お知らせ

 契約者貸付制度利用中に死亡保険金が支払われることとなったときの相続税計算上の留意点を教えてください。

 父は個人で不動産賃貸業を経営しています。新型コロナウイルス感染症の影響による景気の悪化で、テナントから家賃の滞納や減額要請が続き、資金繰りが悪化しました。保険会社の担当者から契約している生命保険で貸付を受けられる制度があると聞き、父はその制度を活用して当面の事業資金に充てたいと言っています。この生命保険は父の相続に備えて契約したものです。貸付を受けて返済せずに死亡した場合、保障内容や相続税に影響が生じないか教えてください。なお、保険料の払込みは完了しています。

  1. <契約形態>
    • 契約者(保険料負担者):父
    • 被保険者:父
    • 死亡保険金受取人:子(相談者)
    • 死亡保険金額:2,000万円
    • 保険種類:終身保険

 ご相談の制度利用中に死亡した場合には、当該貸付額の元金と利息の合計額を差し引いた金額が死亡保険金として支払われます。死亡保険金がその分減額されることから、相続税の非課税枠を十分活用できない可能性があります。

1.契約者貸付制度

 保険会社の担当者から案内されたのは「契約者貸付制度」と言い、解約返戻金の一定範囲内で貸付が受けられる制度です。保険会社や保険種類等により制度の対象となるか否が異なり、また、限度額や利率等の条件も契約によって違いがあります。

2.契約者貸付制度利用中に死亡した場合に支払われる保険金額

 上記1.の制度を利用して貸付を受けたとき、基本的には保険契約の効力を失うことはありません(※)が、貸付を受けている間に死亡した場合は、契約の死亡保険金額から元金と利息の合計相当額を差し引いた額が受取人に支払われます。

 (※)保険会社によっては、利息が膨らみ一定の限度額を超えると利息相当額の入金が必要になる。
利息相当額を期限内に入金しなかった場合、失効扱いとする規定を設けている。

3.上記2.を受け取った場合に相続税を計算する上での留意点
(1)みなし相続財産

 上記2.の死亡保険金を受け取った場合の相続税の計算においては、ご相談の契約形態の場合、死亡保険金受取人であるご相談者は、元金と利息が差し引かれて実際受け取る金額を死亡保険金として取得したとみなされ、みなし相続財産として計算を行います。
 みなし相続財産となることから、死亡保険金の受取人が相続人である場合、非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用を受けることができます。

(2)債務控除

 元金と利息の合計額相当の死亡保険金(プラスの財産)と契約者貸付金に相当する債務(マイナスの財産)が相殺され、いずれもなかったものとされますので、契約者貸付金が債務控除の扱いとなることはありません。

(3)留意点

 死亡保険金として扱われる金額が契約した金額から減ることになりますので、仮に、非課税枠に合わせて設定した契約だった場合、非課税枠に適用できる金額に影響が生じ、結果的に相続税が増える可能性もあります。

 契約者貸付制度は、解約返戻金を担保にしていることから銀行融資のような審査がなく、比較的早く資金を受け取れるため、一時的な資金捻出に活用されます。ただし、上述のとおり、貸付を受けている間に相続が発生すると、死亡保険金として扱われる金額に影響が生じますので、加入目的や影響が生じる金額を十分に留意した上で判断されることをお勧めします。

 

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 今回は相談事例を通じて、遺産分割協議中に相続人の相続が発生した場合の不動産登記の注意点について、ご紹介します。

 父の相続が発生し、相続人である母と私(長男)が遺産分割協議をしていたところ、母にも相続が発生しました。この場合、父の相続に関して、私が母になり代わり遺産分割協議に入ると、結果的に私が自由に遺産分割できてしまいます。不動産登記上、これは法的に問題ありませんか。

 相続が発生し、遺産分割未了の間にその相続人に更に相続が生じてしまうことを、「数次相続」ないし「再転相続」といいます。
 今回の当初相続を、被相続人(父)A、相続人(母)B、相続人(長男)C、としますと、Aの遺産分割未了の間にBに相続も開始した場合、Bの相続人がCだけであれば、結果的にAの遺産もBの遺産も、Cのみが相続することになります。
 Bの相続人としての権利も、同人の相続財産の一種として、Cが承継しますので、何ら問題はなく、自然な帰結と考えられております。

