お知らせ

不動産登記名義人となる外国居住者の国内連絡先の登記について

今回は相談事例を通じて、海外に住む人が日本国内の不動産を相続した場合の国内連絡先の登記について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 私の父が亡くなりました。父の相続人は母と兄と私です。
 長男である兄が不動産を相続する予定ですが、兄は現在、アメリカに住んでいます。どの住所で登記がされるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 お兄様が不動産の所有者となる場合、外国に居住をされているため、外国の住所で登記がされます。このとき、住民票の代わりとして、在留証明書を添付します。

A-2
詳細解説

 不動産の所有者となる方が国内に住所がない場合には、国内における連絡先となる者の氏名・住所等の国内連絡先事項を申請情報として提供する必要があります(国内連絡先となる者がないときは、その旨を申請情報とすることもできます)。

 この制度は、令和6年4月1日以降にする登記について、適用されています。

 また添付情報として、国内連絡先事項を証する情報、国内連絡先となる者の承諾情報及び国内連絡先となる者の印鑑証明書(又は電子署名及び電子証明書)を提供する必要があります。

 なお、国内連絡先事項は登記されますが、その内容は以下のとおりです。

(1)ア 国内連絡先となる者(一人に限る。)の氏名又は名称並びに国内の住所又は国内の営業所、事務所その他これらに準ずるものの所在地及び名称

イ 国内連絡先となる者が会社法人等番号を有する法人であるときは、当該法人の会社法人等番号

(2)国内連絡先となる者がないときは、その旨

 また国内連絡先は、親族でなければならないという規定はありません。

参考:
法務省「令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

弊事務所の年末年始休業日をご案内します。
ご不便をおかけしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■ 年末年始休業日
 2024年12月28日(土曜日)~2025年1月5日(日曜日)

土地の分割と評価単位

土地を分割して相続しようと思うのですが、分割のしかたによって、評価額は変わるのでしょうか?

Q
今月のご相談

 父の名義で下の図のような土地(合計900㎡)を所有しております。この度父が亡くなり、この土地をどのように分割しようか相続人3名(A、B、C)で遺産分割協議中です。分割のしかたによって、相続税の計算上、相続財産としての評価額は変わるのでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談者様がご懸念のとおり、相続税の計算上、誰がどのように相続するかによって、土地の評価額が変わる場合があります。

A-2
詳細解説
1.土地の評価単位

 土地の評価は、①地目ごと、②利用単位ごと、③取得者ごと、に1つの土地として評価することになっています。したがって、必ずしも地番ごと(1筆ごと)に評価することにはなりません。

 ご相談の土地について当てはめて考えてみますと、次のとおりです。

①地目ごと
3筆ともに地目は宅地であるため、全体を1つの土地として評価
②利用単位ごと
3筆ともに空き地(未利用地)であるため、全体を1つの土地として評価
③取得者ごと
1人の相続人が3筆すべて相続する場合や3筆すべてを共有で相続する場合には、全体を1つの土地として評価

 仮に21番地は相続人A、22番地は相続人B、23番地は相続人Cがそれぞれ相続する、という場合には、取得者ごとに相続することになるため、3筆を別々に評価します。

2.評価額の計算

 ご相談のケースで、仮に①全体を1つの土地として評価した場合と、②3筆別々に評価した場合とで、評価額がいくらになるか計算してみましょう。

①全体で評価

200千円×0.91(※)+100千円×0.91(※)×0.02(※)×15m÷30m=182,910円

182,910円×900m=164,619,000円

②別々で評価

21番地:

200千円×1.00(※)=200,000円

200,000円×300㎡=60,000,000円

22番地:

200千円×1.00(※)=200,000円

200,000円×300㎡=60,000,000円

23番地:

100千円×1.00(※)=100,000円

100,000円×300㎡=30,000,000円

合計:150,000,000円

(※)普通住宅地区…奥行価格補正率0.91(40m以上44m未満)・1.00(20m以上24m未満)、二方路線影響加算率0.02

 上記のとおり、評価額の差額が14,619,000円も生じる結果となりました。適用される税率が20%の場合では、納付する相続税額に300万円弱の差が生じます。

3.不合理分割の場合

 ただし、利用の単位が同じ土地について取得者を分けて相続する場合には、その分割の合理性に配慮しなければなりません。例えば、下図のように高い路線価に面した部分のみをAが、その他をBが相続したような場合には、「不合理分割」と判定され、取得者ごとに別々に評価することは認められません。相続した部分が、それぞれ独立して有効利用できるか否かが判断のポイントとなります。

