お知らせ

 ポン酢をはじめとする調味料で有名なミツカンですが、
 長年積み重ねてきた発酵技術を基に、
 「腸活」に向けた食品の開発に挑んでいます。

 カギになるのは発酵性食物繊維で、
 これを摂ることにより肥満予防や便通の改善があるとされています。
 バームクーヘンや、レンジで調理できるキーマカレー、
 グラノーラも取り揃え、販路拡大を狙っています。

 酒粕を原料として醸造酢を作ったのは、ミツカンが最初です。
 驚くことに、ミツカンは酢作りを始める前は、造り酒屋を営んでおり、
 ミツカンの初代 中野又左衛門氏は、酒造りの規制が解かれるため、
 競争が激しくなると予想して新しい事業を模索していました。

 しかし、造り酒屋が「酢」を作るなんて、考えられないことでした。
 酒桶に酢酸菌が入ってしまうと、お酒が全部「酢」になってしまうからです。

 現在の握りずしの原型は、江戸から広まったとされる、早ずしです。
 それに使われていた酢は、高価で醸造に時間がかかる米酢だったのですが、
 又左衛門氏は、これを安価な粕酢に代えてもらうことで、
 寿司をもっと手軽に味わってもらえるのではないかと考えます。

 その目論見は、見事に的中し、握りずしのブームと共に、
 ミツカンの粕酢は欠かせないものとなっていったのです。
 初代から続くチャレンジ精神は、その後も絶えることなく現在に至っており、
 匂いの少ない納豆でヒットした
 「金のつぶ」を代表とする納豆事業に受け継がれています。

 反面、成功の影には、苦い経験も数多く残されています。
 明治中期、日本に入ってきたビールに強い関心を持った、
 四代目 又左衛門氏は、一気にビール醸造事業に傾倒していきます。
 独自ブランドの「カブトビール」は、
 全国5位のシェアを占めるまでになりますが、
 その後の統合政策により、事業としては終えることになります。

 70年代、外国から外食チェーンが入ってくるようになると、
 その先進性に着目し、ハンバーガーショップを展開するようになります。
 見よう見真似で、東京都内を中心に店舗を展開していったのですが、
 外国勢の力は強く競争が厳しくなるにつれ、
 10年後に事業撤退することになります。

 赤字であった事業が、少しずつ利益が上がるようになり、
 ようやく黒字に転換していった時の喜びは、経営の醍醐味といえるでしょう。
 そして、確実に利益を蓄えられるようになった時に、
 経営者が考えておくことは、「引当(ひきあて)」することです。

 「引当」とは、将来に発生するべき支出に対して、
 予め貯蓄等をして資金を残しておくことです。
 店舗や工場の設備の修繕や更新、従業員の増員や退職金など、
 数え上げると、何年かごとに発生する支出が結構あるはずです。

 黒字と思っていたけれど、「引当」を実行してみると、
 そうでもなかった場合もあるはずです。
 大切なのは、一時(短期)の利益ではなく、
 大きな周期で利益を出せているかどうかということなのです。

相続登記時に申出が義務化される生年月日等

今回は相談事例を通じて、相続登記の義務化に伴い申出が必要とされる生年月日等の情報と、その公開の有無について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 先日、父が亡くなり、相続登記を行う必要が生じました。調べていると、相続登記は2024年4月1日から義務化されたと同時に、2025年4月21日から、登記の際に生年月日やメールアドレスも申請する必要があると知りました。これらの情報が登記されてしまうということなのでしょうか。新しい変更について教えてください。

A-1
ワンポイントアドバイス

 結論から申しますと、ご相談の情報は公開されることはありませんが、まずは、相続登記義務化について簡単にご説明させていただきます。

 2024年4月1日から、相続(遺言、遺産分割も含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内の相続登記が義務とされました。
 また、正当な理由なくこの義務に違反した場合は、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象とされました。なお、この相続登記義務化は、2024年3月31日以前に起こった相続にも適用されます。