 ただし、Aの遺産分割協議(Aの遺産もCが直接取得したとされるか、亡Bを経由したとされるかの選択)が可能かどうか、という点については、やや注意が必要です。
 従前は、特に遺産中の不動産登記の手続きや登録免許税の関係で、ある種の中間省略登記として、最終の相続人1名による遺産分割協議が登記実務上も認められていました。ところが、数年前に、法務局の見解として

「Aの死亡により,Aの配偶者BとABの子Cが共同相続人となったが,相続登記未了の間にBが死亡した場合において,AからCに相続を原因とする所有権の移転の登記申請するためには,Cを相続人とする遺産分割協議書又はBの特別受益証明書等を提供する必要があり,これらの提供がない場合には,まず,BCへの相続を原因とする所有権の移転の登記を申請した上でBの持分についてCへ相続を原因とする移転の登記をすべきである」(登記研究758号P171,登記研究759号P113)

という取り扱いが示されました。

 要するに、最終相続人1名での遺産分割協議は認めず、亡Bが相続分に応じて相続したものを、Cが相続するという段階的な相続形態としたといえます。
 したがって、Aの遺産分割に不動産がある場合には、登記に関しては自由に分割できるというわけではないことに注意が必要です。

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 路線価方式により土地の評価を行う際、前面道路に路線価が付されていない場合は、どのように評価しますか?

 所有している土地の相続税評価額を計算しようと路線価図を確認したところ、前面道路に路線価が付されていませんでした。このような場合には、どうやって評価すればよいのでしょうか?

 ご相談のようなケースでは、税務署長に路線価(特定路線価)を設定してもらうよう申請することで、評価をすることができます。ただし、このようなケースで必ずしも特定路線価による土地の評価が求められているわけではないため、注意しましょう。

1.特定路線価とは

 路線価地域にある土地の相続税評価額を算出する場合には、その土地が接している道路の路線価を用いて、その土地の形状に応じた各地補正を行い、土地の面積を乗じて評価します。これを路線価方式といいます。
 しかし、ご相談の土地のように、評価対象地の接する道路に路線価が付されていない場合があります。
 このような土地を路線価方式により評価する場合は、税務署(長)へ申請を行い、評価対象地の接する道路に路線価(特定路線価)を設定してもらい、その特定路線価を用いて計算することができます 。

2.特定路線価を設定してもらうには

 特定路線価を設定してもらうための申請要件は、以下のとおりです。

  1. 設定申請の理由が、相続税又は贈与税の申告のためのものである
  2. 評価対象地が路線価地域内にある
  3. 評価対象地が、路線価の付されていない道路にのみ接している
  4. 特定路線価の設定が必要な道路が、建物の建築が可能な建築基準法上の道路である
  5. 特定路線価の設定が必要な道路が、評価対象地利用者以外の者も利用する道路である

 これらすべての条件を満たしている場合には、評価対象地の評定担当税務署(長)へ、「特定路線価設定申出書」及びその資料(公図、地図、写真など)を提出し、特定路線価を設定してもらいます。

3.特定路線価による評価の留意点

 ただし、路線価が付されていない場合に、必ずしも特定路線価の設定が義務付けられているわけではありません。

 たとえば、路線価が付されている道路に面した路線価が付されていない道路等を含めた土地(図の赤枠部分)を一体とみなして評価を行った上で、調整を行うことで評価することが可能な場合もあります。

 条件により異なりますが、一般的には特定路線価により評価するより、このような評価の方が評価額は低くなる傾向にあります。ただし、道路の奥行が極端に長いなどの場合で、このような評価をすることが適切でない場合(周辺と比較して著しく評価額が低くなるような場合)には、税務署から指摘を受けることがあります。

 特定路線価が設定されてしまうと、原則、これを採用して評価しなければなりません。
 特定路線価の設定を申請する前に、評価対象地はどちらで評価すべきなのか、十分な検討を行うことが肝要です。土地の相続税評価についてお悩みの方は、当事務所までご相談ください。