 評価額の高い低いの判断のみでは分割協議はまとまりませんが、分割協議の内容によって納付する相続税額が大きく異なる結果となります。十分に検討する必要があるでしょう。

 相続税の計算における土地の評価については、お気軽に当事務所へご相談ください。

<参考>
国税庁HP「二方路線影響加算の方法」、財基通7、7-2など

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 スーパーやショッピングセンターの一角に売り場を構え、
 日常的な買い物はすべて済むのではないかと思える充実ぶりの100円ショップ。
 最近では、生鮮品も扱っていたりお洒落な雑貨が中心だったりと、
 チェーン店によって工夫を凝らした品揃えで目移りしてしまいます。

 バブル崩壊後のデフレの波に乗り急成長してきましたが、
 当時は、ショッピングセンターのテナントスペースの穴埋めや、
 スーパー内の売場縮小による空きスペースのピンチヒッター役として、
 テナント側にとっても無くてはならない存在でした。

 そんな100円ショップの代表格、ダイソーの創業者 矢野 博丈氏は、
 現金仕入による、廉価販売からスタートして、
 現在の会社の基礎を作り上げたのです。

 最初に始めた事業に失敗して、その後セールスマン、古紙回収など、
 仕事を転々とした後、雑貨の移動販売、いわゆる「バッタ屋」を始めます。

 スーパーの店頭や催事場、公民館などを1週間ごとトラックで回り、
 倒産した会社や資金繰りの苦しくなった会社から買い取った商品を、
 ディスカウント価格で売りさばいていく商売です。
 現金仕入であるため、商品は安く仕入れるのですが、
 品出しから、陳列、精算まで、全て一人でこなさなくてはならないのでした。

 その後、均一価格で商品を販売する商売をはじめ、
 事業の規模を大きくしていきます。
 しかし、「催事場が汚くなる」という理由から、
 主な納入先であった大手スーパーから取引を断られることになります。

 どうしたらいいかと、思いあぐねた末に考え付いたのが、
 スーパーに出入りするお客に来てもらえる場所に、
 催事場の代わりとなる店舗を作ることだったのです。
 これが今日の100円ショップの始まりとなりました。

 いわゆる「バッタ屋」の特徴は、現金支払いをすることで、
 安く品物を仕入れることです。
 どうして現金支払いであると安く仕入れられるのでしょう。

 経営に行き詰った会社や経営が上手く行っていない会社は、
 今日、明日のお金を必要としています。
 たとえ、その売値が商品の仕入れた価格の何分の一になろうとも、
 とりあえずのお金が欲しいのです。

 売れ行き不振の商品や大量の返品を受けた商品は、
 その商品を次に買ってくれる会社を探すことはとても難しくなります。
 返品無しで買ってくれる会社があれば、「廃棄するより、マシ」とばかりに、
 価格のことは、二の次で売ってしまいたくなるのです。

 このように、商売が上手く行っていないところがあるからこそ、
 現金仕入というメリットが生きてきます。
 そこには、掛であれば、仕入れてから1ヶ月以上遅く支払えばいいはずの
 仕入代金を、仕入と同時に現金で支払っても有り余るほどの、
 儲けが隠されているのです。

空き家等に係る媒介報酬規制の見直し

空き家の売買取引で高額な媒介報酬を提示されたのですが、法的に問題はないのでしょうか。

Q
今月のご相談

 相続により取得した遠方の空き家を売却するため、地元の不動産業者に相談したところ、査定額300万円に対し、その1割以上となる税込33万円の媒介報酬(仲介手数料)を提示されました。その不動産業者からは、「通常よりも媒介業務に要する費用が多額のため」との説明がありましたが、法的に問題はないのでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談の不動産業者の対応は、空き家等に係る媒介報酬規制に基づいたものとなりますので、法的に問題はありません。

