お知らせ

 土地の分割協議をするにあたり、何か注意しておいた方がよいことはありますか?

 父の名義で下の図のような土地(合計900㎡)を所有しております。この度父が亡くなり、この土地をどのように分割しようか相続人3名(A、B、C)で遺産分割協議中です。分割協議にあたり、何か注意しておいた方がよいことなど、アドバイスを頂けませんか?

 土地の相続税評価は、誰がどのように相続するかにより、評価額が大きく変わる場合があります。

 土地の評価は、1.地目ごと、2.利用単位ごと、3.取得者ごと、に1つの土地として評価することになっています。したがって、必ずしも地番ごと(1筆ごと)に評価することにはなりません。
 今回評価しなければならない土地について当てはめて考えてみますと、

  1. 地目ごと
     3筆ともに地目は宅地であるため、全体を1つの土地として評価します。
  2. 利用単位ごと
     3筆ともに空き地(未利用地)であるため、全体を1つの土地として評価します。
  3. 取得者ごと
     1人の相続人が3筆すべて相続する場合や3筆すべてを共有で相続する場合には、全体を1つの土地として評価します。

 21番地は相続人A、22番地は相続人B、23番地は相続人Cが相続する、という場合には、取得者ごとに相続することになっていますので、3筆を別々に評価します。

 そこで、全体で評価する場合と別々に評価する場合とで、評価額がどのように変わるのか次で計算してみましょう。

 上記の通り、評価額の差額が16,428,000円も生じる結果となりました。適用される税率が20%の場合では、300万円程度納付する相続税額に差額が生じます。

 ただし、利用の単位が同じ土地について取得者を分けて相続する場合には、その分割の合理性に配慮しなければなりません。例えば、下図のように高い路線価に面した部分のみをAが、その他をBが相続したような場合には、「不合理分割」と判定され、取得者ごとに別々に評価することは認められません。相続した部分が、それぞれ独立して有効利用可能かどうかが判断のポイントとなります。

 評価額の高い低いの判断のみでは分割協議はまとまりませんが、分割協議の内容によって納付する相続税額が大きく異なる結果となりますので、十分に検討する必要があるでしょう。


<まとめ>

  • 土地の評価は、地番ごとではなく利用の単位ごとに評価します。
  • 土地の取得の方法(取得者を分けるなど)を工夫すれば、評価額が大きく下がる可能性があります。
  • 不当に評価が下がるような不合理な分割をした場合には、その土地を取得者ごとに評価することは認められません。

<根拠条文> 財産評価基本通達7、7-2

 

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 平成29年の「地価公示価格」が発表されましたが、相続税などへの影響はあるのでしょうか?

 先日、平成29年の「地価公示価格」が発表されたというニュースをみました。全用途の平均で地価は2年連続上昇したとありましたが、相続税などへの影響はあるのでしょうか?

 全体的な地価の動向としては、三大都市圏では地価の上昇にやや一服感がみられる一方、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では三大都市圏を上回る上昇率を記録するなど、地価上昇は地方へ波及しています。そうはいっても、今回、41.3%の上昇率を記録した大阪・道頓堀を筆頭に大阪が全用途での上昇率トップ5を占めるなど、三大都市圏のもともと地価が高い場所がさらに上昇しているという傾向もありますので、7月に発表される相続税路線価についても、今回の地価公示の影響を受け、地価が大幅に上昇している地点の付近については相続税路線価も大幅に上昇し、相続税額にも影響を与える可能性があります。

 地価公示という制度は、地価公示法という法律に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示しているもので、主な役割としては以下のようなものがあります。

  • 一般の土地の取引に対して指標を与えること
  • 不動産鑑定の規準となること
  • 公共事業用地の取得価格算定の規準となること
  • 土地の相続税評価および固定資産税評価についての基準となること
  • 国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること  等

 上記にあるように、地価公示価格は相続税評価や固定資産税評価の基準になるとされています。相続税や贈与税の申告にあたっては一般的に路線価等(いわゆる相続税路線価)が用いられますが、相続税路線価は、地価公示価格の水準の80%程度で評価されており、その均衡化・適正化が図られています。なお、地価公示価格、相続税路線価ともに毎年1月1日が評価の基準日とされていますが、地価公示の発表は例年3月の中~下旬、相続税路線価の発表は例年7月初旬となっており時間差があります。

