の製作には莫大な費用がかかります。
 特に作品の完成度を求めると、
 初回の興業収入だけでは元を取ることが難しい事もあるのです。
 それゆえ、ライセンス料は質の高いアニメを作るには
 欠かせない収入なのです。
 
 一つの映画が出来上がると、このアニメを題材とした漫画と
 単行本がライセンス契約で出版され、
 また、テーマソングも発売され楽譜も販売されることになります。
 全国の企業からは、映画や登場するキャラクターの関連商品を、
 作り販売するライセンス料を受け取ることになります。
 
 こうして、アニメは映画制作という枠を越え、
 総合マーケティング事業として成り立っていくことになります。
 また、キャラクター達は、何世代にも渡って子供たちを楽しませ続けます。
 たとえ生みの親がこの世を去っても…
 ディズニーはキャラクターには寿命がないことを教えてくれたのです。

 今回は相談事例を通じて、行方不明の相続人がいる場合の相続手続きの進め方について、ご紹介します。

 先日、父が亡くなりました。父の相続人は母と私、そして3歳下の弟です。しかし、弟とは10年前からずっと連絡を取っておらず、行方が分からない状態です。
 相続手続きを進めたいのですが、弟抜きで手続きを進めることはできるでしょうか。

 行方不明者でも、その人が生存している限り、相続権がなくなるわけではありません。遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があるため、その人も含めて相続手続きを行わなければなりません。
 したがって、相続手続きを進めるためには、まず行方不明者の所在を調査します。

 しかしながら、調査をしても行方不明者が調査した住所に住んでいない場合もあります。このような場合、以下の2つの方法を利用して相続手続きを進めていきます。

【不在者財産管理人の申立て】

 利害関係人又は検察官が家庭裁判所に不在者財産管理人の申立てを行い、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない「不在者」の財産を管理する人を選任してもらうことができます。

 不在者財産管理人は、「不在者」の財産を管理・保存するほか、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、「不在者」に代わって、遺産分割・不動産の売却等を行うことができるので、相続手続きを進めることができます(参考条文:民法25条)。

 また、令和5年4月1日から、家事事件手続法の改正により、不在者財産管理人は金銭を供託できることが明文化されました。
 改正前は、「不在者」の行方が分かるか、「不在者」の金銭がなくなるまで不在者財産管理人の業務は続き、「不在者」の財産は、不在者財産管理人の報酬に充てられることが多くありましたが、改正により、「不在者」の金銭を供託することで管理財産がなくなれば、不在者財産管理人の業務は終了となります。これにより、不在者の財産が残りやすくなります(参考条文:家事事件手続法146条の2)。

【失踪宣告】

 失踪宣告とは、従来の住所又は居所を去り、容易に帰ってくる見込みのない「不在者」の生死不明の状態が継続した場合に、「不在者」が死亡したものとして、身分上・財産上の法律関係を確定させる制度です。

 失踪宣告には、普通失踪と特別失踪の2種類があります。どちらも利害関係人が失踪宣告を家庭裁判所に申し立て、失踪宣告の審判を受けて死亡したものとみなされる制度です。

 普通失踪とは、「不在者」の生死が7年間明らかでない場合に、「不在者」の生存が確認された最後の時から7年以上経っている場合に利用できます。
 特別失踪とは、「不在者」が冬山登山の遭難や船舶の沈没に遭遇などの危難に遭遇したことで、生死が不明な場合に、その危難が去った後1年間「不在者」の行方が分からない場合に利用できます。

 失踪宣告がなされると「不在者」は法的に「死亡したもの」と扱われるため、不在者の相続人を遺産分割協議に加えることで相続手続きを進めることができます(参考条文:民法30条)。

 なお、「不在者」が「死亡したもの」とみなされた時期によっては、現在の相続関係が変わり、相続人が変わる、数次相続となる可能性があるので、ご注意ください。
 また、行方不明者に対し不在者財産管理人の選任申立てと失踪宣告、どちらを利用するかについては、個別の事例ごとで判断する必要があるため、お近くの司法書士などの専門家へのご相談をお進めします。

 

 

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 相続する財産より引き継ぐ債務の方が多い場合、他の相続人の相続財産から控除することはできますか?

 父が経営している会社を数年前に私が引き継ぎ、現在は父が会長で、私が社長になっています。
 父は会社から5億円の資金を借り入れ、不動産投資(賃貸ビルの投資)をしています。
 この不動産も会社経営に影響することから、父が亡くなったときには、会社からの借金とともにこの不動産を相続する予定です。
 現状、不動産の財産評価額として、賃貸ビルが5,000万円、賃貸ビルの敷地部分は2億円となります。
 他方、借金の残高は4億円あると聞いています。
 今、父の相続が開始した場合、2.5億円(5,000万円+2億円)の財産に対して、借金4億円を相続することとなり、引き継ぐ債務の方が多くなります。このようなとき、他の相続人の相続財産から引ききれない債務1.5億円(4億円-2.5億円)を控除することができるのでしょうか?

