テレビの旅番組やバラエティ番組でとりあげられることもあり、
コロナ感染禍の間も、人と顔を合わせる機会が少ないと、
ちょっとした秘湯・秘境人気が続いています。
この様な中、秘湯を紹介しつづけている「日本秘湯を守る会」が、
もうすぐ半世紀を迎えます。
当時、高度成長期の波にのみこまれ、
日本中の旅館が「ホテル化」していく中で、収容力が少ない小さな温泉宿や、
交通も不便な山の宿を守る為に宿主が集まり結成されたのが、
「日本秘湯を守る会」でした。
じわりと人気が高まり、所属する旅館を利用するリピーターも多く、
いわゆるポイントカード式のスタンプ帳も発行しています。
利用の都度スタンプが押され、10個溜まると1泊無料招待となっていますが、
最近では、年間1万4千人を超える招待があるそうです。
京都の西部に位置する嵐山に、
観光スポットから少し離れたところに「嵐山温泉」があります。
渡月橋の1キロ程上流にあり、船を使って川を渡り宿にたどり着くのですが、
桂川に面した客室からの眺めは、まさに日常を忘れる思いです。
休業状態あった温泉宿を高級旅館として、リニューアルオープンさせたのは、
軽井沢に本社を置く星野リゾート。
業績不振であった家業の温泉旅館の立て直しを成功させ、
その後、次々とリゾート施設の再建を成功させているのが、
星野リゾートの社長 星野佳路氏です。
90年代に、銀行の金余りのはけ口として利用された、
リゾート施設や老舗旅館は、バブル経済の終焉による不況により、
多額の借金を負うことになってしまいました。
その中でも、星野氏に依頼が回ってくるのは、
通常では再生の見通しが低いとされた、問題のある案件です。
金融機関の手を借りて借金を整理、圧縮したのち、
自らの経験を生かして、これらの施設や旅館を、蘇らせているのです。
どれも、経営が行き詰まったのは、
身の丈に合わない過剰な設備投資により、
借金返済額が膨れ上がったことによる資金不足が大きな原因です。
しかし、再建を進めていくうちに、色々なところに、
経営の無駄が潜んでいることがわかってくるのです。
ある老舗旅館では、内装や施設も申し分なく、
料金も決して安くない設定なのに、利益が上がらない。
よく調べていくと、リピーターの多くが特別料金で宿泊していて、
お客の中には半額以下の金額で利用している人もいたのです。
また、人件費の抑制のためか、従業員のほとんどが、
アルバイトやパートタイマーで賄われていて、勤続期間が極端に短かったのです。
そのため、仕事に対する責任感が低く、会社に対する帰属意識が高くないため、
お客様に対するサービスは低いままでした。
ホテルや旅館の客室の稼働率は70%を取れれば良いとされています、
地方の旅館では50%台のところもざらです。
少しでも空室を埋めようと、閑散時期には料金の値下げを行い、
旅行会社からツアー客を呼び込むことが行われています。
星野氏が力を注いでいるのは、リピーターを増やすことです。
他のホテルなどでは味わうことの出来ない環境を演出することで、
宿泊したお客様が「是非、もう一度泊まりに来たい…」と思わせます。
こうして、外資系高級ホテル並みの料金でありながら、
高いリピート率を誇っています。