<参考>
 国税庁HP「特定路線価設定申出書

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 私道とは、どういった種類の土地なのでしょうか。

 相続した不動産の中に、全く面識のない第三者と共有になっている「公衆用道路」の土地がありました。よくよく調べると「私道」だとわかったのですが、「私道」はどういった種類の土地なのでしょうか。

 私道とは、公共のもので誰でも利用できる公道とは異なり、個人または民間団体が所有し道路として使用している土地を指します。私道は原則、その所有者の承諾がないと通行できません。

 私道は、公道と比較した場合、下記のような違いや制約あります。

1.所有形態
  • 公道:基本的に地方公共団体の単独所有
  • 私道:単独所有の他、共有のケースもある
2.維持管理費
  • 公道:管理している地方公共団体が負担
  • 私道:私道所有者の負担
    私道を共有している場合、維持管理を行うための工事等に、共有者の同意が必要となり、思うように工事が進まないこともあります。
3.不動産価値

 公道に接している土地と比較して、私道にのみ接している土地は自由に通行ができない土地であるため、不動産の価値が低くなります。

 上記のように、公道に対して私道には様々な制約があります。私道に接する土地を所有しているような場合には、その土地と私道が一体となっていますので、私道はその土地を利用するために必要な道路といえます。(共有ではなく、道路を複数に分筆して、その私道に接している土地の所有者が、それぞれ私道の一部を所有していることもあります。)

 なお、中には私道だけ所有していることもあります。その場合、私道の維持管理の費用負担が生じるだけではなく、私道に接している土地の所有者から様々な承諾を求められることもあります。また、近年では相続登記がなされず、私道の共有者が不明な場合もあり、私道に関する同意の取り付けが困難になっていることが問題視されています。可能であればご自身の代で、共有者へ贈与や譲渡をされたほうがよいでしょう。

 その存在自体を知らなかった土地を相続で取得した場合には、まずはその土地の所在を確認することが肝要です。特にご相談のケースは、土地と一体となった私道なのか、それとも私道のみなのかを調べる必要があります。

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 相続放棄をしても死亡保険金や入院給付金等の受け取りは可能でしょうか。

 先日、母が亡くなりました。
 母は終身保険、医療保険の2契約に加入しており、終身保険の死亡保険金受取人は父、医療保険の給付金受取人は母となっていました。
 相続人は、父と私の2人ですが、父は相続放棄を行う予定です。
 父は、この2契約の死亡保険金、給付金を受け取りたいと考えています。
 父は、相続放棄をしても死亡保険金や、給付金を受け取ることはできますか?

【契約内容】

  • 保険種類:終身保険、保険金額500万円
    契約者(保険料負担者)、被保険者=母
    死亡保険金受取人=父
  • 保険種類:医療保険、入院日額1万円
    契約者(保険料負担者)、被保険者=母
    給付金受取人=母
    ※母が亡くなる前に30日間入院、手術を受けており、請求可能な給付金は40万円

 保険金や給付金は、受取人固有の財産です。ご相談のケースでは、死亡保険金の受取人はお父様であるため、相続放棄を行ったとしても受け取ることはできます。他方、給付金の受取人はお母様であるため相続財産となり、相続放棄を行うことで相続人ではなくなるお父様が受け取ることはできません。

1.相続放棄と相続人

 民法939条では、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人でなかったものとみなす。」と規定しています。そのため、お父様が相続放棄を行うと、初めから相続人ではなかったものとみなされ、相続人はご相談者1名となります。

2.死亡保険金受け取りについて

 契約者と被保険者が同じ人の場合、死亡保険金は死亡した人の財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となります。そのため、たとえ相続放棄をしても、死亡保険金を受け取ることができます。ご相談のケースでは、お父様は相続放棄をしても、死亡保険金500万円を受け取ることができます。
 死亡保険金は、税法上「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。
 ただしお父様は相続放棄をしているため、死亡保険金の非課税金額(※)の適用を受けることはできません。

※死亡保険金の非課税金額とは

  • 相続税の計算において、死亡保険金は、「500万円×法定相続人の数」の額が非課税となります。
  • この非課税は、相続人が死亡保険金を受け取る場合に限り適用することができます。
3.給付金の受け取りについて