 今回の地価公示の概況をみてみましょう。全国平均では、全用途平均は2年連続の上昇となりました。用途別では、住宅地は昨年の下落から横ばいに転じました。商業地は2年連続の上昇となり、上昇基調を強めています。工業地は昨年の横ばいから上昇に転じました。三大都市圏をみると、住宅地は大阪圏が昨年の上昇から横ばいとなった以外、ほぼ前年並みの小幅な上昇を示しています。商業地は名古屋圏を除き上昇基調を強めています。工業地は総じて上昇基調を継続しています。地方圏をみると、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では全ての用途で三大都市圏を上回る上昇を示しています。地方圏のその他の地域においては全ての用途で下落幅が縮小しています。

 国土交通省では、住宅地・商業地の用途ごとに地価の動向と背景を下記のように分析していました。ご参考ください。

  • (住宅地)
     継続する低金利環境や、住宅ローン減税等の施策による需要の下支え効果もあって、地価は総じて底堅く推移している。
  • (商業地)
     外国人観光客の増加などによる店舗、ホテル需要の高まり、再開発事業等の進展による繁華性の向上、主要都市でのオフィス空室率の低下などによる収益性の向上を背景とし、不動産投資意欲は旺盛で、地価は総じて堅調に推移している。

 

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 財産債務調書に記載する生命保険の価額は、どのように算定すればよいのでしょうか。

 確定申告時、顧問税理士から「財産債務調書を提出する必要があるかもしれないので、財産の価額を確認して欲しい」と言われました。生命保険についても確認するように言われましたが、生命保険の価額はどのように算定すればよいでしょうか?

 ご相談の生命保険の価額、具体的には保険に関する権利の価額、定期金に関する権利の価額については、基本的にはその年の12月31日に生命保険を解約する場合に支払われることとなる解約返戻金の額とされています。ただし、保険会社等からその年の12月31日前の日において生命保険契約を解約する場合に支払われることとなる解約返戻金の額が分かる場合には、その解約返戻金の額を財産の価額として差し支えありません。

 国税庁は、財産債務調書の提出制度(FAQ)(平成28年11月)の中で、次のように記しています。

【保険に関する権利の価額】
Q 生命保険に加入していますが、この生命保険の価額はどのように算定すればよいのですか。
 なお、加入している生命保険契約は満期返戻金のあるものです。

(答)
 保険(共済を含む。)に関する権利の価額は、その年の12月31日にその生命保険契約を解約することとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額をその財産の価額とします(通達6の2-9(13)イ)。
 なお、加入している生命保険契約が、満期返戻金を定期金(年金形式)で受け取ることができる内容のものであっても同様の方法により価額を算定します。
(注)損害保険契約に関する権利の価額についても同様の方法で算定します。

 ただし、保険会社等から、その年中の12月31日前の日においてその生命保険契約を解約することとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額を入手している場合には、その額をその財産の価額として差し支えありません(通達6の2-9(13)イただし書)。

【定期金に関する権利の価額】
Q 生命保険契約に基づく定期金(年金)を受け取っていますが、その価額はどのように算定すればよいのですか。

(答)
 給付事由が発生している生命保険契約に基づく定期金についても、保険(共済を含む。)に関する権利の価額は、その年の12月31日にその生命保険契約を解約することとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額をその財産の価額とします(通達6の2-9(13)イ)。
(注)損害保険契約に関する権利の価額についても同様の方法で算定します。

 ただし、保険会社等から、その年中の12月31日前の日においてその生命保険契約を解約することとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額を入手している場合には、その額をその財産の価額として差し支えありません(通達6の2-9(13)イただし書)。


 解約返戻金の額は、契約されている生命保険会社の担当者、コールセンター、取扱代理店に照会することになります。保険会社によって照会に時間を要する場合があるようです。期日に余裕を持ってご照会なさるとよいでしょう。
 また、保険会社から契約者へ年1回定期的に送付される「ご契約内容のお知らせ」には、解約返戻金の額が記載されていない場合がありますので、ご注意ください。  また、保険契約者向けのサービスとして、インターネットから解約返戻金の照会ができる生命保険会社もありますが、利用には登録が必要です。登録方法等は、保険会社から送付される案内や保険会社ホームページ等でご確認ください。