 相続登記の義務化によって、所有者不明の土地や建物が増えるのを防ぎ、適切な不動産管理や土地の有効利用が円滑に進むことが期待されています。

A-2
詳細解説

 所有者不明不動産の問題は、相続だけでなく、登記名義人が住所変更を反映させないことで起こります。そのため、2026年4月1日から、不動産の所有者は、氏名・住所変更から2年以内に変更登記を行うことが義務付けられ、義務に違反した場合は、5万円以下の過料の適用対象となります。

 この法改正と併せて、所有者が登記申請をしなくても、登記官が住基ネットを使って職権(職務を行う上で与えられている権限)で変更登記を行う仕組みが導入されます。

 この仕組みの適用のため、2025年4月21日から、所有権の保存・移転等の登記申請時に、氏名や住所、生年月日などの「検索用情報」を申し出ることが必要となりました。

 なお、同時にすでに登記されている所有者も、検索用情報を申し出ることができるようになります。この申出をしておけば、住所変更登記が義務化された後も、義務違反に問われることがないとされています。

 具体的に検索用情報として申出が必要な内容は、以下のとおりです。

  • 氏名
  • 氏名のふりがな(外国籍の場合はローマ字表記)
  • 住所
  • 生年月日
  • メールアドレス

 生年月日は、氏名・ふりがな・住所とともに住基ネットへの照会に使用し、メールアドレスは、登記官が職権で住所等変更登記を行うことの可否を、所有権の登記名義人に確認する際に送信する電子メールの宛先となるものです。また、申出手続が完了した際にも送信がされます。

 そのため、あくまで登記される内容は住所と名前であることに変更はなく、ご相談いただいた、生年月日、メールアドレスは、登記簿に記載される情報として他人に公開されることはありませんのでご安心ください。

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仮想通貨(暗号資産)と相続税

仮想通貨(暗号資産)を相続した場合に、相続税は課税されるのでしょうか?

Q
今月のご相談

 私(75歳)は、ビットコインを保有しています。最近判断能力が衰えてきていると感じ、将来のことも考えると売却して他に投資するか、このまま保有し続けて相続で次世代へ渡すか、悩んでいます。たとえば私が亡くなり、相続人となる私の子がこのビットコインを相続した場合には、相続税の課税対象となるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談者様が保有しているビットコインなどのいわゆる仮想通貨(以下、暗号資産)について、お子様が相続により取得した場合には、相続税が課税されます。

A-2
詳細解説
1.暗号資産を相続により取得した場合

 相続税法では、個人が、「金銭に見積もることができる経済的価値のある財産」を相続により取得した場合には、相続税の課税対象となることとされています。
 他方、暗号資産については、決済法上、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と規定されており、「金銭に見積もることができる経済的価値のある財産」と考えることができます。
 そのため、被相続人等から暗号資産を相続により取得した場合には、相続税が課税されることになります。

2.相続により取得した暗号資産の評価方法

 暗号資産を相続により取得した場合の評価は、一般的に評価方法が定められている「評価通達」に明示されていないことから、評価通達に定める評価方法に準じて次の区分に応じて評価することとなります。

■活発な市場が存在する場合(※)

 活発な市場が存在するということは、一定の相場が成立し、客観的な交換価値が明らかになっているものと解されます。そのため、外国通貨に準じて、相続人等の納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格によって評価します。

 具体的には、暗号資産交換業者から提供を受けた残高証明書に記載された取引価格によって評価します。その他、以下による評価でも差し支えないとされています。

  • 暗号資産交換業者(暗号資産販売所)において、購入価格と売却価格がそれぞれ公表されている場合には、納税義務者が暗号資産を暗号資産交換業者に売却する価格(売却価格)
  • 納税義務者が複数の暗号資産交換業者で取引を行っている場合には、納税義務者の選択した暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格

 (※)「活発な市場が存在する」場合とは、暗号資産取引所又は暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われており、継続的に価格情報が提供されている場合をいいます。

 

■活発な市場が存在しない場合

 活発な市場が存在しないということは、上記とは逆に、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していないと解されます。そのため、その暗号資産の内容や性質、取引実態等を勘案し個別に評価することとなります。