 ご相談のケースでは、給付金の受取人は被保険者であるお母様となっていますが、受け取る前に亡くなっているため、この給付金は相続財産として、他の相続財産とともに相続人が取得することになります。相続放棄した場合はこの相続人には該当しないため、お父様は入院給付金・手術給付金を受け取ることはできず、相続人であるご相談者が受け取ることになります。

 相続を放棄した場合でも保険金等が受け取れる場合とそうでない場合とがあります。少しでも疑問に思われたら、当事務所へご相談ください。

 

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 今回は相談事例を通じて、将来の認知症リスクを考えた収益不動産の管理方法について、ご紹介します。

 私は、収益不動産を所有しています。収益不動産の管理は私が行っていますが、私が認知症になってしまった場合、私名義のままだと私の家族でも収益不動産の管理をすることができないと聞き、心配しています。歳をとるにつれて管理が大変になってきたため、息子に管理を任せたいですが、家賃収入はこれからも私が受け取りたいと思っているため、何もできずにいます。何かよい方法はないでしょうか。

 収益不動産の名義が相談者様名義のままですと、相談者様が認知症になってしまった場合、不動産の管理・処分等ができなくなってしまいます。たとえ家族であっても相談者様名義の不動産を勝手に管理・処分することはできません。
 不動産の管理を息子様にお任せしたいが、家賃収入は相談者様が貰いたいとお考えであれば、「信託」の活用を一度ご検討下さい。

 信託とは、「財産を持っている人(委託者)」が、「信頼して預けられる人(受託者)」に対して財産を預け、受託者は、委託者が決めた目的に従って「委託者が指定した他人(受益者)」の利益のために、資産の管理・運用・処分等をする制度をいいます。委託者は、委託者自身を受益者に指定することもできます。

 信託を利用し、相談者様を委託者かつ受益者、息子様を受託者とすることで、不動産の管理等を息子様に任せながら相談者様は家賃収入を受け取ることができるようになります。

 なお、信託については信託契約を締結する等、信託法で様々な要件や規制がございます。また税法上の規制もございますので、ご相談のある方は、まず当事務所へご相談ください。

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 廃業後空室のままの修繕が必要な自社ビルを、相続財産として子供に託すのは忍びないのですが、どうしたらよいでしょうか。

 少し前に会社を廃業し、会社に賃貸していた私所有の築40年のビルが未使用となっています。賃貸を検討していますが、修繕が必要となるため迷っています。このままの状態で相続になったときに、子供たちに迷惑がかかるため何とかしたいと考えていますが、どうしたらよいでしょうか。なお、借入金はありません。

 空きビルの活用法としては、賃貸や売却などが考えられますが、将来の相続を見据えるのであれば、ご自身のみで判断するのではなく、お子様等に相談しながら検討されることをおすすめします。

1.元自社ビルを賃貸する場合
(1)借主が見つかりにくい

 自社で使用していたビルは、フロア単位での賃貸が難しく、一棟での賃貸となるケースが多いです。一棟で賃貸する場合、管理面の負担は少なくなりますが、需要が限定され、借主がなかなか見つからない恐れがあります。

 更に、オフィスは、マンション等の住居よりもエリアが限定されるため、立地によっては、フロア単位での賃貸が可能であっても借主がなかなか見つからない場合があります。

(2)修繕費用は想定賃料の1年分以上

 その一方で、事前に必要となる修繕の費用は、少なくても想定賃料の1年分以上と推定されますので、修繕実施の有無及びその実施時期については、慎重に検討する必要があります。

 しかし、検討に時間をかけ過ぎますとその間の維持管理費(固定資産税・火災保険料 等)の負担が重くのしかかってきます。

2.元自社ビルを相続した場合

 以下の前提条件で、①ビルを賃貸している場合、②ビル解体後更地のままの場合、③空きビルのままの場合、それぞれの相続税評価額を算定してみましょう。

(前提条件)
土地 路線価:200千円/㎡ 面積:500㎡ 借地権割合:50%
建物 固定資産税評価額 50,000千円 借家権割合:30% 賃貸割合:100%
①ビルを賃貸している場合 ②ビル解体後更地のままの場合 ③空きビルのままの場合
土地 200千円×500㎡=100,000千円
100,000千円-100,000千円×50%×30%×100%=85,000千円
200千円×500㎡=100,000千円 200千円×500㎡=100,000千円
建物 50,000千円-50,000千円×30%×100%=35,000千円 50,000千円
合計 85,000千円+35,000千円=120,000千円 100,000千円 100,000千円+50,000千円=150,000千円

