土地を分割して相続しようと思うのですが、分割のしかたによって、評価額は変わるのでしょうか?
父の名義で下の図のような土地(合計900㎡)を所有しております。この度父が亡くなり、この土地をどのように分割しようか相続人3名(A、B、C)で遺産分割協議中です。分割のしかたによって、相続税の計算上、相続財産としての評価額は変わるのでしょうか?
ご相談者様がご懸念のとおり、相続税の計算上、誰がどのように相続するかによって、土地の評価額が変わる場合があります。
土地の評価は、①地目ごと、②利用単位ごと、③取得者ごと、に1つの土地として評価することになっています。したがって、必ずしも地番ごと(1筆ごと)に評価することにはなりません。
ご相談の土地について当てはめて考えてみますと、次のとおりです。
- ①地目ごと
- 3筆ともに地目は宅地であるため、全体を1つの土地として評価
- ②利用単位ごと
- 3筆ともに空き地(未利用地)であるため、全体を1つの土地として評価
- ③取得者ごと
- 1人の相続人が3筆すべて相続する場合や3筆すべてを共有で相続する場合には、全体を1つの土地として評価
仮に21番地は相続人A、22番地は相続人B、23番地は相続人Cがそれぞれ相続する、という場合には、取得者ごとに相続することになるため、3筆を別々に評価します。
ご相談のケースで、仮に①全体を1つの土地として評価した場合と、②3筆別々に評価した場合とで、評価額がいくらになるか計算してみましょう。
①全体で評価
200千円×0.91(※)+100千円×0.91(※)×0.02(※)×15m÷30m=182,910円
182,910円×900m=164,619,000円
②別々で評価
21番地:
200千円×1.00(※)=200,000円
200,000円×300㎡=60,000,000円
22番地:
200千円×1.00(※)=200,000円
200,000円×300㎡=60,000,000円
23番地:
100千円×1.00(※)=100,000円
100,000円×300㎡=30,000,000円
合計:150,000,000円
(※)普通住宅地区…奥行価格補正率0.91(40m以上44m未満)・1.00(20m以上24m未満)、二方路線影響加算率0.02
上記のとおり、評価額の差額が14,619,000円も生じる結果となりました。適用される税率が20%の場合では、納付する相続税額に300万円弱の差が生じます。
ただし、利用の単位が同じ土地について取得者を分けて相続する場合には、その分割の合理性に配慮しなければなりません。例えば、下図のように高い路線価に面した部分のみをAが、その他をBが相続したような場合には、「不合理分割」と判定され、取得者ごとに別々に評価することは認められません。相続した部分が、それぞれ独立して有効利用できるか否かが判断のポイントとなります。
評価額の高い低いの判断のみでは分割協議はまとまりませんが、分割協議の内容によって納付する相続税額が大きく異なる結果となります。十分に検討する必要があるでしょう。
相続税の計算における土地の評価については、お気軽に当事務所へご相談ください。
<参考>
国税庁HP「二方路線影響加算の方法」、財基通7、7-2など
本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。