 ご相談のような相続した財産よりも引き継ぐ債務の方が大きい場合、他の相続人の相続財産から引ききれない債務を控除することはできません。

1.納付すべき相続税額の計算

 納付すべき相続税額の計算は、まず課税価格の合計額から基礎控除額を差し引き、その差額(課税遺産総額)に対して、法定相続人ごとに法定相続分に従って取得したものとして“相続税の総額”を計算します。この相続税の総額を実際に取得した人ごとに割り振り、納付すべき相続税額を計算します。

2.課税価格の計算

 上記1.の計算において、まず課税価格の合計額を計算することになりますが、「課税価格の合計額」とは、相続又は遺贈などにより財産を取得した人ごとに計算した課税価格の合計額を指します。

 課税価格は、各人ごとに以下の算式により計算します。

相続又は遺贈により取得した財産の価額 + みなし相続等により取得した財産の価額 ー 非課税財産の価額 + 相続時精算課税に係る贈与財産の価額 ー 債務及び葬式費用の額 = 純資産価額(赤字のときは0)
純資産価額 + 生前贈与加算 = 課税価格(1,000円未満切捨て)

 上記のとおり、各人ごとに課税価格を計算する過程において、純資産価額の計算時に赤字(マイナス)となった場合には「0」となることから、マイナス部分を他の相続人の相続財産から差し引くことはできません。

 ご相談の場合、相続財産から引ききれない債務1.5億円は、純資産価額の計算において0円となりますので、他の相続人の相続財産から差し引くことはできません。また、仮にご相談者様が生前贈与加算を活用して生前贈与を実行したとしても、相続財産から引ききれない債務1.5億円を生前贈与加算分と相殺することもできませんので、ご注意ください。

 相続税に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
 国税庁HP「No.4152 相続税の計算

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 かつて、微力であった人間は努力し工夫を積み重ね、
 宇宙に飛び立つことさえ出来るようになりました。
 また、古代人から見ると無であったものから、
 科学の力を得ていろいろな物を作れるようにもなりました。

 しかし、自然は依然として人間の能力をはるかに超え、
 時には牙をむき出しにして、人間に襲いかかり、悲惨な爪あとを残します。
 昭和34年に上陸した伊勢湾台風は、紀伊、東海地方を中心に大きな被害となり、
 台風災害としては最大級の被害となりました。

 日本人は、これまで様々な天災を経験してきましたが、
 その都度、苦境をバネに見事に復興を遂げています。
 メルマガでご紹介しています、先人の中にも災害や戦争を契機に起業し、
 新しい産業にまで成長させた方々がたくさん居られます。

 「住宅は木造でないといけない」という概念を取り去り
 「プレハブ住宅」を生み出したのは、大和ハウス創業者 石橋信夫氏です。
 戦後、復員して間もない時に、関西地方を襲った大型台風。
 無残に吹き飛ばされた住宅を目にして、その悲惨さを哀れんでいた石橋氏は、
 ふと住宅の周りにある、田んぼの稲や、
 竹林の竹が折れていないことを不思議に思ったのです。

 頑丈な木造で作られている住宅より、風になびくような稲や竹の方が
 どうして丈夫なのか「なぜだろう」と考えました。
 稲の茎も竹の幹も円形で中空ではないかと。

 それならば、同じような形体をしている鉄パイプを使えば、
 丈夫な住宅が出来るのではないか」
 石橋氏は、早速この鉄パイプを使った家屋を、
 「パイプハウス」と名付けて販売したのです。

 戦後のベビーブームの影響で、日本中の小学校は子供たちで溢れていました。
 増える子供たちで教室が足なくなっていましたが、
 校舎の増築に間にあわず、また、増やした教室は何年か経てば、
 使わなくなってしまうこともわかっていました。
 そこで、考え付いたのが「パイプハウス」を利用した教室だったのです。

 戦後のベビーブームの影響で、日本中の小学校は子供たちで溢れていました。
 増える子供たちで教室が足なくなっていましたが、
 校舎の増築に間にあわず、また、増やした教室は何年か経てば、
 使わなくなってしまうこともわかっていました。
 そこで、考え付いたのが「パイプハウス」を利用した教室だったのです。

 各学年の生徒の人数に合わせて、仮設の教室を作り、
 その小学生が中学に進学したならそのまま、
 中学へ持っていくという「移動教室」を生み出したのです。

 また、仕事に追われる中、趣味の川釣りに出かけた時のことです。
 夕暮れ近くになっても、家路に着かない子供たちがたくさんいたのです。
 心配になり尋ねてみると
 「帰っても、家が狭くて、勉強する部屋も、遊ぶ場所もない」と答えたのです。

 子供たちに簡単でもいいから自分の部屋を与えてあげたい。
 そんな気持ちから、家の庭に簡単に建てられる「勉強部屋」を考えました。
 柱には軽量鉄骨を使い、屋根と壁には断熱材を使った
 「ミゼットハウス」を生み出したのです。
 これが出発となり、お客様からの要望から「トイレ」「台所」と付け加えて
 本格的な「プレハブ住宅」となるのでした。

 離れがある場合の空き家の3,000万円控除は、敷地全体について適用できるのでしょうか?

