お知らせ

 今回は相談事例を通じて、相続登記と建物滅失登記についてご紹介します

 

 何年も前に亡くなった祖父名義の古い建物があります。誰も住んでいないので、取り壊したいと思っていますが、取り壊す前に、相続人である私への名義変更をする必要がありますか。
 私の父も、祖父亡き後に亡くなっており、父の兄弟姉妹の中にもすでに亡くなった人がいるため、可能なら、名義変更せずに取り壊したいと考えています。

 2つの問題があります。

  • ①建物の所有者は誰か
      (建物を取り壊す権限を持つのは誰か)
  • ②名義変更(所有権移転登記)が必要か
      (名義変更しないと、取り壊せないか?また、滅失登記ができないか?)

①について

 亡祖父の財産について遺産分割協議が整っていれば、その方に所有権があります。所有権がある方が、建物を取り壊す権限を持ちます。

 ご質問の場合、質問者様が建物を取得する内容の遺産分割協議がされていれば、質問者様が所有者となりますので、取り壊すことは問題ありません。

 遺産分割協議がされていない場合は、法定相続人が法定相続分にて建物を共有している状態になります。この場合、そのうちの一人が勝手に建物を取り壊すことはできません。他の相続人が建物を取り壊すことを了承し、または、質問者様が取得することの遺産分割協議が整えば、質問者様が取り壊すことができます。

②について

 所有者が明らかになったとして、現在の所有者への名義変更(所有権移転登記)が必要かどうかは、別の話になります。

 建物の取り壊しは解体業者に依頼されると思いますが、解体業者も所有者でない方からは依頼をもらえませんので、なんらかの確認はされると思います。登記がされていない(名義変更していない)場合は、遺産分割協議などで確認できればよいかと思いますが、念のため解体業者にご確認下さい。

 また、取り壊した後に建物の滅失登記をしますが、このとき、登記名義が祖父名義のままの場合でも、滅失登記は可能です。(滅失登記の際には、戸籍等を添付して、申請人が名義人の相続人であることを証明することで足ります。)

 なお、被相続人の居住の用に供していた家屋及びその敷地に対し、空き家の譲渡所得税特別控除の適用をお考えの場合には、取り壊す家屋の登記名義の変更の要否について、弊事務所までお問い合わせ下さい。

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 相続の放棄があった場合でも、その放棄がなかったものとして相続税額を計算します。

 私には長男、長女、次女、三女の4人の子がいます。夫は15年前に亡くなりました。夫の相続の際には、跡継ぎである長男がほとんどの財産を相続しました。その長男が、先日亡くなりました。長男は独身で子供もおりません。私が相続人になるということですが、私も年老いていますので、今更財産を相続するのも、と思っております。私が相続を放棄すると、他の子供たちが相続することになると聞きました。子供たちが相続した場合、相続税はどうなりますか?(長男の財産は1億3,600万円です。)

 お母様が相続を放棄しなかったものとして、相続税を計算します。

 被相続人の財産を相続する方には、優先順位があります。まず優先的に相続できるのは、配偶者と子供(子供が先に亡くなっている場合には孫)です。子供や孫がいない場合には、配偶者と両親や祖父母、子供(孫)も両親(祖父母)もいない場合には、配偶者と兄弟姉妹が相続することとなります。
 両親はいるけれど、「相続放棄する。」と言う場合には、相続人は次の順位に繰り越され、被相続人の財産は兄弟姉妹が相続することとなります。
 つまりご質問の場合には、長男の財産は長女、次女、三女の3人が相続することとなります。
 
 これら相続に関するルールは、「民法」という法律に定められています。財産を相続する手続きは民法に従って行われますが、それにより発生する相続税は「相続税法」という別の法律に基づいて計算し、納税します。
 相続税法は「課税」を目的とした法律ですので、人によって課税が不公平になることのないように、同じ相続に関するルールでも一部、民法とは異なる特別なルールが設けられています。
 例えば、ご質問のようにお母さまが相続を放棄したために、相続人が次の順位の方(兄弟姉妹)に移行した場合にもこの特別ルールが適用されます。

