お知らせ

 肌に感じる寒さよりも、懐の寒さが堪える今年の年末。
 「今年のボーナスこそは…」と、
 心待ちにしていた方も多かったはずなのに、
 物価高の穴埋めには足らずと「期待」はお預け。

 「蟻とキリギリス」のお話ではありませんが、
 豊かな時にも、無駄遣いせず「蓄え」の大切さを痛感させられます。
 くれぐれも、厳冬の歳末、懐が吹雪にならないようご用心!

 冷える日が続くと、本能的に体が温まる食べ物に、
 食欲を感じるようになっているのでしょうか。
 そんなわけで、体を心から暖めてくれる「鍋」料理が、
 定番になっているご家庭も多いはずです。

 鍋料理には欠かせない調味料といえばポン酢です。
 古くは関西地方で多く使われていた調味料だったそうですが、
 CM等でお馴染の、調味料メーカーのミツカンが積極的に宣伝を行ったことにより、
 全国的に使われるようになったそうです。

 酒粕を原料として醸造酢を作ったのは、ミツカンが最初なのです。
 驚くことに、ミツカンは酢作りを始める前は、造り酒屋を営んでおり、
 ミツカンの初代 中野又左衛門氏は、酒造りの規制が解かれるため、
 競争が激しくなると予想して新しい事業を模索していました。

 しかし、造り酒屋が「酢」を作るなんて、考えられないことでした。
 酒桶に酢酸菌が入ってしまうと、お酒が全部「酢」になってしまうからです。

 現在の握りずしの原型は、江戸から広まったとされる、早ずしです。
 それに使われていた酢は、高価で醸造に時間がかかる米酢だったのですが、
 又左衛門氏は、これを安価な粕酢に代えてもらうことで、
 寿司をもっと手軽に味わってもらえるのではないかと考えます。

 その目論見は、見事に的中し、握りずしのブームと共に、
 ミツカンの粕酢は欠かせないものとなっていったのです。
 初代から続くチャレンジ精神は、その後も絶えることなく現在に至っており、
 匂いの少ない納豆でヒットした
 「金のつぶ」を代表とする納豆事業に受け継がれています。

 反面、成功の影には、苦い経験も数多く残されています。
 明治中期、日本に入ってきたビールに強い関心を持った、
 四代目 又左衛門氏は、一気にビール醸造事業に傾倒していきます。
 独自ブランドの「カブトビール」は、
 全国5位のシェアを占めるまでになりますが、
 その後の統合政策により、事業としては終えることになります。

 70年代、外国から外食チェーンが入ってくるようになると、
 その先進性に着目し、ハンバーガーショップを展開するようになります。
 見よう見真似で、東京都内を中心に店舗を展開していったのですが、
 外国勢の力は強く競争が厳しくなるにつれ、
 10年後に事業撤退することになります。

 赤字であった事業が、少しずつ利益が上がるようになり、
 ようやく黒字に転換していった時の喜びは、経営の醍醐味といえるでしょう。
 そして、確実に利益を蓄えられるようになった時に、
 経営者が考えておくことは、「引当(ひきあて)」することです。

 「引当」とは、将来に発生するべき支出に対して、
 予め貯蓄等をして資金を残しておくことです。
 店舗や工場の設備の修繕や更新、従業員の増員や退職金など、
 数え上げると、何年かごとに発生する支出が結構あるはずです。

 黒字と思っていたけれど、「引当」を実行してみると、
 そうでもなかった場合もあるはずです。
 大切なのは、一時(短期)の利益ではなく、
 大きな周期で利益を出せているかどうかということなのです。

自筆証書遺言における財産目録の作成方法

今回は相談事例を通じて、手書き以外の財産目録作成の注意点について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 自筆証書遺言を作成する際に、財産目録を使用したいと考えています。作り方に関して、気を付けるべきことはありますか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 2019年の相続法改正により、手書きによらない財産目録が作成できるようになりました。この手書きによらない財産目録の作成あたっては、各葉(各ページ)に署名と押印を行う必要があります。

A-2
詳細解説
1.財産目録の作成方法

 従前から自筆証書遺言の作成の際に財産目録(財産の一覧表)が活用されること自体はありましたが、その際、自筆で作成しなければなりませんでした。しかし、2019年の相続法改正により、手書きでの作成を求められなくなりました(改正法第968条2項前段)。

 その結果として、財産目録の作成にあたっては、Excelシートの活用や第三者の代筆、(不動産であれば)登記事項証明書のうち不動産の特定に要する部分をキャプチャし印刷する等の方法を活用することが可能となりました。
 ただし、手書きによらない財産目録を作成するにあたっては、各葉(各ページ)に署名と押印を行う必要があります(同条同項後段)。