A-2
詳細解説
1.媒介報酬における法的問題について

 令和6年7月1日に、空き家等に係る媒介報酬規制の見直しが行われ、低廉な空き家等(物件価格が800万円以下の宅地・建物)の売買取引に係る媒介報酬額について、当該媒介業務に要する費用を勘案して、原則による上限を超えて報酬を受領できることになりました(30万円の1.1倍が上限)。

 そのため、ご相談の不動産業者の対応は、媒介報酬規制に基づいたものと判断され、法的に問題はありません。

 なお、当該媒介報酬額を受領するためには、媒介契約締結前に、予定する媒介報酬額について依頼者に説明し、合意をする必要があります。依頼者であるご相談者様が合意をしない限り、当該媒介報酬額を請求・受領することはできません。

 しかし、合意をしない場合、不動産業者はご相談者様と媒介契約を締結しない可能性がありますので、注意が必要です。

2.空き家等に係る媒介報酬規制見直しの背景

 それでは、今回の見直しが行われた背景について、簡単に説明させていただきます。
 空き家等に係る媒介報酬規制は、「不動産業による空き家対策推進プログラム」に伴い見直しが行われました。なお、宅地建物取引業法において、不動産(低廉な空き家等を除く)の売買取引における媒介報酬額の上限(税込)は、下記のとおり定められています。

  1. 200万円以下の金額:100分の5.5(5.5%)
  2. 200万円を超え400万円以下の金額:100分の4.4(4.4%)
  3. 400万円を超える金額:100分の3.3(3.3%)

 上記の左側にある金額に区分して、それぞれの金額に右側の割合を乗じた金額を合計した金額が上限となります。

 たとえばご相談の空き家の売買価格が査定額と同じ300万円であった場合、上記に基づく媒介報酬額の上限は、税込154,000円(200万円×5.5%+(300万円-200万円)×4.4%)となります。なお未成約の場合、媒介報酬を請求することができず、加えてそれまでに要した費用についても請求しないことが多いため、税込154,000円の報酬で遠方の空き家について媒介契約を締結する不動産業者は稀であると推測されます。

 故に、低廉な不動産の売買取引が困難となり、低廉な空き家等が増加する一因となっていたため、平成30年1月1日から物件価格が400万円以下の空き家等の売買取引に係る媒介報酬額の上限が、売主に限り18万円(税抜)に引き上げられました。

 しかし、その後も空き家等の増加に歯止めがかからず、空き家等の流通促進が喫緊の課題となったため、今回の見直しに至りました。なお、今回見直しとなった媒介報酬額の上限は、売主だけでなく、買主も対象となります。

 上記のとおり、不動産業者が低廉な空き家等の売買取引の媒介を積極的に取り扱えるようにするため、今回の見直しを行った経緯があります。上限額である税込33万円で合意する必要はないと思いますが、地元の不動産業者が受け入れ可能な媒介報酬額まで歩み寄ることについては、ご検討いただいた方がよいと考えます。

 なお、遠方の物件は何かと勝手がわからず相続で取得しても手に余るケースが多いものです。生前のうちに資産整理は進めておかれるとよいでしょう。

(※)低廉な空き家等の賃貸借取引に係る媒介報酬額については、貸主から受領できる媒介報酬額の上限が賃料1ヶ月分の2.2倍に引き上げられました。(貸主および借主から受領できる媒介報酬額の合計は、賃料1ヶ月分の1.1倍以内が原則です。)

<参考>
 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し

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限定承認と生命保険

相続の限定承認をした場合でも、死亡保険金は受け取れますか?

Q
今月のご相談

 先日、父が亡くなりました。生前の父は多額の借金を抱えていたため、相続を放棄しようと考えていたところ、知人から限定承認を勧められました。限定承認とは、どのような制度なのでしょうか?
 また、父は私が受取人の生命保険に加入していたため、受け取りの手続きをしたいと思っていますが、限定承認をした場合でも死亡保険金を受け取ることはできますか?