 自宅には母屋の他、子どもが独立する前に住んでいた離れがあります。この離れは現在誰も住んでおらず、放置しています。将来の私の相続を考えたとき、離れをそのままにしておいても問題ないでしょうか。現在、私は一人暮らしをしており、相続人となるであろう子どもたちはすでに全員独立して、別の場所で居を構えています。恐らく相続後に自宅を売却するのではないかと思います。

 相続開始後に相続人が空き家を売却した場合には、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除(以下、本制度)」という制度の適用を検討されるとよいと思います。離れがある状態でこの制度を適用する場合、不動産の建築年や取引条件が本制度の適用条件を満たしても、敷地全体のうち自宅(母屋)の床面積の占める割合についてのみ適用を受けることになり、離れの部分は適用の対象から外れます。

1.本制度の概要

 相続または遺贈によって被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却し、一定の要件に当てはまるときは(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限る)、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる制度です。

 

2.「主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物」とは

 「主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物」とは、「亡くなった方の生活の本拠であった自宅」をいいます。ゆえに、自宅(母屋)以外の「離れ」は「本拠であった自宅」にあたらないため、本制度の適用を受けることはできません。

【国税庁HPより抜粋】
相続の開始の直前においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります。
3.具体的な事例

【事例の内容】

A 敷地面積 B 自宅(母屋)の床面積 C 離れの床面積
1,000㎡ 300㎡
(被相続人居住用家屋)
200㎡

【計算方法】

  • ① 自宅(母屋)の床面積割合計算
    B 300㎡÷(B 300㎡+C 200㎡)=0.6
  • ② 本制度の適用を受ける敷地面積の算出
    A 1,000㎥×①で算出された割合 0.6=600㎡

 この具体例の場合、敷地面積1,000㎥に対して、600㎡についてのみ本制度の適用を受けることができます。

 将来の相続においてどのような遺産分割協議が行われるか、実際にご相談者様が住んでおられる土地が売却されるか否かは不透明ですが、少なくとも本制度の適用を受ける場合に、最大限の恩恵を受けるのであれば、離れが現存のままであると、上記のように適用対象から外れてしまう部分があることにご留意ください。

 その他、具体的な本制度の適用範囲、それに伴う税金の計算についてご不明な点がありましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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 生命保険の受取人が1人であったものを、契約の途中から全く別の2人へ変更することは可能でしょうか。

 生命保険の受取人変更を検討しています。加入中の生命保険の受取人は長男になっていますが、私の介護をしてくれている次男夫婦に変更し、平等に保険金を遺したいと考えています。変更をすることで保険金の受取人が複数となり、かつ、そのうち1人は血縁関係のない次男の嫁となりますが、契約の途中からこのような変更を行うことは可能でしょうか?

【現状】
死亡保険金受取人:長男 100%
【変更後】
死亡保険金受取人:次男 50%、次男の嫁 50%

 保険金の受取人は複数指定することが可能です。ただし、血縁関係のない方の受取人指定は、保険会社や個別事情によりできるか否かが異なります。詳細は保険会社にご確認ください。

1.保険期間中の受取人変更、複数の受取人指定は可能か?
(1)保険期間中の受取人の変更

 契約者は原則として、保険金等の受け取り事由が発生する前であれば、契約の途中であっても受取人変更を行うことが可能です。ただし、受取人の変更は被保険者の同意が必要となります。

(2)複数の受取人指定

 また、今回のご要望のように、複数人を受取人として指定することも可能です。
 保険金受取人を複数にする場合、受取人ごとに受取割合を決め、合計100%になるように指定します。

2.血縁関係のないご次男の奥様を受取人として指定できるか?

 死亡保険金の受取人は、原則、「配偶者および2親等以内の血族(祖父母、父母、兄弟姉妹、子、孫など)の範囲内で指定する」と定めている保険会社が多いです。そのため、血縁関係のないご次男の奥様は、受取人として指定できない可能性があります。ただし、保険会社や個別事情によっては、血縁関係がない場合でも、受取人として指定できることもあるようですので、詳細は契約されている保険会社にご確認ください。

3.受取人変更を行わず、ご長男様からご次男夫婦へ保険金を渡した場合

 もし受取人変更を行わず、死亡保険金を受け取ったご長男様が、その後ご次男様とご次男の奥様に保険金相当額を渡した場合、ご長男様からご次男様とご次男の奥様への贈与となり、ご次男様とご次男の奥様が受け取った保険金相当額は贈与税の対象となります。

 上記3.のような行為が確実に行われるかどうかは定かではありません。
 今回のご相談のように保険金を渡したい人が変わった場合は、保険会社に手続き方法を確認の上、生前に受取人変更を行いましょう。

 

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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