2.財産目録の修正方法について

 財産目録の加除変更にあたり、通常の自筆証書遺言と同様に、修正する箇所を指示した上で、これを変更した旨の付記・署名及び修正箇所への押印が必要となります(同条3項)。

 また、目録自体を差し替える場合には、旧目録の全葉に斜線を引き、各葉に押印の上、「目録〇ページ全部を削除」等と付記の上、署名します。他方、新目録には上記「1.財産目録の作成方法」のとおりに各葉に署名と押印をし、加除訂正による目録であることを明示するため、新しい目録の表題を「訂正目録」等として脇に押印し、さらにその欄外に「訂正目録を追加」等と付記しその脇に署名を行うといった方法が考えられます。

弊事務所の年末年始休業日をご案内します。
ご不便をおかけしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■ 年末年始休業日
 2023年12月29日(金)~2024年1月4日(木)

相続の放棄と相続税の計算

私が相続を放棄すると子供たちが相続人になるのですが、その方が相続税が少なく計算されますか?

Q
今月のご相談

 私には長男、長女、次女、三女の4人の子がいます。
 夫は15年前に亡くなり、その際には、跡継ぎである長男がほとんどの財産を相続しました。
 その長男が、先日亡くなりました。長男は独身で子供もおりません。私が相続人になるといわれましたが私も年老いていますので、今更財産を相続するのもどうかと思っております。
 相続人が多ければ多いほど相続税は安くなると聞いています。私が相続を放棄すると他の子供たちが相続することになりますが、子供たちが相続した方が相続税は少なくなりますか?(長男の財産は1億3,600万円です。)

A-1
ワンポイントアドバイス

 ご相談者様が相続を放棄されたとしても、その放棄がなかったものとして相続税を計算しますので、相続税は少なくなりません。

A-2
詳細解説
1.相続の順位

 相続に関するルールは、「民法」という法律に定められており、お亡くなりになった方(以下、被相続人)の財産を相続する方には、優先順位があります。まず優先的に相続できるのは、配偶者と子供(子供が先に亡くなっている場合には孫)です。子供や孫がいない場合には、配偶者と両親や祖父母、子供(孫)も両親(祖父母)もいない場合には、配偶者と兄弟姉妹が相続することとなります。

 両親はいるけれど「相続を放棄する」場合には、相続人は次の順位に繰り越され、被相続人の財産は兄弟姉妹が相続することとなります。

 つまりご相談の場合には、ご相談者様であるお母様が相続を放棄することによって、ご長男の財産は他のお子様3人が相続することとなります。

2.相続税の計算

 上記1.のとおり、相続は民法に従うことになりますが、相続税の計算は、相続税法に従って計算を行います。

 相続税法は「課税」を目的とした法律ですので、人によって課税が不公平になることのないように、同じ相続に関するルールでも一部、民法とは異なる特別なルールが設けられています。

 例えば、ご相談のようにお母様が相続を放棄したために、相続人が次の順位の方(兄弟姉妹)に移行した場合にも、この特別ルールが適用されます。

●相続の放棄があった場合の相続税法の特別ルール

  相続税法における取扱い
法定相続人の数 放棄がなかったものとした場合の法定相続人の数
法定相続分 放棄がなかったものとした場合の法定相続人の各法定相続分

 これら法定相続人の数や法定相続分は、相続税の計算過程において、基礎控除や生命保険の非課税金額、相続税の総額の計算などで使用します。

3.ご相談の場合

 ご長男の遺産総額を1億3,600万円として、お母様が相続を放棄した場合の概算の相続税額を試算してみましょう。

相続人 ご長女、ご次女、ご三女
遺産総額 1億3,600万円
法定相続人の数 1人(お母様)
基礎控除額 3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円
相続税の総額 1億3,600万円-3,600万円=1億円
1億円×1/1(お母様の法定相続分)×30%-700万円=2,300万円
相続税額の加算総額(※) 2,300万円×20%=460万円
概算の相続税額(合計額) 2,300万円+460万円=2,760万円
(※)配偶者、および一親等の血族、すなわち子(代襲相続人である孫を含み、代襲相続人ではない孫養子を除く。)および直系尊属(父母)以外の方が相続等した場合には、その人の相続税額が20%加算されます。
ご相談の例ではお母様の相続放棄後の相続人全員が加算対象者ですので、相続税の総額全額に20%が加算されます。
お母様が放棄せず相続した場合には、加算されません。

 民法上の相続人は3人ですが、相続税の計算上は1人となります。また、民法上の法定相続分は各人1/3ですが、相続税の総額を計算する上で用いる法定相続分は1/1となります。このように、民法上と相続税法上で一致しないケースがありますので、ご注意ください。

 相続や相続税に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

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