お知らせ

 海洋堂の創業者 宮脇修氏が、今月16日にお亡くなりになられました。
 模型製作という未知の分野に手を伸ばし、
 多くの子供たちに、喜びや夢を与えてくれたことに感謝しなければなりません。

 ほとんどの起業家は、初めて経験することばかりの中、
 失敗や工夫を重ねて、その日一日を乗り切ることに一生懸命です。
 このコラムは、先人が経験したそのような体験を、
 自分自身を含めビジネスを始める方の、
 ノウハウとして蓄積できないかと思い始めたものです。

 先人の体験記の多くは、日本の高度成長期のものであり、
 令和の時代では、ハラスメント、長時間労働といった問題で、
 美化して語ることができないことも多くなっています。
 これからは、新しい発想力とそれを具現化する力が、
 益々必要となってくるくるのではないでしょうか。

 昔、子供達の憩いの場、駄菓子屋や玩具屋では、
 仕事熱心(?)で、子供好きな店主たちが、
 あれこれと知恵をひねり、子供を集めていました。

 フィギュアなど模型製作の海洋堂の宮脇修氏も、
 同じ気質を持ち合わせていたようです。
 創業当時は小さな模型店を営んでいましたが、
 店では子供たちの声が絶えなかったようです。

 戦艦のプラモデルを悠々と浮かべて遊ぶ場所がないと聞けば、
 店にプールを作り、そこで遊べるようにしたり。
 スロットカーがブームになった時には、
 廃工場を借りて、レーシング場を作って楽しませていたそうです。

 このように、店主が品揃えや売り方、客寄せの方法まで、
 お客の動向を観察して、試行錯誤を行っていました。
 上手くいく事もあれば、目論み違いすることも当然あります、
 その結果、店には売れ筋商品と売れ残った「ガラクタ」が混在していました。 

 現在では、繁盛している店の品揃えや販売方法が
 より洗練され、規格化されて、店舗として運営されるようになっています。
 結果、スーパーやショッピングセンター、専門店、どこに出かけても、
 売れ筋商品しか店頭に並ばなくなってしまいました。

 2011年7月高知県四万十町に「海洋堂ホビー館」をオープンさせました。
 高知県中心部から車や電車を使って2時間もかかる、
 辺ぴな場所に登場したのは、模型の博物館です。

 四万十川の中流域にある山村地帯に、突如現れる派手なデザインの建物。
 廃校の体育館を改装した博物館の中には高さ10メートルの帆船や、
 精巧な動物の食玩など、1万点以上が並べられています。

 年々、都市部と郊外、地方の地域格差が広がっています。
 土地の価格で比べると、郊外の一等地が都市部の路地裏並み、
 地方のそれは、都市部の何十分の一になっています。

 都市部に店舗を構えても家賃も高騰し、時代にミスマッチしたもの、
 マニア向けの商品など、相当数の販売が見込めないものは、
 維持することは困難になりました。

 しかし、発想を変えてみれば、都市部では「ガラクタ」扱いであっても、
 家賃が何分の一、何十分の一の地域では、
 充分ビジネスとして成り立つ可能性を持っているのです。

 特異性や希少性、専門性のニーズを探って品揃えを行えば、
 儲けの何割にも相当する家賃を払って必死に売上を稼ぐより、
 少ない売上でも効率よく利益が残ればオッケーなのです。

相続された事業用負債の保証

今回は相談事例を通じて、相続された事業用負債の保証手続きについて、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 母が亡くなり、母名義の賃貸物件と母が負担していたアパートローンを姉が引き継ぐこととなりました。私は母のアパートローンの契約時には、公証役場に行って連帯保証契約をしましたが、今後、姉の連帯保証をする場合、また公証役場に行く必要があるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 すでにされている保証契約を相続人が負担する債務に移すのみである場合には、既存の保証契約で相続人の負担する債務を担保する旨の書面による承諾は必要となりますが、再度公証役場に行く必要はありません。

A-2
詳細解説

 通常、法人や個人事業主が事業用の融資を受ける際には保証人が必要となりますが、その事業に関与していないにもかかわらず、親戚や友人が安易に保証人になってしまい、その結果多額の債務を負うといった事態が生じています。
 そのような事態を防ぐため、2020年の民法改正により、【公証人による保証意思確認手続】が新設されました。