 

 これら法定相続人の数や法定相続分は、相続税の計算過程において、基礎控除や生命保険の非課税金額、相続税の総額の計算などで使用します。

 ご質問の場合で、お母様が放棄した場合の相続税について確認してみましょう。

(*)相続税額の加算額
 配偶者、および一親等の血族、すなわち子(代襲相続人となった孫を含み、代襲相続人となっていない孫養子を除く。)および直系尊属(父母)以外の方が相続等した場合には、その人の相続税額が20%加算されます。
 ご質問の例ではお母様の相続放棄後の相続人全員が加算対象者ですので、相続税の総額全額に20%が加算されます。
 お母様が放棄せず相続した場合には、加算されません。

 民法上の相続人は3人ですが、相続税の計算上は1人。民法上の法定相続分は各人1/3ですが、相続税の総額を計算する上で用いる法定相続分は1/1となります。

<まとめ>

  • 相続税法上は、相続放棄をした人がいても放棄をしなかったものとして、法定相続人の数、法定相続分を計算します。
  • 民法上の法定相続人の人数と、相続税法上の法定相続人の人数は必ずしも一致しません。
  • 相続税法における特別なルールは、税金を計算する際のみに適用されるルールです。

<参考条文> 相続税法第15条、第16条

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 平成29年の相続税路線価の動向について紹介します。

 先日、平成29年の「路線価」が公表されたというニュースをみました。今年の結果の特徴を教えてください。

 全国の標準宅地の評価基準額の平均変動率は前年比0.4%のプラスとなり、都道府県別では、東京の一極集中が目立ち、日本社会の縮図が浮き彫りとなりました。以下、詳細解説にてご確認ください。

 「路線価」には、相続税路線価と固定資産路線価がありますが、一般にいう「路線価」は相続税路線価を指し、相続税や贈与税の算定の基準となるもので、国税庁が公表します。3月に国土交通省が発表した地価公示と同様、毎年1月1日時点における1平方メートルあたりの土地価格を示したもので、地価公示価格等を基として算定した価格の概ね80%を目安として評価されています。平成29年分の路線価は、平成29年1月1日から12月31日までに発生した相続・贈与に関わる相続税・贈与税の申告に利用されることになります。

 今回の路線価の概況をみてみましょう。全国の標準宅地の評価基準額の平均変動率は前年比0.4%のプラスとなりました。リーマンショック以降8年ぶりに0.2%の上昇となった前年に続き2年連続の上昇となり上昇幅が拡大しました。前年を上回ったのは東京都、大阪府、愛知県など13都道府県であり、昨年の14都府県から減少しました。一方、前年より下落した県は秋田県、愛媛県、三重県など32県であり、昨年の33県から減少しました。

 都道府県庁所在地の最高路線価をみると、27都市(昨年は25都市)が上昇しました。うち東京や横浜、大阪のほか、京都、神戸、札幌、仙台、広島、福岡、金沢の10都市の上昇率が10%超となりました。地点別の最高路線価地は、東京・銀座の文具店「鳩居堂」前が1平方メートルあたり4,032万円で、32年連続日本一となるとともに対前年比+26.0%と上昇率もトップとなりました。この価格はリーマンショック前の水準はもとより、バブル期(1992年に記録した過去最高額3,650万円)をも上回る水準です。東京・銀座に続く第2位は大阪・梅田の1,176万円(前年比+15.7%)、3位は横浜駅西口の904万円(同+15.7%)と続いていますが、大阪・梅田でも東京・銀座の3割弱の水準に留まっており、東京・銀座の突出ぶりが際立つ結果となっています。

 上記とは反対に、最高路線価が最も低かった都道府県庁所在地は鳥取の11万円であり、秋田の12万円が続いています。但し、鳥取は対前年比がプラスマイナス0%(昨年は-4.3%)と下げ止まったのに対し、秋田は対前年比-4.0%(昨年は-3.8%)と下落傾向が続いており、この傾向が続けば、秋田が鳥取を下回る可能性もありそうです。

