相続した倉庫の解体工事をする際に、埋蔵文化財が及ぼす影響について教えてください。
相続した倉庫が古いため、建物を解体し、更地にした上で売却することを検討しています。お隣の方から「このあたりには、埋蔵文化財が埋まっている可能性がある」と聞いたことがあります。埋蔵文化財が埋まっている可能性について、確認する方法はあるのでしょうか。また埋まっている場合、解体工事等に影響はあるのでしょうか。
埋蔵文化財が埋まっている可能性については、教育委員会等へ“周知の埋蔵文化財包蔵地”の照会をすることで確認することができます。“周知の埋蔵文化財包蔵地”に該当した場合は、解体工事等について規制を受けることになります。
埋蔵文化財とは、土地に埋蔵されている文化財のことを指します(文化財保護法第92条)。
文化財とは、日本にとって歴史上または芸術上価値の高いものとされる、建造物や絵画、彫刻などの有形文化財、演劇や音楽などの無形文化財、生活の推移の理解のために欠くことのできない民俗文化財、学術上の価値の高い貝塚・古墳等の記念物その他文化的景観や伝統的建造物群などを指します(同法第2条)。いずれもその文化財の保存と活用を図り、国民の文化的向上に資するとともに世界文化の進歩に貢献することを目的に制定された、文化財保護法により保護されています。
埋蔵文化財の取扱いは、この文化財保護法の規定に基づくこととなります。
埋蔵文化財が埋まっている可能性については、その工事予定地について埋蔵文化財が埋まっている土地(以下、埋蔵文化財包蔵地)として、その存在が知られている土地(以下、周知の埋蔵文化財包蔵地)の範囲内か否かを教育委員会等に照会等することで、確認することができます。具体的な手続は、各市町村のホームページなどでご確認ください。
なお、文化庁によれば、周知の埋蔵文化財包蔵地は全国で約46万ヶ所あるそうです(文化庁HP「埋蔵文化財」)。
確認した結果、周知の埋蔵文化財包蔵地に該当した場合には、解体工事等について、下記のような規制を受けます。
工事の60日前までに、文化財保護法第93条に基づく届出を行う。(建物解体工事も含みます。)
- ①試掘調査…埋蔵文化財の保護が必要と認められた場合。工事着手前に実施する必要がある。
- ②立会調査…埋蔵文化財に与える影響が軽微であると判断された場合。工事施工時に立会により調査を行う。
- ③慎重工事…埋蔵文化財に影響はなく、①や②の必要がないと判断された場合。慎重に工事を行うことを条件に工事着手可。
上記①及び②により埋蔵文化財が発見され、予定されている工事が埋蔵文化財の保存に影響を与えると判断された場合、発掘調査を実施した上で、埋蔵文化財の記録保存等を行う。
上記①や②の結果、発掘調査まで行うことになった場合、その調査は慎重に行う必要があることから、調査に時間を要する可能性があります。したがって、解体工事を行う時期が大幅に遅れることが想定されます。
事前に教育委員会等へ問合せすることにより、教育委員会等が把握している当該地周辺の過去の工事や発掘調査等を踏まえて、上記①や②の調査が指示される可能性について聞き取りできる可能性があります。工事予定地が周知の埋蔵文化財包蔵地の範囲内かどうかを含めて、事前に教育委員会等へ照会等してみることをお勧めいたします。
<参考>
文化庁HP「埋蔵文化財」
江戸川区HP「埋蔵文化財に関するフローチャート」
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