【父の資産と負債】
  • 資産:1,000万円
  • 負債:4,000万円
【生命保険の契約内容】
  • 契約者(保険料負担者):父
  • 被保険者:父
  • 死亡保険金受取人:私
A-1
ワンポイントアドバイス

 限定承認をした場合でも、死亡保険金を受け取ることは可能です。限定承認の詳しい内容は、詳細解説をご参照ください。

A-2
詳細解説
1.相続財産の引き継ぎ

 相続財産の引き継ぎは、大きく分けて「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの方法があります。

  1. ①単純承認
    プラスの財産(資産)もマイナスの財産(負債)もすべて引き継ぐ方法
  2. ②限定承認
    引き継ぐ資産を限度として負債を引き継ぐ方法
  3. ③相続放棄
    プラスの財産(資産)・マイナスの財産(負債)のいずれも全く引き継がない方法

 今回のご相談の資産と負債の額でそれぞれの方法を示すと、以下の図のとおりとなります。

2.限定承認をした場合、死亡保険金は受け取れるのか

 民法では、受け取った死亡保険金は相続によって取得したものではなく、死亡保険金受取人の固有の財産とされています。
 そのため、ご相談のケースにおいて、ご相談者様が限定承認をしたとしても、保険金受取人として死亡保険金を受け取ることができます。これは相続放棄をしたとしても、同様です。

3.死亡保険金の取扱い

 受け取った死亡保険金は、相続税法上ではみなし相続財産となります。相続人は受け取った死亡保険金について、一定の非課税制度を適用することができます。
 相続を放棄した場合には相続人とはなりませんので、当該非課税制度を適用できませんが、限定承認であれば相続人としての地位はありますので、適用することができます。

 なお、限定承認や相続放棄については、申立期限が決まっているなど一定の約束事があります。
 保険金だけでなく課税関係の問題もありますので、相続財産の引き継ぎ方法でお悩みの場合には、当事務所へお気軽にご相談ください。

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 サントリーとのコラボレーションによって生まれた「伊右衛門」
 そのネーミングのもととなった、福寿園は200年を超える、
 老舗の製茶メーカーです。
 そんな永い歴史を持つ企業が積み上げてきた
 「続ける経営」の智恵とはどのようなものでしょう。
 
 飲料の多様化により茶葉自体の消費は減り続けており、
 同社では、お茶の新しい楽しみ方を提案しています。
 京都市などに体験施設を運営していて、来年3月には本社工場近くに、
 お茶文化を体験できるテーマパークのオープンを目指しています。
 
 お土産や観光地での、「お茶」のイメージとは裏腹に、
 ずいぶん永い間、京都の製茶メーカーは他の産地や
 外国からの輸入に押されがちでした。
 
 創業者 福井伊右衛門氏の名前からとった「伊右衛門」のヒットは、
 ペットボトルのお茶という今までには無い形で
 京都の「お茶」のイメージを復活できたのではないでしょうか。
 このことは、京都に1000社以上残る老舗企業にとっても、
 元気づけられるものでもあります。
 
 右肩上がりで成長を続ける、ベンチャー企業の経営者でも、
 「老舗」という言葉には弱いものがあります。
 たとえ売上高が勝っていても、歴史と言う壁には、
 どうしても太刀打ちできないからです。
 
 老舗には、看板商品と言うものが存在します。
 「…屋」といえば○○、千枚漬けといえば○○…といった風に、
 何代にもわたって販売し続けることが出来る商品をもっており、
 言い換えれば、ロングセラーがあるからこそ
 老舗として成り得るのではないでしょうか。
 
 ある商品がヒットしたからといって、
 すべてがロングセラーとなるわけではありません。
 ロングセラーとなるには、類似商品が続々と登場するなか、
 他の商品を寄せ付けない品質を持っていなければなりません。
 製法、材料、技術に関して、自社でないと作れない商品を持つこと、
 それが「老舗」への第一歩となるのです。
 
 「打ち上げ花火のように、パッとあがって、サッと消える。」
 創業後そんなに経たない会社では、こんなリスクを負っても、
 将来のため挑戦しないとならないことがあります。
 逆に50年、100年…と社歴を重ねてきた会社には、
 同じようにリスクをかけた行動は、慎むべきことです。
 
 京都には「身の程」をわきまえた、商売を続けている
 老舗がたくさんあります。
 観光に来られた事がある方なら、よくご存知でしょうが、
 京都には和菓子の老舗が市内のいたるところに、点在しています。
 気候の良い季節の休日となれば、店の前に長蛇の行列が出来る
 お店も少なくありません。
 
