お知らせ

 遺言で生命保険金の受取人を変更することは可能でしょうか。

 下記の生命保険について、仮に妻が先に亡くなった場合には、世話になっている姪に受け取って欲しいと思っています。
 妻が先に亡くなった時点で、私が死亡保険金の受取人を変更できればよいのですが、そうでない状況を想定して、遺言で受取人を姪に変更しておきたいと思っています。これは、可能でしょうか?【生命保険の契約内容】

  • 契約者(保険料負担者):私
  • 被保険者:私
  • 死亡保険金受取人:妻

 遺言で生命保険金の受取人を変更することは可能ですが、諸条件を満たしている必要があります。

1.保険法改正により可能となった遺言による保険金受取人の変更

 2010年4月1日に施行された「保険法」で、遺言による保険金受取人の変更が可能となりました。

 原則、保険法施行後の契約が対象となりますが、保険会社によってその取扱いは異なります。2.留意点

 遺言によって保険金受取人を変更するときの、主な留意点は以下の通りです。(1)変更の可否を確認

 多くの保険会社は「法律上有効な遺言であれば、受取人に指定できる方の範囲に定めはない」としているようですが、変更可能な受取人の範囲を約款で決めている保険会社もあります。遺言書を作成する前に、必ず受取人として指定できるかどうか、確認するようにしましょう。(2)遺言書の記載内容

 遺言によって保険金受取人を変更するときは、どの保険契約か特定できるような情報を遺言書に記載します。

 この場合の「情報」とは、保険会社、証券番号、契約者、被保険者、保険種類、契約日などが該当しますが、特定できれば複数の情報の記載は必要ありません。

遺言書の例文

第〇条 私は、私が契約者となっている次の生命保険契約における死亡保険金受取人として、姪◇◇を指定する。(保険契約の表示)
①〇〇生命:証券番号00000000000
②■■生命:証券番号11111111111
③▼▼生命:証券番号22222222222(3)遺言による保険金受取人の変更手続き

 遺言による保険金受取人の変更手続きを行うには、保険契約者の相続人が遺言による保険金受取人変更について保険会社に申し出なければなりません。その際に、一定の書類の提出が必要な場合があります。

 必要となる主な書類は以下のとおりですが、保険会社によって異なるため、予め約款などで確認したり、保険会社へ問い合わせをしたりするとよいでしょう。

  • 申し出をするための書類
  • 遺言書の写し
  • 検認済証明書の写し(遺言が公正証書遺言でない場合)
  • 保険契約者の戸籍謄本
  • 相続人もしくは遺言執行人の印鑑証明書

 これらの他にも、被保険者の同意が必要であること、保険会社の取扱要件を満たすことや、遺言書自体が法律上有効でなければならないなど、遺言による保険金受取人の変更には留意点があります。

 相続に関するご相談は、当事務所にお気軽にお問い合わせください。
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 今回は相談事例を通じて、遺産分割時に用いる不動産の評価額についてご紹介します。

 亡夫の財産について遺産分割をしたいと考えています。私たちには子がおらず、夫の両親もすでに亡くなっているため、相続人は私と夫の姉の2人です。主な財産は自宅不動産と預貯金で、不動産は現在居住している私が相続したいと考えていますが、遺産分割の際、不動産はどのような評価額を基に話し合いをすればよいでしょうか。

 不動産には固定資産税評価額、相続税評価額、時価など様々な価格の捉え方がありますが、遺産分割の際には、基本的に相続人全員の合意があればどのような評価額を基にしても問題ありません。
 各相続人が取得する遺産の割合についても、法定相続分は定められていますが(民法900条)、相続人全員の合意があれば法定相続分に関わらず、分割の内容や取得割合を自由に定めることができます(民法907条)。

 価格の基準としては、以下の評価額があります。

(1)固定資産税評価額

 公示地価の約7割を目安に設定されているといわれています。
 不動産ごとに価格が決定されており、相続税評価のように単価を調べる手間や計算が不要なため最も扱いやすいものの、実際の取引価格よりも低いことが多いため、不動産を相続しない相続人の合意が得られない可能性があります。

(2)相続税評価額(路線価、倍率評価)

