生命保険への加入は相続対策として預金にはない効果を期待できるのでしょうか。
70歳になり相続について真剣に考えるようになりました。保有している財産状況から相続税は避けられそうにありません。先日、同世代の知人から、納税資金の準備は預金より生命保険の方が有効なので加入した方がよいとアドバイスを受け、保険代理店を紹介されました。預金と家賃収入が十分あり生命保険は不要と考えていたため、これまで加入した経験がありません。相続対策として預金にはない効果を期待できるなら加入しようと思いますが、営業担当者の説明だけで決断することに不安があります。客観的な立場から相続における生命保険の有効性、生命保険と預金の違い、注意点について教えてください。
相続人は妻と子2人の予定です。受取人は子2人5割ずつ指定すればよいといわれました。
- 契約者、被保険者:私
- 死亡保険金受取人:長男、長女 5割ずつ
- 保険種類:一時払終身保険
- 保険金額:1,000万円
- 一時払保険料:9,623,000円
生命保険は預金よりも有効とされるポイントがいくつかあり、相続において有効と考えられます。預金との違いと注意点については詳細解説をご確認ください。
提案された契約形態で死亡時に子が受け取る死亡保険金は受取人固有の財産ですが、相続税の計算上は、みなし相続財産と扱われ課税対象となります。相続税の対象となる点は預金と同じですが、以下の点で違いがあり、生命保険は相続において有効と考えられます。
契約者(保険料負担者)、被保険者ともに被相続人となる生命保険契約で、相続人が受け取る死亡保険金は、非課税枠「500万円×法定相続人の数」を適用できる。
生前に契約者が死亡保険金受取人を指定するため、契約者の意思により遺したい人に確実に遺せる。
生命保険の死亡保険金は、一般的に保険会社所定の保険金請求書、死亡診断書、死亡日を証明できる公的書類(除籍謄本など)があれば請求手続きができ、書類提出から1~2週間で受取人指定の口座に入金されます。
一方、預金は亡くなった旨の通知があったときから口座が凍結され、遺産分割が終了するまでの間、相続人単独では払戻しを受けられないことがあります。そのため、平成30年の民法改正(平成31年7月施行)により、遺産分割前に相続預金口座の払戻し制度が設けられ、相続人単独で払戻しを受けることができるようになりました。しかし、その手続きには被相続人の除籍謄本以外に相続人全員の戸籍謄本が金融機関ごとに必要など、死亡保険金請求よりも必要書類が多く、払戻し額は一定の範囲内に制限されています。
上記のとおり死亡保険金はあくまでも受取人固有の財産であり、相続財産ではないため通常は、遺産分割協議の対象にはなりません。そのため、原則として遺留分を計算する際も対象に含まれません。
このように預金よりも有効とされるポイントがいくつかある一方で、次のような注意点もあります。
- 預金より流動性が劣る
- 契約から早期に解約すると元本割れする可能性が高い
- 税制が変わり、期待した効果が得られない可能性がある
- インフレにより保険金の資産価値が下がる可能性がある
相続対策の検討は、保有している財産全体を踏まえて、納税見込額や財産の分け方などを整理しておく必要があります。保険金額や受取人についても慎重に検討した方がよいでしょう。
相続対策に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
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