地価公示価格は引き続き上昇基調にあります。なお、地価公示価格は土地の相続税評価額の基準にもなります。
先日、平成30年の「地価公示価格」が発表されたというニュースをみました。今回の地価の動きについて教えてください。また、地価公示価格と土地の相続税評価額との関係はどのようになっているのでしょうか?
今回発表された「地価公示価格」は、一部地域の住宅地を除き上昇傾向にあるといえるでしょう。また、土地の相続税評価額算定には地価公示価格の水準が影響しており、正の相関関係があるといえます。
地価公示という制度は、地価公示法という法律に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示するもので、主な役割としては以下のようなものがあります。
- ・一般の土地の取引に対して指標を与えること
- ・不動産鑑定の規準となること
- ・公共事業用地の取得価格算定の規準となること
- ・土地の相続税評価及び固定資産税評価についての基準となること
- ・国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること
ここで、地価公示価格と土地の相続税評価額との関係について説明します。上述のとおり、地価公示価格は相続税評価や固定資産税評価の基準になるとされています。相続税や贈与税の申告にあたっては一般的に路線価等(いわゆる相続税路線価)が用いられますが、相続税路線価は、地価公示価格の水準の80%程度で評価されており、その均衡化・適正化が図られています。なお、地価公示価格、相続税路線価ともに毎年1月1日が評価の基準日とされていますが、地価公示の発表は例年3月の中~下旬(今年は3月27日)、相続税路線価の発表は例年7月初旬となっており時間差があります。
では、今回の地価公示の概況をみてみましょう。全国平均は、住宅地の平均変動率が昨年の横ばいから10年ぶりに上昇に転じました。商業地は3年連続の上昇、工業地は2年連続の上昇となり、それぞれ上昇基調を強めています。また、全用途平均は3年連続の上昇です。
東京、名古屋、大阪の三大都市圏をみると、住宅地、商業地及び工業地のいずれも、各圏域で上昇を示しました。大阪圏は、住宅地はわずかな上昇でしたが、商業地の上昇率は三圏で最も高くなっています。地方圏をみると、住宅地は下落幅の縮小傾向が継続しています。商業地及び工業地は26年ぶりに上昇に転じ、全用途平均でも下落を脱して横ばいに転じました。地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、全ての用途で上昇し、上昇基調を強めています。
国土交通省では、土地の用途ごとに地価の動向と背景を下記のように分析しています。
(住宅地)
- □ 雇用・所得環境の改善が続く中、低金利環境の継続による需要の下支え効果もあって、利便性の高い地域を中心に地価の回復が進展。
(商業地)
- □ 良好な資金調達環境の下、以下の背景から不動産需要は旺盛であり、地価は総じて堅調に推移。
- ・外国人観光客の増加などによる店舗、ホテル需要の高まり
- ・都市中心部における再開発等の進展による繁華性の向上
- ・主要都市でのオフィス空室率の低下などによる収益性の向上
(工業地)
- □ 全国的に工業地への需要の回復が見られる。特に、インターネット通販の普及等もあり、道路アクセスの良い物流施設の建設適地では大型物流施設建設に対する需要が旺盛である。
金融緩和の影響やインバウンドの増加などの影響もあり、地価上昇は大都市圏から地方圏にも波及しています。全用途の平均が3年連続で上昇したのは、バブル経済崩壊後初めてのことです。但し、人口減少が続いている地方圏においては、引き続き地価は下落傾向で推移していますし、今回、国土交通省が初めて公表したデータにでは、駅距離により地価の変動率に差があることも示されています。
また、全国の住宅地の最高価格地点が東京の番町から赤坂に入れ替わるとともに、大阪では商業地の最高価格地点がオフィス主体のキタを訪日客で賑わうミナミが上回るなどトレンドの変化も見てとれます。
したがって、7月に発表される相続税路線価についても、今回の地価公示の影響を受け、地価が大幅に上昇している地点の付近については相続税路線価も大幅に上昇し、相続税額にも影響を与える可能性があります。
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