「庭内神し」の相続税法上の取扱いを教えてください。
私は代々の地主一族の本家筋の者です。今般、先代が亡くなり私が相続する予定の不動産のうち、自宅の敷地内に先祖代々の祠があり、私たち家族や親族が日常的にお参りしています。相続税の申告に際し、こういった祠や祠がある敷地の扱いはどのようになるのでしょうか。
今回のご相談の場合、日常的にお参りをしている先祖代々の祠ということですので、祠がある敷地部分も含めて相続税の非課税財産に該当する可能性が高いと思われます。
一般に、屋敷内にある神の社や祠など、ご神体を祀り日常礼拝の用に供しているものを「庭内神し」といいます。また、ご神体とは不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷などで特定の者または地域住民などの信仰の対象とされているものをいいます。
まずは、相続税法の非課税財産の規定について見てみましょう。同法第12条第1項第2号に以下の規定があります。
(相続税の非課税財産)
第十二条 次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 (略)
二 墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
(以下略)
上記に関連して、相続税法基本通達に以下の規定があります。
(「墓所、霊びょう」の意義)
12-1 法第12条第1項第2号に規定する「墓所、霊びょう」には、墓地、墓石及びおたまやのようなもののほか、これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件をも含むものとして取り扱うものとする。(平元直資2-207改正)
(祭具等の範囲)
12-2 法第12条第1項第2号に規定する「これらに準ずるもの」とは、庭内神し、神たな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものをいうのであるが、商品、骨とう品又は投資の対象として所有するものはこれに含まれないものとする。
条文をそのまま読むと庭内神しやその敷地は、無条件に非課税財産に該当するようにも思われますが、国税庁の質疑応答事例では、一定の要件のもと、非課税財産とする、としています。
国税庁の質疑応答事例「庭内神しの敷地等」では、弁財天を祀るための祠とその附属設備である鳥居があるケースを例示し、祠の敷地や附属設備について“ただちに相続税の非課税財産に該当するとはいえない”とし、一定の要件のもと、非課税財産に該当するとしています。この場合の「一定の要件」とは、以下のとおりです。
- ①「庭内神し」の設備とその敷地、附属設備との位置関係やその設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形
- ②その設備及びその附属設備等の建立の経緯・目的
- ③現在の礼拝の態様等も踏まえた上でのその設備及び附属設備等の機能
これら3つの面から、その設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合
今回のケースに照らすと、ご家族やご親族が日常的に礼拝する先祖代々の祠ということで、上記(2)の要件を満たし、敷地部分も含めて相続税の非課税財産に該当する可能性が高そうです。
ただし、敷地部分について、庭全体が非課税になるものではなく、祠と社会通念上一体とみなされる部分に限られることに注意が必要です。
不動産の相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
<参考>
国税庁HP 質疑応答事例「庭内神しの敷地等」
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