 公示地価の約8割を目安に設定されているといわれています。路線価は国税庁が毎年発表しており、インターネットで調べることができるため、不動産鑑定評価とは異なり、費用をかけずに参照することができます。こちらも実際の取引価格よりは低い場合が多いため、合意を得られない可能性があります。

(3)不動産仲介業者による査定

 不動産仲介業者等が算出する売却見込み額です。査定対象の物件と条件が似た直近の近隣の取引事例を参考に査定する方法が多く採用されています。依頼先によって金額に多少の違いが出ることがあります。

(4)不動産鑑定評価

 不動産鑑定士が不動産鑑定評価に関する法律に基づいて土地や建物などの適正な地価、価格などを判断したものです。最も信頼性が高く、遺産分割調停・審判においては重宝されています。
 ただし、不動産鑑定士による評価は一般的に費用が高額になることが多く、相続人が費用負担を望んでいない場合は、調停・審判においてもこのほかの評価の使用が認められています。

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弊事務所の年末年始休業日をご案内します。
ご不便をおかけしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■ 年末年始休業日
 2021年12月29日(水)~2022年1月4日(火)

 義父からのマイホーム資金援助について、贈与税の非課税の特例は適用できますか?

 マイホームを取得するために親族から受けた資金援助については、一定の金額まで贈与税がかからない特例があると聞いています。
 私は年内にマイホームの取得を予定しており、その取得資金の一部について義父から援助を受ける予定です。この場合、この特例は使えますか?
 なお、義父と養子縁組はしていません。

 ご相談のケースにおける義父からの贈与は、マイホームを取得するための資金援助に係る贈与税の特例、「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」は適用できません。

1.住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例

 マイホームを取得するための資金援助に係る贈与税の特例(住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例、以下、特例)は、様々な要件があります。そのうちの1つに贈与者と受贈者との間柄があります。

贈与者と受贈者との間柄(要件):

受贈者は、贈与を受けたときに贈与者の直系卑属であること

→言い換えると、
「贈与者は、贈与をしたときに受贈者の直系尊属であること」2.直系尊属、直系卑属

 直系尊属(卑属)の“直系”とは、自分を中心に縦の関係にある者をいいます。

(1)直系尊属

 “尊属”は、自分を中心に上の者、つまり前の世代を指します。
 よって直系尊属とは、自分からみて父・母・祖父・祖母などを指します。

(2)直系卑属

 “卑属”は、自分を中心に下の者、つまり次の世代を指します。
 よって直系卑属とは、自分からみて子・孫などを指します。3.義父は直系尊属?

 ご相談のケースは、“義父”からの贈与でした。

 “義父”は、受贈者と養子縁組をしている場合を除き、受贈者からみて直系尊属には該当しません。
 そのため特例の要件に該当せず、適用を受けることはできないことになります。

 この“義父”との間の贈与については、暦年課税による贈与税の計算の際の贈与税率にも影響があります。
 暦年課税による贈与税の計算の際の贈与税率は、『一般税率』と『特例税率』があり、特例税率の方が『一般税率』に比べて税率が低い傾向にあるのが特徴ですが、“義父”との間の贈与は『一般税率』を適用することとなります。

 なお、この特例を適用するための要件は、上記以外にもたくさんあります。マイホームを取得するための資金贈与をお考えの場合には、まず当事務所へご相談ください。

<参考文献>
 国税庁HP「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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 令和3年の「都道府県地価調査」の結果は、令和3年分の土地の相続税評価に影響を与えるのでしょうか?

 令和3年の「都道府県地価調査」の結果が発表されたというニュースをみました。今回の結果の特徴について教えてください。また、今回の結果は令和3年分の土地の相続税等の評価に何らかの影響を与えるのでしょうか?