 具体的には、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価することとなります。

 暗号資産については、その取得時期によってはかなり価値が上がっているものがあります。現状、個人が暗号資産を売却したときには、所得税は総合課税(雑所得又は事業所得)となるため、株式の売却などの他の金融資産と比べて税負担が重いと考えられています。

 ご存命のうちに売却して他に投資されるか、相続によるかは、他の財産債務や、将来の相続人等の状況により変わってきます。

 相続に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問合せください。

<参考>
相法2、2の2、相基通11の2-1、評通4-3、5、 国税庁HP「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」他

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 年度末、私たちにとっては、
 「確定申告」の季節という印象が強い3月です。
 一大イベントを乗り越え、事務所周辺を見渡すと、
 あちらこちらの大学で卒業式(学位記授与式)のシーズンを迎えています。

 24日には、地元の京都大学でも卒業式が行われました。
 晴れ着で着飾った卒業生に混じって、
 毎年注目されている、話題のキャラクターなどに扮した、
 仮装姿の卒業生が参加して、にぎやかな門出となったそうです。
 
 滋賀県の琵琶湖の湖東にあり、古くは、城下町として栄え、
 大丸、高島屋、西武など、全国で活躍する近江商人を
 生み出した土地の一つに近江八幡市があります。
 古くは、W・M・ヴォーリズ氏が
 アメリカの会社から皮膚薬「メンソレータム」の
 日本での販売権を譲り受け、近江兄弟社を設立した土地であり。

 彼が私立の結核療養施設を開設することに始まり、
 幼稚園の開園、図書館の運営など医療、教育、文化事業を
 単に利益を目的としたものではなく、
 活動を通じてキリスト教精神を実践し、
 その精神が根ざしている土地柄です。

 そこに本店を置く菓子メーカー「たねや」、
 3代目となる山本徳次社長は、
 ユニークな経営理念を持ち、新しい発想で菓子作りに取り組み、
 会社を急成長させています。

 明治時代から続いた家業に安住せず、
 新しい事にチャレンジする傍ら、
 地元に根を張ったその経営は老舗の理想といえるでしょう。
 しかしその取り組みは、一朝一夕に出来上がったことではなく
 失敗の積み重ねに基づいたことであったのです。

 先代から「支店を出すな」という言いつけを破り、
 支店を出した時のこと。
 給与を払う必要の無い身内で、店を遣り繰りしたのですが、
 一号店も二号店も全く採算に乗りませんでした。

 念願のデパートのテナントに出店した時のこと。
 「売りたい」という気持ちが先にたち、
 すべてのアイテムの品揃えをして販売に挑んだのですが、
 その結果は無残なもの。
 日にひとつも売れない菓子がある程で、
 デパートの担当者からは、名指しで叱責される日が続きました。

 赤字続きの運営に耐え切れず、遂に撤退を決め
 泣く泣く、売れない商品を引き上げました。
 すると面白いことが起こりました、
 初代から作り続けている菓子の売上が伸びたのです。
 出店当初の22品を最終的に3品に減らしたのですが、
 売上は変わらなかったのです。

 売上が芳しくない時に、ついつい手を出したくなるのが次のこと…
 「新商品の販売」
 「支店(営業所)の開設」
 「営業ルートの開拓」

 どれも、希望には満ちているのですが、
 すべてやってはいけない事ばかりです。
 確かに売上は上がるものの、そのために必要となる、
 直接、間接の支出はその金額をはるかに上回るでしょう。
 手を広げる前に、自信のある商品の売上を
 伸ばす方法を考えてみては如何でしょう。

相続した不動産の売却に必要な書類

相続した不動産の売却手続きに必要な書類を教えてください。

Q
今月のご相談

 先日、父が亡くなり、空き地を相続しました。私は遠方に住んでおり、特に使う予定もないので売却することを考えています。不動産の売却は初めてなので、何を準備すればよいのかわかりません。不動産の売却にあたって、必要な書類等を教えてください。

A-1
ワンポイントアドバイス

 不動産の売却に必要な書類は、一般的に7種類あります。今回のご相談は相続した土地の売却ですが、不動産の種類や売却方法によって必要な書類が異なりますので、ご注意ください。

