平成31年地価公示では、全用途平均が4年連続の上昇となり、地価の回復傾向が全国的に広がっています。
先日、平成31年の「地価公示価格」が発表されたというニュースを見ました。今回の地価の動きについて教えてください。また、地価公示価格と土地の相続税評価額との関係はどのようになっているのでしょうか?
平成31年の地価公示では、全国平均で全用途平均が4年連続の上昇となり、上昇幅も3年連続で拡大しています。地価公示価格の約8割が相続税評価額を計算する上での“相続税路線価”といわれていますので、今回の地価公示の影響を受け、地価が大幅に上昇している地点の付近については相続税路線価も大幅に上昇し、税額にも影響を与える可能性があります。
地価公示という制度は、地価公示法という法律に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格(土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格)を3月に公示しているものです。
地価公示の主な役割としては、以下のようなものがあります。
- 一般の土地の取引に対して指標を与えること
- 不動産鑑定の規準となること
- 公共事業用地の取得価格算定の規準となること
- 土地の相続税評価および固定資産税評価についての基準となること
- 国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること 等
なお、評価基準日から公示日までの間に、リーマンショックのような大きな経済情勢の変化や、東日本大震災のような天変地異級の大災害が発生したとしても、これらの事象は価格に反映されないことに留意が必要です。
それでは、平成31年の地価公示による地価の動きを確認しましょう。
全国平均では、全用途平均が4年連続の上昇となり、上昇幅も3年連続で拡大しています。用途別にみると、住宅地は2年連続、商業地は4年連続、工業地は3年連続の上昇となり、それぞれ上昇基調を強めています。
東京、名古屋、大阪の三大都市圏をみると、全用途平均・住宅地・商業地・工業地のいずれについても各圏域で上昇が継続し、上昇基調を強めています。
また地方圏をみると、全用途平均・住宅地が平成4年以来27年ぶりに上昇に転じました。商業地・工業地は2年連続の上昇となり、上昇基調を強めています。地方圏のうち、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の地方中枢都市では全ての用途で上昇が継続し、上昇基調を強めています。地方中枢都市を除くその他の地域においても、商業地が平成5年から続いた下落から横ばいとなり、工業地は平成4年以来27年ぶりに上昇に転じました。
国土交通省では住宅地・商業地・工業地の用途ごとに、地価の動向と背景を下記のように分析しています。
(住宅地)
- □ 雇用・所得環境の改善が続く中、低金利環境の継続や住宅取得支援施策等による需要の下支え効果もあり、交通利便性や住環境の優れた地域を中心に需要が堅調。
(商業地)
- □ 良好な資金景気回復、良好な資金調達環境の下、次を背景に需要が拡大。
- 主要都市でのオフィス空室率の低下、賃料上昇による収益性の向上
- 外国人観光客の増加等による店舗、ホテル等の進出意欲が旺盛
- インフラ整備や再開発事業等の進展による利便性の向上や賑わいの創出 など
(工業地)
- □ インターネット通販の普及・拡大に伴う物流施設や工場の立地の増加等、全国的に工業地への需要の回復が見られる。
東京・大阪・名古屋の三大都市圏から始まった地価上昇は、札幌・仙台・広島・福岡の地方中核都市へ、さらにその他の地域へと波及しており、国土交通省は全国的に地価の回復傾向が広がっているという見解を示しています。今回、最も地価が上昇したのは、外国人観光客の人気が集中するニセコを擁する北海道倶知安町の商業地で、年間の上昇率は58.8%にも及びます。一方、昨年7月の豪雨により浸水や土砂災害等の被害が生じた地域では需要が大きく減退し、豪雨災害の被害が大きく報じられた岡山県倉敷市真備町の住宅地が今回、最も地価が下落した地点となり、年間で17.7%の下落となりました。このように、マクロ経済の動向や自然災害などの影響が地価にも鮮明に反映されていることがみて取れます。
最後に、地価公示価格と相続税評価額との関係について説明します。
地価公示価格は、相続税評価額や固定資産税評価額の基準になるとされています。相続税や贈与税を計算する際の土地評価に、相続税路線価を用いる場合があります。相続税路線価は、地価公示価格の水準の80%程度で評価されており、両者は密接な関係があります。
そのため今後7月に発表される相続税路線価についても、今回の地価公示の影響を受け、地価が大幅に上昇している地点の付近については相続税路線価も大幅に上昇し、税額にも影響を与える可能性があります。
本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。