 グルメ雑誌にも頻繁に紹介され、人ごとながら、
 オーナーの懐具合が気になるほどの繁盛振りでも、
 そのお店は、決して大きな工場を構えたり、繁華街に出店したりはしません。
 その日一日の、販売量を決めそれ以上に作ることはしないのです。

 「たくさん儲ける事より、永く儲けること」
 「自分一代でなく、代々続けること」
 「自分ひとりでなく、社員、仕入先が潤うこと」
 そこには「投資家」という存在が入ってくる余地がありません。
 「老舗」を見習い、「続ける経営」を見直してみてはいかがでしょう。

相続人が不存在の場合の財産処分と相続財産清算人の申立て

今回は相談事例を通じて、相続人が不存在の場合の財産処分と相続財産清算人の申立てについて、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 同居していた兄が亡くなりました。兄は独身で子供はおらず、親はすでに亡くなっています。兄弟は私一人ですが、私は相続放棄をしています。自宅に兄の財産があるのですが、処分してもよいでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続放棄をしても、その放棄の時に被相続人の財産を現に占有している時は、他の相続人又は「相続財産清算人」に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない(民法第940条)とされていますので、ご相談者様が勝手に処分することはできません。

 また今回のケースでは、ご相談者様が被相続人(お兄様)の財産を処分した場合、被相続人の相続の単純承認事由に該当すると考えられますので、ご注意ください。

A-2
詳細解説

 相続人がいない場合、利害関係人は家庭裁判所に「相続財産清算人」選任の請求をすることができます(民法第952条1項)。

 この利害関係人には、被相続人の債権者だけでなく、被相続人の財産を管理している者が含まれますので、ご相談者様が「相続財産清算人」選任の申立てをすることができます。

 「相続財産清算人」とは、相続人の代わりに被相続人の財産(債権・債務)を清算する人のことで、被相続人の相続財産を適切に管理し、残余財産があった場合、国庫へ帰属させる役割があります。なお、相続財産清算人は2023年4月1日の民法改正前は、相続財産管理人として規定されていました。

 ご相談者様にて「相続財産清算人」選任の申立てを行い、選任された「相続財産清算人」にご相談者様の保存する被相続人の財産を引き渡すことができれば、財産管理義務はなくなります。

 「相続財産清算人」の申立てには、裁判所の判断が必要であったり、必要な書類が煩雑であったりするため、お近くの司法書士などの専門家へのご相談をお勧めします。

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契約者貸付金とみなし相続財産

父の死亡により、死亡保険金を受け取りましたが、その際に契約者貸付金が控除されています。これはどのように取り扱えばよいのでしょうか。

Q
今月のご相談

 父の死亡により、死亡保険金を受け取りましたが、その際に契約者貸付金が控除されています。明細を確認したところ、死亡保険金1,000万円に対して契約者貸付金250万円があり、控除した残額750万円が振り込まれています。これは相続税の計算上、どのように取り扱えばよいのでしょうか。
 なお、保険契約者、保険料負担者、被保険者ともに父であり、死亡保険金受取人は私(父の子)です。また、相続人は母と私の2人で、相続の放棄はしていません。

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談のケースにおいて、相続税の計算上、みなし相続財産となるのは750万円です。死亡保険金に係る非課税限度額は1,000万円となるため、他にみなし相続財産がなければ、750万円全額相続税がかかりません。なお、契約者貸付金は被相続人の債務とはなりません。

A-2
詳細解説
1.契約者貸付金等がある場合の保険金

 保険金の額から契約者貸付金等の額が控除されて支払われる場合には、相続税の計算上、その保険契約者が誰かによって、それぞれ次のように取り扱われます。

  • 保険契約者=被相続人
    保険金受取人は、当該契約者貸付金等の額を控除した金額に相当する保険金を取得したものとし、当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する保険金及び当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する債務はいずれもなかったものとする
  • 保険契約者=被相続人以外
    保険金受取人は、当該契約者貸付金等の額を控除した金額に相当する保険金を取得したものとし、当該控除に係る契約者貸付金等の額に相当する部分については、保険契約者が当該相当する部分の保険金を取得したものとする
2.ご相談の場合