 この手続では、保証人になろうとする方が公証役場に出向き、公証人による保証意思の確認がされた後、公証人が保証意思宣明公正証書を作成します。
 その際、公証人は、保証人が主債務の具体的な内容を理解しているか、保証契約のリスクを充分に理解した上で保証契約を締結する意思があるか等を確認します。

 アパートローンは「事業のために負担した貸金等債務」にあたるため、新たに保証契約を締結する場合には、公証人による保証意思確認手続がなければ契約は無効となります(民法465条の6)。しかし、主債務(アパートローン)が主債務者の死亡により相続人に包括承継された場合は、保証契約は包括承継された債務に対して有効であり、新たに保証契約を締結するものではないため、公証人による保証意思確認手続は不要となります。

 なお、ご相談の事例はお姉様がアパートローンを引き継がれるということですので、ご相談者様を含む他の相続人が法定相続分に応じて承継した債務について、お姉様が免責的債務引受をすると考えられます。

 免責的債務引受によりお姉様が負担することとなる債務に保証契約を移すことができますが、保証人であるご相談者様の書面による承諾が必要となります(民法472条の4)。この場合、新たな保証契約ではありませんので、公証人による保証意思確認手続は不要となります。

 公証人による保証意思確認手続が必要な場合かどうかの判断に迷われる場合は、弁護士や司法書士にご相談ください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
名義預金と指摘されないために

名義預金だと指摘されないためには、どのような点に注意したらよいですか?

Q
今月のご相談

 孫がこの春に就職します。
 お祝いとして孫名義の口座を作って、そこにいくらかのお金を振り込もうと思います。
 孫名義であっても、私の財産として相続税がかかってきてしまう話を聞いています。
 どのような点に注意すれば、そのような指摘を受けなくてすむのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談者様は、いわゆる「名義預金」といわれる財産となるのを懸念されていると思われます。このような名義預金と指摘されないためには、その預金がお孫様のものだということを明確にしておくことが大切です。どのような点に注意すべきかは、詳細解説をご参照ください。

A-2
詳細解説
1.被相続人名義以外の財産

 誰の名義かにかかわらず、被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象となります。
 例えば、被相続人の配偶者や子、孫などの名義の預貯金(いわゆる「名義預金」)や、株式、証券投資信託の受益証券などの財産であっても、被相続人が資金を捻出していたことや管理状況等から、被相続人の財産と認められるものは、被相続人の財産として、相続税の申告の際に含める必要があります。

2.名義預金と指摘されないために注意すべきポイント

 名義預金と指摘されないために注意すべきポイントを、3つご紹介します。

■通帳や印鑑、キャッシュカードなどの保管管理は誰が行っていますか?

 通常は、名義人本人が通帳、印鑑、カードなどを保管し、本人が必要とするときにいつでも解約、引出が可能です。

 一方、名義人本人ではなく亡くなった人が通帳等を保管しており、預金の引出などを亡くなった人が自由にできるような場合は、どうでしょう。これを名義人本人の財産だといえるでしょうか?

 このような場合で名義預金と認定されないためには、なぜ亡くなった人が子や孫名義の口座の通帳等を保管し、自由に使えるようにしていたのか、その口座へは誰のお金を入金したのか、などについて税務署が納得するような理由が必要です。

■亡くなった人の届出印と同一の届出印になっていませんか?

 名義人本人が口座開設を行った場合には、通常は自分の印鑑で届け出をします。もし亡くなった人と同一の印鑑で口座開設を行っていれば、印鑑は亡くなった人が管理し、預金の引出などを自由にできる状態であった、というように想定されます。

 したがって、なぜ同一の印鑑で届け出を行ったのか、その口座へは誰のお金を入金したのか、などについて税務署が納得するような理由が必要です。

■過去に贈与を受けた事実はありますか?

 贈与は、あげる側の「あげましょう」という意思ともらう側の「もらいましょう」という意思、両者の合意があって初めて成立します。もらう側がその事実を知らなければ、贈与は成立しません。

 名義人は、その預金口座の存在を知っていますか? 贈与税の申告は行われていますか?

 贈与を行う場合には、必ずもらう側(子や孫)へも通知しましょう。

 以上の点に注意していただきながら、お孫様に対する資金贈与をご検討いただければと思います。

 

 名義預金を含めた相続税に関する相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
国税庁HP「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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