 上記のとおり、相続税評価額は、最も収支が悪い(マイナス)空きビルが最も高額となります。

3.空きビル対策

 上記2.のとおり、空きビルの状態は1日も早く解消する必要があります。その対策として、以下をおすすめします。

  • ①不動産仲介業者等に相談し、所有ビルの賃貸需要を把握
  • ②賃貸需要が見込めない場合は、現状での売却又はビル解体後の活用・売却を検討
  • ③賃貸需要が見込める場合は、期間を設けて賃貸募集を開始
    • 旺盛な需要が見込める場合は、賃貸募集前の修繕実施も検討
    • 安価な賃料での賃貸は、所有ビルの価値減少に繋がるため、適正賃料での賃貸を心掛ける
  • ④期間内に借主が見つからない場合は、②を検討

 なお、将来の相続を見据えた所有ビルの活用については、ご自身のみの判断で決定するのではなく、お子様等に相談されながら検討されることをおすすめします。

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 妹へ財産分与するために生命保険を利用する際のポイントを教えてください。

 障害者である妹の生活費の一部を私が援助しています。私が亡くなった後のことを考え、確実に私の財産の一部を妹に分与できるよう、保険会社に相談したところ、以下の2通りのプランを提示されました。税金の取扱いや検討する際のポイントを教えてください。なお、私の相続人は、配偶者と長女です。

【提案内容】保険種類:ABともに終身保険、保険金:2,000万円

プランA プランB
契約者 相談者
(保険料相当額を相談者が贈与)
被保険者 相談者 相談者
保険金受取人

 将来妹さんが受け取る保険金の税務上の取扱いは、プランAは相続税、プランBは所得税の課税対象となります。いずれがよいのかは、税金以外の相談者ご自身の財産額やご家族との関係等も考慮に入れるとよいでしょう。

 ご相談のケースでのプランA及びBについて、保険金の税務上の取扱いと留意点をまとめたものが、下表となります。

プランA プランB
保険金の税務上の取扱い(課税対象となる税目) 相続税(みなし相続財産) 所得税
留意点
  • ご相談者の相続財産によっては相続税の申告が必要となり、妹さんに相続税がかかることがある
  • 相続税がかかる場合には、妹さんは、死亡保険金の非課税制度は適用できず(※1)、2割加算の対象(※2)
  • 妹さんに相続財産の内容を知られてしまう
  • 妹さんは相続人との接触が必要
  • 相続税の対象とはならないため、ご相談者の相続財産から切り離すことが可能
(※1)死亡保険金の非課税(500万円×法定相続人の数)制度は、受取人が相続人である場合に適用できる。
(※2)被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含む。)及び配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算される。

 プランA・Bいずれも確実に妹さんが保険金を受け取れますが、税務上の取扱いや特徴が異なります。どちらが適しているかは、相談者ご自身の財産の保有状況が重要なポイントとなります。
 一般的に税負担の側面からみると、ご相談者の保有財産が多く相続税の負担が大きいほどBがベター、逆にご相談者の保有財産が少なく相続税の負担に不安がない場合はAがベターと考えられます。
 しかし、税負担以外の側面からみると、Aでは上述のとおり、相続手続きの際、他の財産も妹さんに知られるなど、相続人であるご家族との関係において何らかの影響が生じる可能性があります。一方、Bは妹さんが自身の所得として申告し、ご相談者の相続手続きとは切り離されるため、財産状況を知られるなどの心配はなく、相続人との接触もありません。

 想定される税金の多寡だけでなく、ご相談者の財産の状況、ご家族との関係も考慮して検討いただくことをおすすめします。

 

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 今回は相談事例を通じて、不動産の共有者が死亡した後の持分の帰属先について、ご紹介します。