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 今回は相談事例を通じて、遺言の修正や撤回についてご紹介します。

 

 私は以前、公正証書で遺言を作りました。財産の内容も変わったので、もう一度作り直したいと思っています。今回も必ず公正証書で作らなければならないのでしょうか。

 既にある遺言を作り直すときに、前回と同じ要式で作る必要はありません。以前作った公正証書による遺言を自筆証書遺言によって作り直すことも可能です。

 遺言を作り直すことにより撤回という効力が生じます。遺言を撤回する際に、撤回する遺言の全文又は一部を特定した上で、これを「撤回する」と明確に記載することが望ましいといえます。
 明確に「撤回する」という言葉を用いなくても、以前作成された遺言と内容の抵触する遺言がされていれば、抵触する部分について撤回したものとみなされますが、撤回の意思を明確にするためにも、いつ作った遺言を撤回するかを明確にした上で、新たな遺言を作ると良いでしょう。

 既に作成した遺言を全て撤回する方法だけでなく、一部を変更することも可能です。

【1】前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなします(民法1023条1項)。
【2】遺言と抵触する生前処分がされた場合には、抵触する部分について遺言を撤回したものとみなします(民法1023条2項)。

 複数の遺言の内容が抵触する場合には、後の日付の遺言が優先されます。もちろん、後の日付の遺言が有効なものでなければ、撤回の効力は生じません。また、日付の異なる複数の遺言があった場合に、それぞれ遺言の内容が抵触しなければ、すべての遺言が有効となります。

 遺言が残されていた場合、書いてある内容によって遺されたご家族が内容の解釈・判断に迷うケースがあります。大切なご家族のためにも、またきちんと希望を叶えるためにも、遺言作成時には専門家に相談することをお勧めします。

 

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 亡母名義の自宅を相続すると、相続税が安くなる特例が受けられると聞きました。どのような特例でしょうか?

 1人で暮らしていた母が亡くなりました。母が住んでいた母名義の自宅を相続すると、相続税が安くなる特例が受けられると聞きました。どのような特例でしょうか?

 ご相談の特例は、「小規模宅地等の減額特例」という制度です。
 この制度は、亡くなった方がお住まいだった居住用の土地等を、一定の要件に該当する相続人が相続した場合には、その土地の評価について330㎡までの部分について評価額を80%減額できる、という特例です。

 次の計算例で、減額できる評価額を計算してみましょう。

 次に、ご相談の場合におけるこの制度の適用可否について、次のフローチャートで確認してみましょう。

 ご相談のようなパターン以外でも、この特例を受けることができる場合があります。

 この特例は、要件を満たした土地等を、要件を満たした方が相続する場合に限り適用できます。誰がどの土地を相続するかによって、納める税金が大きく異なります。
 相続発生後に要件を満たすための手当てはできませんので、事前に専門家と相談・検討するなどをし、適用要件の実態を整えましょう。

 なお、居住用の土地以外に事業用等の土地についても、減額制度が設けられています。

<根拠条文> 措法69の4

 

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 引き継いだ家の相続登記をしていません。相続登記には相続税の申告のような期限がありますか?

 3年前に母が亡くなったとき兄弟で話し合い、当時母と同居していた私が母名義の家を引き継ぎ、そのまま現在に至ります。ただし、相続登記はしていません。相続登記には相続税の申告のような期限がありますか?

 相続登記を行うのに法令上の期限はありませんが、相続登記を行って権利を公に確定させると、その後の不動産の処分等の手続きはスムーズです。早めに相続登記を完了させることで、結果的に手続きが簡易になり、費用も抑えられます。

 法令上、相続税の申告は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に行う必要がありますが、相続登記に期限はありません。そのため、そのまま放置していても法令上の罰則などはありません。ただし相続登記を済ませておかないと、法的な地位がなく公に権利を証明できないため、仮に当時合意していたとしても、将来的に他の相続人等ともめる可能性があります。また、相続した不動産を売却したいときや、相続した不動産を担保に銀行等から融資を受ける場合などの際の手続きが進みません。