 なお、東京・銀座の路線価は鳥取の路線価の約367倍ということになり、東京一極集中や、少子高齢化及び人口減に悩む地方といった日本社会の縮図が路線価を通して浮き彫りになっているともいえます。

 路線価については、下記の路線価図等閲覧のページで確認できます。

 平成29年分路線価図等閲覧
  http://www.rosenka.nta.go.jp/
 国税庁の発表資料(都道府県庁所在都市の最高路線価についても掲載)
  https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2017/rosenka/rosenka.pdf

 

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 会社が契約者となり生命保険に加入し、遺族に退職金を支払うことで遺族の相続税納税資金を確保できます。

 私は、現在60歳で会社を経営しており、代表取締役です。先日、取引金融機関の勧めで相続税のシミュレーションをしました。結果は、会社の土地建物、自社株が保有資産の割合で多くを占めていました。その影響から、相続税額は、現在保有している預貯金額を上回っていました。今後の会社の業績見通しは良く、自社株の評価額が上昇していくと、さらに相続税額が高くなるため、納税資金を確保する必要があるとアドバイス頂きました。
 そして、会社が契約者・受取人、被保険者は私となる契約で生命保険に加入し、相続発生時には、会社に支払われる死亡保険金を死亡退職金の原資として家族へ支払い、納税資金を確保するという提案を頂きました。
 金融機関からの提案内容について改めて教えてください。
 また、死亡退職金に相続税法上の非課税枠があると伺いましたが、どのような内容でしょうか?
 私には法定相続人が3名います。

 今回のご提案内容は、会社で保険契約を締結することが前提となっています。会社が契約者となり生命保険に加入し、遺族に退職金を支払うことで遺族の相続税納税資金を確保できます。

 国税庁のタックスアンサーには、非課税となる退職手当金等として、以下の記載があります。


 相続人が受け取った退職手当金等はその全額が相続税の対象となるわけではありません。
 全ての相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)が取得した退職手当金等を合計した額が、非課税限度額以下のときは課税されません。

 非課税限度額は次の式により計算した額です。

 500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

 なお、相続人以外の人が取得した退職手当金等には、非課税の適用はありません。

  1. (注)
  2. 法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。
  3. 法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

 法定相続人の数に含める養子の数の制限については、相続人の中に養子がいるときを参照してください。


 よって、法定相続人3名の場合は、死亡退職金の非課税限度額は、500万円×3名=1,500万円となります。

 ご提案内容は、会社で保険契約を締結することが前提となっています。
 会社が契約者・受取人となる契約に加入すると、保険金の受取りは会社となりますので、保険会社から直接ご遺族に保険金が支払われるわけではありません。
 ただし、保険金を受け取った会社が、これを死亡退職金の原資として、ご遺族へ支払うことはできます。そのため、ご遺族(相続人)は、死亡退職金を受取り、相続税の納税資金を確保することができます。
 また、会社が契約者・保険金受取人となって生命保険に加入する場合、保険種類によって、会社は保険料の全額または一部を法人税額の計算上損金に算入することができます。損金算入できると、会社は保険料を支払った年の利益を圧縮して、課税を繰り延べることもできます。
 ただし、相続対策は長期間になることも予想されますので、保険期間は終身もしくは長期になる契約をお勧めします。

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 今回は相談事例を通じて、父と祖父が共有している土地の相続についてご紹介します。

 

 私の父が亡くなり財産を調査したところ、父と祖父(父の父。前年以前にすでに死亡)と共有で所有している土地が発見されました。祖父には、複数の子供がいました。私を含む父の相続人、祖父の相続人全員の総意として「土地の名義をきれいにしたいので、土地の所有者を私にすべて統一したい」との考えがありますが、どのような手続きをとればよろしいのでしょうか。