 私が所有している土地の共有者が亡くなりました。その共有者には相続人がいません。相続人がいない場合、財産は国庫へ帰属すると聞いたのですが、この共有者の持分を取得することは可能でしょうか。

 あなたは民法255条により、共有者の持分を取得できる場合があります。

 相続人がおらず、財産が相続債権者や受遺者にも帰属せず、特別縁故者がいない場合には、相続財産は国庫に帰属する(民法959条)とされています。
 民法255条との関係について、判例では、「共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は、民法958条の3に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、同法255条により他の共有者に帰属する。(最二小判平1.11.24)」と判示されています。
 したがって、状況を確認して、あなたが共有者の持分を取得できる可能性があるなら、利害関係者として家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立てをなさってみてはいかがでしょうか。

[補足]

・相続債権者及び受遺者に対する弁済(民法957条)
 相続人のあることが明らかにならなかったときは、家庭裁判所に選任された「相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。」

・特別縁故者に対する相続財産の分与(民法958条の3)
 相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対しての清算手続が終了した場合において、「相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」

・持分の放棄及び共有者の死亡(民法255条)
 「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」

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 農地の相続税評価について、教えてください。

 先祖代々農家をしており、農地を多数所有しております。固定資産税の支払額は大きくないので、評価も低いだろうと思っていましたが、近隣では多額の相続税を支払ったという話も聞きます。相続税の計算の際、農地はどのように評価するのでしょうか?

 農地は、政策上、固定資産税額などは比較的低く抑えられていますが、評価対象の農地の所在している地域などによって、予想以上に相続税評価額が高額になる場合があります。

 農地は、農地法などの法律により宅地への転用が制限されています。
 また、都市計画などにより地価事情も異なるため、相続税の計算上、農地の評価をするにあたり、一定の考慮がなされています。

1.4つの農地

 相続税を計算する場合の農地の評価は、まず、その立地等により分類された以下の4つの農地のどれに該当するのか判断します。

農地の種類 農地の説明
純農地 宅地の影響を受けない農地
中間農地 純農地よりも農業政策上の規制が少なく、売買の可能性が高い農地
市街地周辺農地 市街地に近接する宅地化傾向の強い農地
市街地農地 市街化区域にある農地

 実際には、毎年国税庁から公表されている「路線価図・評価倍率表」の“評価倍率表(一般の土地等用)”に、地域ごとに定められた農地の種類が記載されています。ここを見て、上記のうちいずれの農地に該当するのか判断します。

2.評価方法

 いずれの農地に該当するか判断した後は、その農地ごとに定められた次の評価方法により、評価します。

【評価方法】
農地の種類 評価方法
純農地
中間農地

固定資産税評価額 × 倍率(※)

(※)倍率は、国税庁が定める倍率表でその土地が所在する区域の評価倍率を用います。具体的には、毎年国税庁から公表されている、「路線価図・評価倍率表」の“評価倍率表(一般の土地等用)”に、地域ごとに定められた農地の種類とともに、純農地あるいは中間農地であれば倍率が併記されています。たとえば純農地で倍率が24であれば、“純24”と記載されています。この併記された数値が固定資産税評価額に乗ずる倍率となります。

市街地周辺農地

その農地が市街地農地であるとした場合の価額 × 80%

市街地農地

(その農地が宅地であるとした場合の価額(※1)/㎡ - 造成費の金額(※2)/㎡)×地積

(※1)その農地が宅地であるとした場合の価額は、路線価方式又は倍率方式により計算します。

(※2)造成費の金額は、その農地を宅地化するために要する費用の額で、整地費、土盛り又は土留めに要する費用などの額をいい、地域ごとに国税庁が定めています。具体的には、毎年国税庁から公表されている、「路線価図・評価倍率表」に、地域ごとに定められた“宅地造成費の金額表”に記載がされていますので、こちらを用いることとなります。

 相続税の計算における土地の評価は、土地によって考慮すべき点や計算方法等が異なります。土地を含めた相続税における財産評価についてのご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
 財産評価基本通達34、36~40 国税庁HPタックスアンサー「No.4623 農地の評価」他

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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