 その他、相続人が複数いる場合に不動産の相続登記をするには、遺産分割協議書が必要です。遺産分割協議書とは、相続人の間で遺産分割の協議をし、その内容を記した書類(実印押印、印鑑証明書添付)です。遺産分割協議書が作成されていなければ、不動産の相続登記ができないばかりか、口頭で遺産分割に同意した他の相続人が亡くなった場合、単独で不動産を取得するためには、さらにその相続人の協力が必要になります。

 例えば、長男と三男の同意の上、次男が親の家を引き継いだ場合です。この場合、兄弟で遺産分割協議書を作成しない間に、長男に相続が発生すると、次男が親の家を単独で所有するためのハードルが上がります。なぜなら次男は、兄の相続人及び弟と親の家を自分が引き継ぐ内容の遺産分割協議書を作成しなければ、その家を単独で相続することができなくなるからです。兄弟の子世代(2世)であれば、交流は図りやすく意思疎通がしやすいため、遺産分割協議がまとまる可能性は高いと思われますが、兄弟の子世代(2世)に相続が発生すると、孫世代(3世)の同意が必要になってきます。孫世代までとなると交流が図りづらく権利関係が複雑化し、遺産分割協議は一筋縄ではいかない可能性が高まります。

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 会社が契約していた生命保険を遺族が受け取ったとき、相続税はかかりますか。

 先月、夫が亡くなりました。その数週間後に夫が勤務していた会社から、会社で契約していた生命保険があるので請求手続きをお願いしたい、と連絡がありました。以下の契約内容による死亡保険金を配偶者である私が受け取った場合、相続税はかかりますか?

 <契約内容>
  ・保険種類:養老保険
  ・契約者、保険料負担者:会社 
  ・被保険者:夫
  ・死亡保険金受取人:被保険者の配偶者

 ご主人様が勤めていた会社が、この生命保険契約による死亡保険金を「退職手当金等として支給する」と定めている場合と、そうでない場合とで税の取扱いが異なります。

1.「退職手当金等として支給する」と定めている場合
 退職手当金等に該当し、みなし相続財産として相続税の対象になります。
 この保険金を相続人が受け取った場合には、退職手当金等に係る非課税措置(限度額=500万円×法定相続人の数)を適用することができます。この場合の相続人とは、相続を放棄した人や相続権を失った人は除かれます。ご相談者様がこれら相続人から除かれる人に該当しなければ、相続人として非課税措置を適用することができます。
            
2.上記以外の場合
 会社が契約して保険料を負担していても、被保険者の相続人その他の者が死亡保険金を受け取った場合、会社が負担した保険料は、被保険者である夫が負担していたものとして取扱われます。
 よって、夫が個人で契約していた生命保険と同じように 死亡保険金はみなし相続財産として、相続税の対象になります。
 この死亡保険金を相続人が受け取った場合は、上記の退職手当金等とは別の非課税措置として、死亡保険金の非課税措置(限度額=500万円×法定相続人の数)を適用することができます。
 この場合の相続人も上記1.と同様に、相続を放棄した人や相続権を失った人は除かれます。ご相談者様がこれら相続人から除かれる人に該当しなければ、相続人として非課税措置を適用することができます。

 なお、いずれの場合も実際に相続税が発生するか否かは、ご主人様の他の相続財産等を含めた総額で判断することになります。

 

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 今回は相談事例を通じて、戸籍が古くて発行されない場合の対応についてご紹介します。

 

 夫が亡くなりましたが、私達夫婦には子供がおらず、両親ともすでに亡くなっています。亡夫名義の土地の名義を変更しようとしたところ、亡夫の兄弟も相続人になるので、兄弟の戸籍等も必要になるといわれました。

 そこで市役所で戸籍を取得しようとしたところ、古い戸籍は発行されないとのことでした。戸籍が発行されない場合は、どうしたらよいでしょうか。

 被相続人に子がおらず、両親(祖父母も)死亡している場合は、兄弟姉妹が相続人になります(民法第889条)。

 この場合、相続人である兄弟姉妹を特定するために、不動産登記手続き等では、被相続人(亡夫)の出生から死亡までの戸籍・除籍謄本のほか、被相続人の両親についても出生から死亡までの戸籍・除籍謄本が必要となります。被相続人の兄弟姉妹ということは、被相続人の父母の子供を全て確認する必要があるからです。よって、場合によっては明治時代の戸籍などまで遡って取得する場合も多くあります。