 ご質問の件につきまして、土地の名義をご相談者様にする場合、お祖父様(以下「被相続人の父」といいます。)の土地の持分をお父様(以下「被相続人」といいます。)が取得し、その後、被相続人の土地の従前からの持分と合わせた土地の所有権をご相談者様が相続するという流れになります。

 この流れに必要な具体的な手続きは、ご質問を踏まえた事実関係に基づき、下記を前提とした場合、以下(1)~(3)となります。

<前提>
 ・被相続人と被相続人の父の2名共有の土地(以下「本件土地」といいます。)
 ・被相続人より前に被相続人の父が死亡
 ・被相続人の父の相続人は子(被相続人を含む)で被相続人以外の子は存命
 ・被相続人の父の配偶者は被相続人の父より前に死亡
 ・被相続人の相続人が複数名いる
 ・被相続人、被相続人の父の共有する本件土地について、共に遺言もなく遺産分割協議も現在までなされていない

<手続>
(1)被相続人の父の本件土地の持分について、被相続人の父の相続人全員により、本件土地持分を被相続人の所有とする遺産分割協議を行う。
(2)(1)の遺産分割協議により被相続人が取得した被相続人の父の持分と、被相続人が 従前から所有していた持分(つまり本件土地の所有権)について被相続人の相続人全員によりご相談者様を所有者とする遺産分割協議を行う。
(3)本件土地について(1)、(2)の遺産分割協議に基づき、ご相談者様を所有者とする相続登記をする。

 なお、前提が異なる場合は上記と異なる手続きになる場合があります。

 また、具体的な登記の手続きや登記必要書類は、実際の相続関係により異なりますので、具体的には司法書士までお問い合わせすることをお薦めいたします。

 

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 親の一部援助で住宅建築した場合、この援助部分はどのように取扱われますか?

 現在賃貸マンションに住んでいるのですが、祖父の所有している空き地があるので、そこにマイホームを建築しようと思っています。建築資金のうち、半分の1,500万円は父が援助してくれると言っています。残り1,500万円は、私が住宅ローンを組むことになります。両親が援助してくれた部分は、どのように取扱われますか?また、土地についてはどのようにすればよいのでしょうか?

 資金拠出と登記名義を同等にしないと、贈与の問題が生じます。また土地については、おじい様が住宅ローンの抵当権設定に承諾をして下さるようであれば、土地はおじい様名義のままでその上に質問者様名義で家屋を建築することが可能です。

 お父様が援助して下さる1,500万円の部分について、特段の手続きを取らない場合には、新築する建物は1,500万円相当(=1/2)をお父様の名義にて登記しなければなりません。不動産の登記をする場合には、資金の拠出額に応じた持分にて登記をしないと、「贈与」という問題が生じるからです。

 しかし一定の住宅を取得するための資金の贈与であれば、一定額までは非課税で贈与を受けることができ、この制度を利用すれば資金拠出と登記名義を同等にしなくても、贈与税の負担を軽減することができます。

 では、具体的にその制度の内容をご紹介します。

住宅取得等資金の贈与税の非課税制度

【贈与者】

  • 父、母、祖父、祖母など(直系尊属)

【受贈者】

  • 贈与年の1月1日において、20歳以上である子、孫で、その年の合計所得金額が2,000万円以下の者
  • *合計所得金額とは、給与所得(給与収入から給与所得控除額を控除した額)、不動産所得、事業所得(いずれも収入金額から経費、青色申告特別控除額を控除した額)などの合計額。

【贈与財産】

  • 受贈者の自宅の購入、建築又は増改築に充てるための資金
  • *その全額を、贈与の翌年3月15日までに住宅に充当。
      翌年3月15日までにその居宅に居住又はその後速やかに居住する予定。

【非課税限度額】

【取得家屋等の要件】

  • 登記床面積が50㎡以上240㎡以下
  • 建築後使用されたことのない住宅用家屋
  • 建築後使用されたことのある住宅用家屋で、築20年以内(一定の場合には25年以内)又は耐震基準を満たしている、など一定の要件を満たした家屋
  • その他、一定の要件を満たした増改築  など