 今回の結果をみる限り、少なくとも令和3年1月から6月までの期間について、国税庁が大幅な地価下落といった状況として減額補正を認める可能性は、低いのではないかと考えられます。また、今後もコロナ禍という経済的要因による減額補正が行われる可能性も低いといえるのではないでしょうか。

1.都道府県地価調査の結果

 令和3年都道府県地価調査の結果による地価の動きをみてみましょう。(1) 全国

 全国をみると、全用途平均は2年連続の下落となりましたが、下落幅は縮小しました。(2) 三大都市圏

 東京、名古屋、大阪の三大都市圏の全用途平均は、横ばいから上昇に転じました。
 住宅地は下落から横ばいに転じました。商業地は9年連続の上昇となったものの上昇幅は縮小しました。工業地は8年連続の上昇で、上昇幅が拡大しました。(3) 地方圏

 全用途平均・住宅地は下落が継続しているものの下落幅が縮小しました。商業地は2年連続の下落となり下落率が拡大、工業地は下落から上昇に転じました。
 地方圏のうち、地方四市といわれる札幌市、仙台市、広島市、福岡市では、いずれの用途でも上昇を継続していますが、全用途平均・商業地は上昇率が縮小し、住宅地・工業地は上昇率が拡大しました。
 地方四市を除くその他の地域においては、全用途平均・住宅地は下落が継続しているものの下落率が縮小、商業地は下落が継続しているものの下落率は同じ、工業地は下落から上昇に転じました。2.相続税路線価との関係

 次に、地価調査価格と相続税等の評価に用いられる相続税路線価との関係について、みてみましょう。(1) 相続税路線価

 相続税路線価は、地価公示と同一の毎年1月1日が評価時点です。他方、地価調査価格の評価時点は毎年7月1日であり、両者には半年の時間差があります。
 相続税路線価は、時価とされる地価公示価格の水準(=地価調査価格の水準)を100%とした場合、概ね80%程度を目途に評価されています。この差(20%)は、路線価の評価時点以降、大幅な地価下落が起こったような場合に、相続税評価額が時価を上回らないための余裕部分と捉えることができます。(2) 新型コロナウイルス感染症の影響

 今回の地価調査の結果をみる限り、いずれも年間の下落率が20%以内に収まっていることから、まず令和3年1月から6月までの期間について、国税庁が大幅な地価下落といった状況を背景に、減額補正が行われる可能性は低いのではないかと考えられます。
 また、今後についても、ワクチン接種率の向上など様々な要因を踏まえたときに、少なくともコロナ禍という経済的要因によって地価が極端に下落することはなく、昨年のように一部地域とはいえ、経済変動による路線価の減額補正が行われる可能性は低いといえるのではないでしょうか。

 土地の相続税評価に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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 生命保険の内容を確認する際のポイントを教えてください。

 父の体調が悪化し、家族で今後のことを話し合うようになりました。その流れで父の財産についても整理しています。生命保険関係の書類が様々あり、どれを見ればよいのかわかりません。内容を確認するポイントを教えてください。

 生命保険の内容を確認するための資料として、契約する際に受領する「保険証券」、契約後に保険会社から年1回届く「ご契約内容のお知らせ」などがあります。これらをもとに生命保険の内容を確認することになりますが、これらに記載されている用語の意味を理解しておかれるとよいでしょう。

1.生命保険の契約内容を確認する際の資料

 生命保険の契約内容は、基本的に「保険証券」に記載されています。この「保険証券」は、契約が成立した後、保険会社から契約者に送付されます。この「保険証券」以外にも、契約後、保険会社から年1回届く「ご契約内容のお知らせ」でも、おおよその内容を確認することができます。

 最近では、契約の途中で解約や内容を変更した際、保険証券を提出せずに手続きが完了することもあり、手元の保険証券だけでは最新の内容が確認できない場合もありますので、「ご契約内容のお知らせ」と併せて確認しておくとよいでしょう。2.主な用語とその意味

 上記1.の書面から内容を理解するには、書かれている用語の意味を抑えておく必要があります。以下、主な用語とその意味を一覧にしました。参考になさってください。(1)人に関すること

用語意味
契約者契約内容の変更などの権利と保険料支払いの義務を負う人
※実際の保険料負担者とは一致しないこともある
被保険者保険の対象となっている人
受取人契約者が指定した保険金、給付金、年金などを受け取る人

(2)保険の種類に関すること

用語意味
主契約の保険種類保険契約のベース(本体)となる部分
例)定期保険、養老保険、個人年金保険、医療保険、こども保険など
特約の保険種類主契約に加えて保障を充足させるために付加した契約
例)定期保険特約、災害割増特約、傷害特約、入院特約、通院特約、がん診断給付特約など