 高齢の方の兄弟姉妹相続の場合に多いのですが、そのご両親の戸籍謄本について古い戸籍が取得できないことがあります。保存期間の満了や、戦争・火災等による滅失等で役所に保存されていない場合です。

 不動産登記(相続による所有権移転登記等)の場合、従来、そのような場合には、取得できる戸籍・除籍謄本のほかに、滅失等により除籍等の謄本を交付することができない旨の市町村長の証明書及び「他に相続人はいない」旨の相続人全員による証明書(印鑑証明書付)が必要でした。相続人全員による証明書とは、古い戸籍が取得できないために、被相続人の両親の子供(被相続人の兄弟)が他にいないことを証明することができず、その代替として、判明している相続人全員で、「他に相続人はいない」ことを法務局に対して申し述べるもので、不動産登記に特有の書類です。

 しかし、今般、相続人全員による証明書(印鑑証明書付)は不要となり、「滅失等による除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書があれば、相続登記は手続ができることとなりました(平成28年3月11日法務省民二第219号 通達)。これによって、疎遠の相続人に証明書にサイン押印もらうことや、遺産分割協議がまとまった後、さらに証明書にサイン押印をもらう手間や相続人のストレスが減り、よりスムーズに手続きができることとなります。

 

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 継続的な収入により金融資産が減らないとき、相続対策として良い方法はないでしょうか。

 不動産賃貸業を営んでいる父は、賃貸マンションや金融資産をそれなりに保有しています。そのため相続対策として、毎年子や孫へ現金贈与を行っていますが、不動産収入が継続的に入るため、金融資産が減りません。何か良い方法はありませんか。

 継続的に所有不動産からの収入が入ってくる方にとっては、現金贈与による対策は“焼け石に水”という場合があります。入ってくる不動産収入以上に贈与すれば、財産を減らしていくことはできますが、それでは贈与税の負担ばかりが大きくなります。そこで発想の転換をし、入ってくる不動産収入を減らすことを考えてみてはいかがでしょうか?
 収入を減らすといっても、入居者から頂く賃貸料を減らしたり、賃貸を止めたり、本当に入ってくる収入を減らしてしまっては本末転倒です。子や孫へ現金を贈与する代わりに、将来の不動産収入の元となる資産を贈与してしまうのです。

 具体例で見てみましょう。

 賃貸マンションを贈与しても、毎年現金700万円を贈与しても、毎年700万円というお金が子の懐に入るということに変わりありません。にも拘わらず、10年後にトータルで支払うべき税額で918万円もの差が生じる結果となりました。

 収入のある不動産を贈与するということは、その物件から将来的に生ずる収入を、無税で贈与できる、という効果をもたらします。
 また、子の方が適用される所得税率が低い場合には、所得税負担が軽減されることもあるでしょう。

 不動産収入の贈与のポイントは、該当不動産全てを贈与するのではなく「建物のみ贈与する」ということです。敷地も贈与を受けるとなると、贈与税が非常に高額になってしまいます。入居者から家賃を受け取るべき人は、建物の所有者です。従って、敷地の所有は父のまま無償(使用貸借)で借りれば良いのです。
 ただし、土地の評価に当たっては注意が必要です。賃貸マンションの敷地は、本来なら貸家建付地評価として評価額から一定額控除できます。しかし、「建物名義が子」、「土地名義が父」の場合で土地の使用対価が無償であれば使用貸借となり、敷地を評価する際には、原則として貸家建付地割合を控除することができません。

 また、賃貸マンションの建築に係る借入金の残債がある場合にも注意が必要です。賃貸マンションの贈与とともに借入金も引き継がせた場合には、負担付贈与に該当します。負担付贈与の場合には、受贈者は時価により贈与税課税され、また、贈与者は時価で譲渡したものとみなして譲渡所得税が課税されます。

 賃貸物件の贈与は、贈与から相続開始までの期間が長ければ長いほど、移転できる不動産収入が多くなり、贈与による効果が大きくなります。

 物件の利回り、敷地の相続税評価額、建物の取得に係る借入金の有無などを考慮し、的確な物件を選定することで、大きな税効果が期待できます。収益物件を所有されている方は、一度ご検討ください。