A-2
詳細解説

 相続した不動産の売却手続きには、一般的に以下の書類が必要になります。

(1)相続登記完了後の登記識別情報通知

 不動産の所有者であることを公的に証明する書類です。買い手への所有権移転登記をする際に必要になります。故人名義のまま売却することはできないため、必ず相続登記を済ませておく必要があります。
 なお、売買に限らず、相続登記は2024年4月から義務化されています。その点もご注意ください。

(2)土地の確定測量図・境界確認書

 土地を売却する際には、隣接地との境界の確定や法務局に登録されている面積に相違がないかなどを調べるために、確定測量図や境界確認書が必要になります。
 確定測量図とは、道路を含む隣接するすべての境界が確定していることを証明しており、正確な面積が示されている書類です。境界確認書は、隣接地所有者が境界について確認し署名押印した書類です。

(3)本人確認書類

 物件の所有者であることを証明するために運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどの写真付き本人確認書類が必要です。写真付きのものがない場合、国税・地方税・社会保険料・公共料金の領収書や住民票の写しなど2つの本人確認書類が必要になります。

(4)固定資産税納税通知書・都市計画税納税通知書

 納税額を証明する書類であり、売主と買主の間で税金の精算をするために必要になります。

(5)実印・印鑑証明書

 印鑑証明書とは、実印が役所に登録されたものであることを証明する書類です(不動産引渡し時に発行してから3ヶ月以内のものが必要です)。

(6)住民票

 登記上の住所と現住所が異なる場合に必要な書類です。また2回以上住所の変更がある場合、これまでの住所変更がすべて記載されている戸籍の附票が必要になります。住民票には、印鑑証明書のように期限はありませんが、あまり古く発行されているものであれば、手続きをする司法書士へ確認の上、取り直しましょう。

(7)相続された不動産の購入当時の売買契約書

 被相続人が購入した際の売買契約書は、取得費用を算出する際に必要な書類です。売買契約書の有無によって、税金負担額が変わる可能性があります。

 このように不動産を売却するためには必要な書類が多くあり、その不動産の状況によってはさらに増える可能性もあります。今回は土地の売却の際に必要な書類を紹介しましたが、マンションや一戸建てを売却する際には他にも必要な書類がありますので、事前に専門家に確認しておくことをお勧めします。

 なお、相続した不動産の売却については、売却時期によっては税金が安くなる特例が適用できる可能性も秘めています。相続した不動産の売却に関するお悩みは、当事務所へお気軽にご相談ください。

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「相続人」と指定された死亡保険金受取人

死亡保険金の受取人が「相続人」と指定されていた場合、受取人と受取額はどうなりますか?

Q
今月のご相談

 先日、夫が亡くなりました。夫が生前に加入していた生命保険契約を確認したところ、以下のような内容でした。保険金は、誰がどのように受け取ればよいのでしょうか?

【契約内容】
  • 保険種類:終身保険
  • 契約者(保険料負担者):夫
  • 被保険者:夫
  • 死亡保険金受取人:相続人
  • 保険金額:1,000万円
【家族構成】
 夫(死亡)、私(妻)、長男、次男
【夫の相続における法定相続人】
 私(妻)、長男、次男の3人
A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談の場合、被保険者である旦那様の法定相続人である奥様、ご長男様、ご次男様の3人が保険金受取人となります。それぞれの保険金受取額については、詳細解説をご確認ください。

A-2
詳細解説
1.保険金受取人は誰になる?

 生命保険は、契約時に契約者が特定の人を受取人に指定するのが一般的です。
 しかし、契約者と被保険者が同じ契約で、特定の人が指定されず、死亡保険金受取人が「相続人」と指定されていた場合、死亡時における被保険者の法定相続人が受取人となります。

 よって、ご相談の場合は、旦那様の法定相続人である、奥様、ご長男様、ご次男様の3人が死亡保険金を受け取ることになります。
 ただし、ご契約の約款により、受取人の順位が定められている場合は、約款指定の順位に従い受け取ることになります。