(3)金額や期間に関すること

用語意味
保険金被保険者が契約で定められた支払事由(死亡・満期など)に該当したときに受け取れるお金
例)死亡保険金、特定疾病保険金、満期保険金など
給付金被保険者の入院などで受け取れるお金
例)入院給付金、手術給付金など
保険料、保険料払込期間契約者が契約を継続するために保険会社に払い込むお金、払い込む期間
保険料の払込方法保険料を払い込む回数と払い込む経路
例)月払、半年払、年払、一時払、前納、預金口座振替、クレジットカード、勤務先の団体扱い
保険期間、保険料払込期間保障が続く期間(保障が終了する日)、保険料を払い込む期間

 複雑な保険契約も多く、内容によって税金の扱いも異なります。相続に関するご相談は、当事務所にお気軽にお問合せください。
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 今回は相談事例を通じて、相続開始後に行う一般的な手続きをご紹介します。

 先日、主人が亡くなりました。葬儀は終えましたが、他にどのような手続きが必要になるのでしょうか。私たちは年金生活をしており、子は2人いますが独立しています。住まいは持ち家で、その他若干の預金があります。

 一般的に必要となる手続きを【詳細解説】にまとめました。そちらをご参照ください。

① 住所地の市区町村役場での手続き

 死亡届の提出(死亡の事実を知った日から7日以内/戸籍法第86条1項)、健康保険被保険者証・障がい者手帳・印鑑登録手帳等の返納、葬祭費の請求、健康保険料や介護保険料等の精算を行います(但し、その場で現金を収めたり、受け取ったりすることはありません)。

② 年金事務所での手続き

 受給していた年金の種類によっても異なりますが、基本的にはご主人が受給していた年金を止める手続きと、未支給の年金をもらう手続きなどを行います。あなたが遺族年金をもらう手続きも行った方が良い場合があるため、併せて確認するとよいでしょう。

③ 公共料金の引き落とし口座の変更

 ご主人の銀行口座は今後相続手続きを行って解約していく必要があるため、現在ご主人名義の銀行口座から公共料金(電話、水道、電気、ガスなど)を引き落としている場合は、口座を変更する必要があります。
 変更には数ヶ月かかる場合もありますが、その前に口座が凍結されてしまった場合は、ご自宅に払込用紙が届くと思いますので、そちらで支払いが可能です。

④ 生命保険会社への保険金請求

 ご主人や受取人の方の戸籍・住民票などの原本の提出が必要な場合があります。請求する生命保険会社に確認の上、役所手続きの際に戸籍を必要通数分取得されることをお勧めします。

 上記の他、⑤火災保険・地震保険の名義変更、⑥自動車の名義変更、⑦自動車保険の名義変更、⑧携帯電話の解約、⑨クレジットカードの解約、⑩土地建物の名義変更、⑪農地法・森林法の届出、⑫預貯金の解約又は名義変更、⑬準確定申告、⑭相続税申告 などが必要な場合もあります。

 上記は一般的に必要な手続きであり、ご家族の状況・財産の内容・遺言の有無などによって、必要な手続きは異なります。「相続手続き」というと、遺産分割などを思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、遺産分割を行う前の事務手続きもさまざまです。ご不安があれば、一度、当事務所にご相談ください。

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 配偶者居住権等が設定された居住用の土地建物を相続した場合、相続税評価額はどう計算するのでしょうか?

 30年前、父が建売住宅を購入して、そこに家族で住んでいました。弟はすでに独立し、長男である私は結婚後に、この家をリフォームして現在二世帯で暮らしています。
 先月、父が死亡し、これから遺産分割協議をするのですが、母が死亡した後の相続を考えると、この家は母が存命の間に私が相続しておきたいと考えています。とはいえ、母としても何かあったときにこの家から追い出されるのではないかとの懸念もあるようなので、配偶者居住権を設定しておきつつ、建物と土地は私が相続することでどうか、と提案したところ、母から了承を得ました。弟には弟の相続分も考えて伝えたところ、母がいる手前か、概ね了承してくれています。
 この相続によって相続税がいくらかかるのか試算したいのですが、仮に私がこの土地建物を相続した場合、相続税評価額はどうやって計算するのでしょうか?