 

<まとめ>

  • 「建物名義が子」「土地名義が父」の場合で土地の使用対価が無償であれば、敷地の相続税評価は使用貸借として自用地評価となります。
    貸家建付地評価と自用地評価との差額による相続税への影響に注意しましょう。
  • 早期贈与で収入移転額をより大きくしましょう。
    少しでも多くの不動産収入を次世代に移転させることにより、より一層の税効果が期待できます。
  • 借入金の残債がない建物を選定しましょう。
    贈与とともに借入金も引き継がせる場合には負担付贈与となり、贈与税と所得税のどちらも課税される場合があります。

<根拠条文> 相法19、21の9~15、昭和48年11月1日付直資2-189

 

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賃貸マンションなど相続税対策についてお困りなら京都のシモヤマ会計事務所まで

相続税対策なら京都のシモヤマ会計事務所へ

名称 シモヤマ会計事務所(下山弘一税理士事務所)
所在地 〒604-8471 京都市中京区西ノ京中御門東町101
電話番号 075-813-4850
FAX 075-813-4851
URL http://e-komon.jp/
概要 賃貸マンションなど、相続税対策についてお悩みの際は京都のシモヤマ会計事務所までお問い合わせください。20年の豊富な実績でお客様をサポートいたします。相続税対策やクラウド会計については、相談無料のシモヤマ会計事務所へ。

 高圧線が土地の上空を通っていると、相続税評価額は低くなりますか。

 高圧線が相続する予定の土地(宅地)の上空を通っています。このような場合、相続税評価額は低くなるのでしょうか。

 ご相談のケースの土地が「高圧線下地」であれば、相続税評価額の計算上、「区分地上権に準ずる地役権」に該当し、一定の減額が認められています。

 一般に「特別高圧」(7000ボルト以上)の送電線の下に位置する土地を、「高圧線下地」といいます。この「高圧線下地」における土地の利用は、高圧線の電圧に応じて一定の建築制限が課されることから、土地の価値が下がることが一般的です。

 相続税の計算においても、その土地の評価額について一定の配慮があります。「高圧線下地」の場合、上空を高圧線が通っていることから、実質的には区分使用のために地役権を設定しているものとして、「区分地上権に準ずる地役権」に該当し、相続税・贈与税を計算する際に対象財産の価額評価基準として国税庁が定めている財産評価基本通達において、次のように評価方法が定められています。

27-5 区分地上権に準ずる地役権の価額は、その区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の自用地としての価額に、その区分地上権に準ずる地役権の設定契約の内容に応じた土地利用制限率を基とした割合(以下「区分地上権に準ずる地役権の割合」という。)を乗じて計算した金額によって評価する。  この場合において、区分地上権に準ずる地役権の割合は、次に掲げるその承役地に係る制限の内容の区分に従い、それぞれ次に掲げる割合とすることができるものとする。(平3課評2-4外追加、平6課評2-2外・平12課評2-4外改正)
(1) 家屋の建築が全くできない場合 100分の50又はその区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合にその承役地に適用される借地権割合のいずれか高い割合
(2) 家屋の構造、用途等に制限を受ける場合 100分の30

 

 ここで「区分地上権」とは、工作物を所有するため、他人の土地の地下または空間を上下の範囲を定めて使用できる権利(地上権)をいいます。この「区分地上権」は、工作物の所有目的に限られることや土地所有者にとって負担が大きいことから、地役権という権利で代替されることがあります。地役権とは、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利をいい、便益を供する側の土地を「承益地」、便益を受ける側の土地を「要益地」といいます。

 「区分地上権に準ずる地役権」は、登記されている場合とされていない場合があります。公図からも読み取れないため、住宅地図などで近くに鉄塔がないか、あった場合には鉄塔と鉄塔を結ぶ線が対象土地の上を通過していないかを机上で調べる必要があります。さらに、現地で上空を見渡して確認することも必要です。制限の内容などは地役権の設定登記や電力会社との契約を確認することになりますが、不明な場合は鉄塔に番号札が掲示されていますので、その番号に基づき電力会社に利用制限内容を問い合わせることになります。

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