2.各人の保険金受取額

 死亡時に被保険者の法定相続人が複数名いる場合、特段の事情がない限り、各保険金受取人が受け取るべき権利割合は、法定相続分の割合になります。また、相続人であるため、相続放棄などをされていない限り、相続税における生命保険の非課税枠が適用できます。

 各人の保険金受取額は、以下となります。

【奥様】1,000万円×1/2(※)=500万円
【ご長男様】1,000万円×1/4(※)=250万円
【ご次男様】1,000万円×1/4(※)=250万円

(※)法定相続人が配偶者と子である場合の法定相続分の割合

  • 配偶者:1/2
  • 子:1/2(複数人いる場合には、1/2を均等に分割)
3.注意点

 生命保険の死亡保険金は、受取人の固有財産とみなされるため、基本的には遺産分割協議の対象外となります。
 受取人が相続人と指定されている場合、相続時に権利者となる人の特定が複雑になる、請求時の手続き書類が煩雑になることがあります。
 相続人同士のトラブルに発展する可能性もありますので、可能な限り、特定の人を受取人に指定しておく方がよいでしょう。

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 海洋堂の創業者 宮脇修氏が、今月16日にお亡くなりになられました。
 模型製作という未知の分野に手を伸ばし、
 多くの子供たちに、喜びや夢を与えてくれたことに感謝しなければなりません。

 ほとんどの起業家は、初めて経験することばかりの中、
 失敗や工夫を重ねて、その日一日を乗り切ることに一生懸命です。
 このコラムは、先人が経験したそのような体験を、
 自分自身を含めビジネスを始める方の、
 ノウハウとして蓄積できないかと思い始めたものです。

 先人の体験記の多くは、日本の高度成長期のものであり、
 令和の時代では、ハラスメント、長時間労働といった問題で、
 美化して語ることができないことも多くなっています。
 これからは、新しい発想力とそれを具現化する力が、
 益々必要となってくるくるのではないでしょうか。

 昔、子供達の憩いの場、駄菓子屋や玩具屋では、
 仕事熱心(?)で、子供好きな店主たちが、
 あれこれと知恵をひねり、子供を集めていました。

 フィギュアなど模型製作の海洋堂の宮脇修氏も、
 同じ気質を持ち合わせていたようです。
 創業当時は小さな模型店を営んでいましたが、
 店では子供たちの声が絶えなかったようです。

 戦艦のプラモデルを悠々と浮かべて遊ぶ場所がないと聞けば、
 店にプールを作り、そこで遊べるようにしたり。
 スロットカーがブームになった時には、
 廃工場を借りて、レーシング場を作って楽しませていたそうです。

 このように、店主が品揃えや売り方、客寄せの方法まで、
 お客の動向を観察して、試行錯誤を行っていました。
 上手くいく事もあれば、目論み違いすることも当然あります、
 その結果、店には売れ筋商品と売れ残った「ガラクタ」が混在していました。 

 現在では、繁盛している店の品揃えや販売方法が
 より洗練され、規格化されて、店舗として運営されるようになっています。
 結果、スーパーやショッピングセンター、専門店、どこに出かけても、
 売れ筋商品しか店頭に並ばなくなってしまいました。

 2011年7月高知県四万十町に「海洋堂ホビー館」をオープンさせました。
 高知県中心部から車や電車を使って2時間もかかる、
 辺ぴな場所に登場したのは、模型の博物館です。

 四万十川の中流域にある山村地帯に、突如現れる派手なデザインの建物。
 廃校の体育館を改装した博物館の中には高さ10メートルの帆船や、
 精巧な動物の食玩など、1万点以上が並べられています。

 年々、都市部と郊外、地方の地域格差が広がっています。
 土地の価格で比べると、郊外の一等地が都市部の路地裏並み、
 地方のそれは、都市部の何十分の一になっています。

 都市部に店舗を構えても家賃も高騰し、時代にミスマッチしたもの、
 マニア向けの商品など、相当数の販売が見込めないものは、
 維持することは困難になりました。

 しかし、発想を変えてみれば、都市部では「ガラクタ」扱いであっても、
 家賃が何分の一、何十分の一の地域では、
 充分ビジネスとして成り立つ可能性を持っているのです。