【適用手続き】

  • 贈与税の申告期限内(贈与の翌年2月1日~3月15日)に、贈与税の申告書に特例の適用を受ける旨の記載及び添付書類を添付して提出
  • *期限内申告書を提出した場合に限り、適用可能

【その他】

  • 暦年課税の場合には基礎控除(110万円)、相続時精算課税制度の場合には特別控除(2,500万円)と併用可能
  • 相続開始前3年内贈与の加算の適用なし

 ご質問の場合で、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の適用を受けた場合には、 次のようになります。

<まとめ>

  • 不動産購入等にあたっては、資金の拠出割合に応じて、持分を登記しましょう。
  • 住宅取得等資金の贈与税の非課税特例の適用にあたっては、必ず期限内申告書の提出が必要です。
  • 住宅取得等資金の贈与税の非課税額については、3年内加算の適用を受けません。

<根拠条文> 租税特別措置法第70条の2

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2017年8月2日

夏期休業日のご案内

弊事務所の夏期休業日をご案内いたします。

ご不便をお掛けいたしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■休業期間
 2017年8月11日(金)~2017年8月15日(火)

 空き家を売却したときの特例について、適用するにあたり気をつけるべきポイントを教えてください。

 親が住んでいた古い空き家を相続で取得しました。調べたところ、空き家を売った時の特例として儲けのうち3,000万円まで税金がかからない制度があることがわかり、この制度を利用できそうなのですが、知り合いから「適用できないこともあるらしい」との話を聞きました。相続時期や建物の建築年月日などは制度を適用するための要件,に合致しているのですが、その他の適用要件で気をつけないといけないことがあるのでしょうか。

 適用するにあたって気をつけるべきポイントとして、たとえば被相続人が死亡直前にどこに住んでいたのか、があります。

○「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」の制度の概要

 この制度は、相続又は遺贈によって被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を売却したとき、一定の要件に当てはまるときは(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限る)、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる制度です。俗に「相続した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」、などとも言われています。
「被相続人居住用家屋」とは、下記3つの要件全て当てはまるものをいいます。

  1. 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築されたこと。
  2. 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
  3. 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

 この要件の中で、「主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物」とありますが、これは分かりやすく言い換えますと、「亡くなった方の生活の本拠であった不動産」となります、したがって、お亡くなりになる直前に、生活の本拠として施設等に入居していた場合には特例を受けることができない可能性があります。

 例えば被相続人が亡くなる一年前から老人ホームに入居し、住民票等も異動していると、自宅であった不動産は「生活の本拠」とはみなされず、特例を受けることができなくなる場合が挙げられます。

 この特例の適用を受けるために、確定申告時に「被相続人居住用家屋等確認申請書」を添付することになりますが、この申請書の添付書類に「被相続人の除票住民票の写し」が必要となり、この書類で生活の本拠であったかを判断されます。
建物の建築年月日や相続開始時期等が適用要件に合致していたとしても、「生活の本拠」であったことも、適用するための要件の一つです。ご留意ください。

 なお、上記以外にも「売買代金が1億円以下であること」や、「土地建物で売却する場合、一定の耐震基準を満たすものであること」、「建物を壊して土地のみの譲渡」でも適用が可能であることなど、様々な要件がありますので、適用に当たっては当事務所にご相談ください。

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 申込書は提出したものの、保険料はまだ支払っていない保険契約を取り消すことはできますか?

 3日前に、父(78歳)が銀行から生命保険を勧められ、家族の知らない間に契約申込書にサインをして提出しました。相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を確保するための保険、と担当者から説明を受けたそうですが、確認したところ、外貨建ての一時払終身保険で、為替変動があることも含め内容を理解していませんでした。
 父は既に、非課税枠のために加入している生命保険(円建て)があります。それを失念しており、担当者に言われるまま手続きを進めてしまったようです。

 あらためて家族で話し合い、父に確認したところ、契約する意向はないので取り消したいと言っています。今回、保険料はまだ支払っていませんが、既に契約申込書にサインをして提出しています。契約を取り消すことはできるのでしょうか?