 ご相談の場合、保険契約者=被相続人であるため、死亡保険金1,000万円から契約者貸付金250万円を控除した残額750万円がみなし相続財産となります。

 また、相談者様は、相続人であり相続の放棄もしていないことから、死亡保険金に係る非課税制度が適用できます。

 具体的には、次の金額が非課税限度額となるため、他に死亡保険金に係るみなし相続財産がなければ、750万円全額について適用することができ、結果として相続税の対象とはなりません。

500万円 × 2 = 1,000万円

 このように、死亡保険金は非課税限度額いっぱい掛けていたとしても、契約者貸付金があることから差し引かれた金額がみなし相続財産となり、非課税限度額を有効活用しきれていません。

 仮に契約者貸付金でない金融機関からの借入であった場合には、死亡保険金から控除されることもなく非課税限度額を有効活用した上で、借入金は被相続人の債務として、他の相続財産から控除することができました。

 

 ただし、借入金の利率やその他を総合的に検討する必要があるため、相続税の計算の有利不利だけの検討は危険です。相続や相続税の計算については、お気軽に当事務所へご相談ください。

<参考>
相続税法基本通達3-9など

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 温暖化で紅葉を楽しむのは少し先となりそうですが、
 既に国内外の観光客で溢れかえっている、こちら京都です。
 路線バスにスーツケースなどの大型手荷物持ち込みを減らそうと、
 専用コインロッカーを用意したり、
 中心部へマイカーの侵入を規制するため、
 駐車場を入庫禁止や予約制にして、混雑緩和に躍起です。

 嵐山は、春は桜、秋は紅葉と、風景が美しい場所であると共に、
 近くに、東映太秦映画村や松竹京都撮影所が存在し、
 時代劇撮影のメッカでもあります。
 皆様は、嵐山にあるお寺の山門や、竹林の風景を無意識に目にしているのです。

 そのような時代劇ですが、灯火は消えつつあります。
 京都で撮影される連続時代劇が少なくなり、
 地元では、長い歴史の中で培われたノウハウを絶やすまいと、
 復活の声が待ち望まれています。

 時代劇は、歌舞伎の影響を受けて生まれ、特に時代劇の定番である、
 「チャンバラ」は、歌舞伎の演目から取り入れられたといわれています。
 歌舞伎は、古くからの大衆芸能のひとつであるでありますが、
 その歴史は脈々と続き、日本の伝統芸能となっています。

 明治になり外国文化が入ってくるまで、
 歌舞伎は日本の大衆芸能として絶大な人気を誇っていました。
 「アイドル」や「スター」も生まれたそうですから、
 映画スターに熱をあげる、現代のファンとなんら変わりがないといえます。

 大正に入ってから、歌舞伎を支え続けているのが、
 映画、演劇興行を行う、松竹です。
 現在は建て替え中で閉館していますが、歌舞伎座を有し主な上演場所とするほか、
 各地での興行も一手に取り仕切っています。

 創業者 大谷竹次郎氏は、興行相撲で、お茶やタバコの販売、
 貸し座布団商売を行う父の下に生まれます。
 父は、商売の場所を劇場に移し、その後売店の経営を始めます。
 19歳のときに、父から権利を引継いだのを契機に、
 次々と京都の劇場を手に入れます。

 大阪に進出して、上方興行界を支配したかと思うと、
 さらに、東京に進出して大手劇場を買収し、
 歌舞伎座も大正2年に手に入れることとなります。
 映画の時代に移り、松竹も軸足をそちらに移しますが、
 歌舞伎の興行については、独占的な窓口となっています。

 大衆芸能と称されるものの多くが、一時のブームとして消えていく中で、
 このように長い間、歌舞伎が受け継がれていけたのは、
 大きなスポンサーの後ろ盾があったことが大きいといえます。

 加えて、「○○屋」というスポンサーのブランドとなる、
 ブランドをつけてもらうことなり、
 役者ごとの個性を引き立たせることができたのです。
 時代劇が、その時々の観客に受けが良いようアレンジされすぎて、
 形骸化してしまったのとは対照的です。

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