 まず、建物部分については、建物全体の相続税評価額から配偶者居住権の価額を控除した金額が相続税評価額となります。土地部分も同じく、土地全体の相続税評価額から敷地利用権の価額を控除した金額が相続税評価額となります。なお、土地部分については一定の要件を満たした場合、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

1.配偶者居住権・敷地利用権とは

 配偶者居住権とは、被相続人の所有する建物に相続開始時点で配偶者が居住していた場合に、相続後も配偶者がそのままその建物に無償で住み続けることができる権利です。
 この配偶者居住権を配偶者が相続等により取得した場合、その配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利も付随して、配偶者が相続等により取得したものと考えられています。この配偶者居住権に基づき使用する敷地の権利を、敷地利用権といいます。2.配偶者居住権等が設定された土地建物を相続した場合

 ご相談のケースで、お父様(以下、被相続人)が所有していた居住用の土地建物について、配偶者居住権・敷地利用権(以下、配偶者居住権等)を設定した上で相続した場合の相続税評価額は、それぞれ次の算式により計算します。建物の相続税評価額:建物全体の相続税評価額 ー 配偶者居住権の価額土地の相続税評価額:土地全体の相続税評価額 ー 敷地利用権の価額

 いずれも、まずは配偶者居住権等の価額を計算した上で控除することとなる点にご留意ください。

 なお、土地については、小規模宅地等の特例の要件を満たした場合には、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。その点もあわせてご注意ください。

 配偶者居住権等の評価その他相続に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問合せください。

<参考>
 国税庁「「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」について(情報)」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/200701/01.htmなど
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 相続した建物が未登記のようです。そのままにしておくことで問題はありますか?

 相続した実家の建物が登記されていないことが分かりました。建物が登記されていない理由は何が考えられるのでしょうか。また、そのまま登記しない場合、何か問題はありますか?

 建物の未登記の要因としては、“登記は任意である”と誤った認識をお持ちであった、という可能性が考えられます。また、未登記の状態であると、法律上の問題の他、第三者への対抗などでデメリットが生じると考えます。

1.建物の未登記

 建物を建築等した場合には、主に以下①→②の順に登記を行います。①建物表題登記:建物の構造・床面積等の物理的状況を明らかにする登記②所有権保存登記:所有権の登記のない不動産について、最初に行う所有権の登記

 ①は、不動産登記法により、その建物の所有権を取得してから1ヶ月以内に登記を行わなければならないと定められており、登記を行う必要があります。
 他方、②は、①のように義務ではなく任意となりますが、住宅ローンを利用する場合は、金融機関が当該建物に抵当権を設定するため、②の登記が必須となります。

 したがって、建物が未登記の理由の一つとしては、住宅ローンを利用せず建物を建築したため、②の登記が任意となり、①の登記も行う必要がないといった誤った認識のもと、未登記の状態になっていることが考えられます。実際、未登記建物は数多く存在します。

 なお、登記されていない建物は、「未登記建物」といわれています。2.未登記建物であることでの問題点(1)法律上の問題

 未登記建物であることの問題については、法律上の義務である上記1.①の建物表題登記がなされていない、厳密にいえば罰則が科せられる可能性がある状態であることとなります。
 また、相続による所有権の移転登記や住所変更登記に関しては、法律で義務付けられる改正がなされています。その点もあわせてご注意ください。(2)第三者への対抗

 未登記建物であると、その建物の所有について第三者へ主張することが困難です。(3)税務上の問題

 建物が未登記であるということは、その建物が建っている敷地部分に建物がない状態で固定資産税が課税されている可能性が考えられます。
 通常、土地の上に住宅が建っている場合の当該土地に係る固定資産税は、更地である状態よりも軽減措置が設けられています。3.未登記建物の登記手続き

 相続した未登記建物を第三者へ売却する際、上記1.①及び②の登記が必須となります。将来の売却を予定されている場合は、予め登記しておくとよいでしょう。なお、上記1.①には、登録免許税は課税されませんが、上記1.②の登記には課税(固定資産税評価額の4%)されますので、ご注意ください。