 生命保険は、申込書を提出してすぐに契約が成立するわけではありません。

 通常、生命保険契約の成立には、一定の手続きが必要です。たとえば保険料の入金が必要な契約において、入金が未了であれば契約は成立していません。成立前であれば、速やかに取扱担当者に申し出ることで取り消すことができる可能性が高いです。

 生命保険契約の成立には、以下の手続きが必要です。

  • 生命保険契約申込書および付随する必要書類の提出
  • 健康状態の告知(診査)
    ※保険会社、商品によっては 告知(診査)が要らない場合もある
  • 初回保険料の入金
    ※キャッシュレス扱い等、入金前に成立する場合もある

 また、クーリング・オフ制度を適用できる場合もあります。一般的には「クーリング・オフに関する書面を受け取った日または申込日のいずれか遅い方から、その日を含めて8日以内であれば、書面により撤回できる」、とされています。ただし、保険会社によって規定が異なりますので、契約手続き時に渡される「注意喚起情報」「約款」に記載されている内容を確認する必要があります。

 他方、以下のような契約についてはクーリング・オフの対象外です。

  • 契約にあたって医師の診査を受けた場合
  • 保険契約が1年以内の契約

 上記のほか、契約者が自分で窓口に出向いて契約をした場合や、自ら指定した場所で契約をした場合なども対象外となります。

 告知(診査)が不要で簡易に契約手続きができる保険商品や、外貨建て商品において、高齢者が理解不十分なまま手続きを済ませ、後日、取り消したい等のトラブルに関する相談が増えています。無用なトラブルを避けるためにも、高齢者のご契約にあたっては提案内容の説明、契約手続きの際にご家族が同席されることをお勧めします。

 なお、生命保険のご契約に関するトラブル等の相談は、一般社団法人生命保険協会で公平中立に受け付けています。そちらの窓口も活用できますので、ご検討ください。

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 今回は相談事例を通じて、不在者財産管理人についてご紹介します。

 

 先日、母が他界しました。父は5年前にすでに亡くなっており、相続人は私と妹の2人だけです。母の相続財産は、自宅土地建物(評価額約2,000万円)と預貯金約2,000万円です。遺言書はありませんでした。私は以前から母の自宅に同居しており、今後もここに住み続けたいので、自宅土地建物は私が相続したいと思っています。不動産の登記名義を変更するには相続人全員による遺産分割協議が必要と聞きましたが、妹は10年程前から行方不明で連絡も取れず、協議をすることができません。どうしたらよいでしょうか?

 本件の場合、家庭裁判所に妹様の不在者財産管理人の選任を申立て、選任された管理人と遺産分割協議をすることができます。

 不在者財産管理人とは、不在者(妹様)に代わって財産を管理する人のことです。不在者が財産管理人を置いていない場合には、利害関係人は不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に請求することができます(民法25条)。
 本件では、妹様が行方不明のため遺産分割協議ができないという利害関係がありますから、選任の申立てをすることができます。不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、本人に代わって遺産分割協議をすることができます。

 不在者財産管理人には、利害関係のない親族等、または弁護士、司法書士等の専門家が選任されます。選任の申立て時に候補者を立てることができますが、必ずその候補者が選ばれるわけではありません。利害関係がある、財産が複雑、高額等の事情があれば専門家が選任される可能性が高いです。

 なお、専門家が選任された場合、毎月の報酬や、遺産分割協議に係る報酬等が発生します。これらの報酬は不在者の財産から支払われます。また、不在者財産管理人の職務は、遺産分割協議が整っても終わらず、不在者が見つかったとき、亡くなったとき、財産が無くなったとき等まで続く点に注意が必要です。

 

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