 特異性や希少性、専門性のニーズを探って品揃えを行えば、
 儲けの何割にも相当する家賃を払って必死に売上を稼ぐより、
 少ない売上でも効率よく利益が残ればオッケーなのです。

相続された事業用負債の保証

今回は相談事例を通じて、相続された事業用負債の保証手続きについて、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 母が亡くなり、母名義の賃貸物件と母が負担していたアパートローンを姉が引き継ぐこととなりました。私は母のアパートローンの契約時には、公証役場に行って連帯保証契約をしましたが、今後、姉の連帯保証をする場合、また公証役場に行く必要があるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 すでにされている保証契約を相続人が負担する債務に移すのみである場合には、既存の保証契約で相続人の負担する債務を担保する旨の書面による承諾は必要となりますが、再度公証役場に行く必要はありません。

A-2
詳細解説

 通常、法人や個人事業主が事業用の融資を受ける際には保証人が必要となりますが、その事業に関与していないにもかかわらず、親戚や友人が安易に保証人になってしまい、その結果多額の債務を負うといった事態が生じています。
 そのような事態を防ぐため、2020年の民法改正により、【公証人による保証意思確認手続】が新設されました。

 この手続では、保証人になろうとする方が公証役場に出向き、公証人による保証意思の確認がされた後、公証人が保証意思宣明公正証書を作成します。
 その際、公証人は、保証人が主債務の具体的な内容を理解しているか、保証契約のリスクを充分に理解した上で保証契約を締結する意思があるか等を確認します。

 アパートローンは「事業のために負担した貸金等債務」にあたるため、新たに保証契約を締結する場合には、公証人による保証意思確認手続がなければ契約は無効となります(民法465条の6)。しかし、主債務(アパートローン)が主債務者の死亡により相続人に包括承継された場合は、保証契約は包括承継された債務に対して有効であり、新たに保証契約を締結するものではないため、公証人による保証意思確認手続は不要となります。

 なお、ご相談の事例はお姉様がアパートローンを引き継がれるということですので、ご相談者様を含む他の相続人が法定相続分に応じて承継した債務について、お姉様が免責的債務引受をすると考えられます。

 免責的債務引受によりお姉様が負担することとなる債務に保証契約を移すことができますが、保証人であるご相談者様の書面による承諾が必要となります(民法472条の4)。この場合、新たな保証契約ではありませんので、公証人による保証意思確認手続は不要となります。

 公証人による保証意思確認手続が必要な場合かどうかの判断に迷われる場合は、弁護士や司法書士にご相談ください。

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名義預金と指摘されないために

名義預金だと指摘されないためには、どのような点に注意したらよいですか?

Q
今月のご相談

 孫がこの春に就職します。
 お祝いとして孫名義の口座を作って、そこにいくらかのお金を振り込もうと思います。
 孫名義であっても、私の財産として相続税がかかってきてしまう話を聞いています。
 どのような点に注意すれば、そのような指摘を受けなくてすむのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談者様は、いわゆる「名義預金」といわれる財産となるのを懸念されていると思われます。このような名義預金と指摘されないためには、その預金がお孫様のものだということを明確にしておくことが大切です。どのような点に注意すべきかは、詳細解説をご参照ください。

A-2
詳細解説
1.被相続人名義以外の財産

 誰の名義かにかかわらず、被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。
 例えば、被相続人の配偶者や子、孫などの名義の預貯金(いわゆる「名義預金」)や、株式、証券投資信託の受益証券などの財産であっても、被相続人が資金を捻出していたことや管理状況等から、被相続人の財産と認められるものは、被相続人の財産として、相続税の申告の際に含める必要があります。

2.名義預金と指摘されないために注意すべきポイント

 名義預金と指摘されないために注意すべきポイントを、3つご紹介します。

■通帳や印鑑、キャッシュカードなどの保管管理は誰が行っていますか?

 通常は、名義人本人が通帳、印鑑、カードなどを保管し、本人が必要とするときにいつでも解約、引出が可能です。

 一方、名義人本人ではなく亡くなった人が通帳等を保管しており、預金の引出などを亡くなった人が自由にできるような場合は、どうでしょう。これを名義人本人の財産だといえるでしょうか?