 また、この登記手続きは、通常、土地家屋調査士もしくは司法書士(以下、専門家)に依頼しますが、ご自身で行うことも可能です。なお、専門家に依頼される場合は、建築当時等の設計図面があれば、費用を軽減できる可能性がありますので、設計図面の有無について、事前に確認されるとよいでしょう。

 建物全体が未登記であることの他、増築や改築部分が登記されていないこともあります。建物が登記されている場合でも、建築当時の設計図面があれば、現状と比較し、増築や改築による未登記部分が生じていないか確認されるとよいでしょう。

 未登記建物を相続された場合は、専門家に相談の上、適切に対処されることをお勧めします。
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 姪を生命保険の死亡保険金受取人としたいのですが、可能でしょうか。何か問題があれば教えてください

 近所に住んでいる姪(以下、Aさん)に、日頃から私の生活の介助をしてもらっています。私が死んだ後にお礼の意味も込めて、私が自らを被保険者として掛けている生命保険の受取人になってもらおうと思うのですが、可能でしょうか。可能であれば、この生命保険の受取人を子から変更をしようと思います。何か問題があれば教えてください。【生命保険の契約内容】

  • 契約者(保険料負担者):私
  • 被保険者:私
  • 死亡保険金受取人:子

 ご相談者の“姪”であるAさんを、受取人とすることは可能ですので変更できるかと思いますが、念のため契約されている生命保険会社へ事前に問い合わせていただくとよいでしょう。なお、ご相談者の相続時には、この生命保険金は相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。その際に、仮にお子さん等が存命であれば、Aさんはご相談者の養子でなければ相続人にはなれませんので、この生命保険金に係る非課税の適用を受けることができません。また、受取人変更に伴うトラブルにもご注意ください。

1.保険金の受取人

 保険金の受取人となることができるのは、保険会社によって異なりますが、「被保険者の戸籍上の配偶者および二親等内の血族」の範囲内と定められていることが一般的です。具体的には、被保険者からみて、祖父母、父母、子、兄弟姉妹、孫が該当します。ご相談のケースでは、受取人としたいAさんが被保険者であるご相談者からみて姪の立場であることから、受取人となることは可能だと考えます。

 この受取人の指定は、加入時に契約者が行いますが、契約後も被保険者の同意を得て途中で変更することが可能です。

 したがって、ご相談のケースでは受取人の変更も可能かと思われますが、念のため、契約された保険会社へ事前にお問合わせいただくとよいでしょう。

 なお、保険会社によっては、個別事情の詳細を報告することで、内縁関係にある者、婚約者、共同経営者等の指定を認める場合もあります。上述の範囲外の人を指定したい場合は、個別に保険会社や取扱代理店などに確認が必要です。2.税務上の取扱い

 受取人を指定・変更する際は、受取人を誰にするかで税務上の取扱いが変わることもあるため、注意が必要です。

 例えば、契約者=保険料負担者=被保険者=被相続人の契約において、死亡保険金受取人が相続人の場合、受け取った死亡保険金は、相続税の計算上、死亡保険金の非課税(500万円×法定相続人の数)を適用できます。他方、受取人が相続人以外の場合は、死亡保険金の非課税を適用することができません。

 ご相談のケースでは、お子さんがいらっしゃるようですので、仮にお子さんが存命である中で相続が発生した場合には、Aさんがご相談者の養子にならなければ相続人となることはできません。仮にAさんが相続人とならなければ、上記の非課税は適用できないことにご注意ください。

 なお、受取人を変更されるのであれば、変更後の受取人となるAさんへの事前説明や、今回の生命保険についてお子さんが受取人だと知っている場合には、お子さんへの説明も同時にご検討いただくとよいでしょう。特に、死亡保険金は相続税の課税財産となるため、相続税を計算する上で加算しなければならず、他の相続人にも当然知られます。そうなることによって、親族間でのトラブルに発展する可能性も考えられるため、受取人の変更は慎重に検討されることをお勧めします。

 相続に関するご相談は、当事務所にお気軽にお問合せください。※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。

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