 このような場合で名義預金と認定されないためには、なぜ亡くなった人が子や孫名義の口座の通帳等を保管し、自由に使えるようにしていたのか、その口座へは誰のお金を入金したのか、などについて税務署が納得するような理由が必要です。

■亡くなった人の届出印と同一の届出印になっていませんか?

 名義人本人が口座開設を行った場合には、通常は自分の印鑑で届け出をします。もし亡くなった人と同一の印鑑で口座開設を行っていれば、印鑑は亡くなった人が管理し、預金の引出などを自由にできる状態であった、というように想定されます。

 したがって、なぜ同一の印鑑で届け出を行ったのか、その口座へは誰のお金を入金したのか、などについて税務署が納得するような理由が必要です。

■過去に贈与を受けた事実はありますか?

 贈与は、あげる側の「あげましょう」という意思ともらう側の「もらいましょう」という意思、両者の合意があって初めて成立します。もらう側がその事実を知らなければ、贈与は成立しません。

 名義人は、その預金口座の存在を知っていますか? 贈与税の申告は行われていますか?

 贈与を行う場合には、必ずもらう側(子や孫)へも通知しましょう。

 以上の点に注意していただきながら、お孫様に対する資金贈与をご検討いただければと思います。

 

 名義預金を含めた相続税に関する相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
国税庁HP「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集

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 昨年は2024年問題として、
 物流業界の労働時間制限による起きる問題が話題となっていました。
 年が変わった今年も、2025年問題としていくつか挙げられています。
 代表的なものには、団塊の世代が後期高齢者となる、
 医療や介護の影響ですが、その他にも気になるものがあります。

 そのひとつが、ビデオ・テープが再生機器の生産終了や
 テープ自体の経年劣化に伴い、
 映像の再生やダビングが困難になるとされるものです。

 テープ自体の寿命は20年程とされており。
 昭和生まれの方々が、
 子供の成長や自身の記念に撮りためた記録が観られなくなると、
 デジタル化のため専門業者への持ち込みが増えているそうです。

 風前の灯とされるビデオ・テープ、発売当時の規格をめぐる熾烈な争い。
 製品の開発に一歩先に出たソニーの「ベータ」に、
 巻き返しを図るビクターの「VHS」の猛攻勢はすさまじいものでした。

 当時のビクターは業界8位の中堅メーカーにしか過ぎず。
 技術力の高さはソニーがダントツで、
 かなり水をあけられる形で松下が入り、次にビクターがついてくる。

 「そんな会社が、家庭用ビデオを作れるとは到底思えない」
 と言うのが世間での評価でした。

 また、社内でも新しいビデオ開発には見切りをつけ、
 業務用ビデオの改良・販売をおこなっていくことに方針転換したのでした。
 「他社に先を越されれば、
 ビデオ事業にかかわる社員、協力工場すべてが仕事を失うことになる」

 当時の事業部長がこう決意したことから、
 本格的に家庭用のビデオ開発に取り掛かることになります。
 それは、本社には黙って「秘密開発部隊」としてスタートしたのです。

 一度も黒字を出したことのない部門、
 業務用ビデオを売り歩き、自らの給与を稼ぎながら、開発を進めていきます。
 また、理由をつけ、売れる見込みのない業務用ビデオを生産し続け、
 事業に携わる人々の首を繋ぎます。

 在庫は溜まりにたまり、月商の7、8ヶ月にもなりました。
 本社からの借入金は年商をはるかに超え30億円以上に…
 金利は6、7パーセントだったので、
 通常の会社なら既に倒産していてもおかしくない状況でした。

 ソニーに遅れること、1年5ヵ月後
 ビクターは家庭用ビデオを発売することが出来ました。
 対抗策として、ビクターが取ったのは、技術を他社に公開することでした。
 日立、松下をはじめとするVHS規格に賛同する企業に、
 試作品を貸し出し、生産ラインまで公開することとしたのです。

 その結果、VHSが家庭用ビデオ規格の主導権を握ることとなったことは、
 歴史が証明するとおりです。

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