お知らせ

 被相続人が加入していた死亡保険金は受取人固有の財産であるため、相続放棄をした人も受け取ることができます。但し、相続財産として相続税の課税対象となります。

 先日、父が亡くなりました。父が加入していた生命保険があり、受取人は母と私(長男)となっていました。母は、 父の相続にあたり、相続放棄し父の財産をもらわない予定です。ただ、父の葬儀費用や母の今後の生活費に充てるため、生命保険だけは母も受け取りたいと考えています。母が保険金を受け取ることは可能でしょうか?

【契約内容】

契約者、被保険者=父、 
死亡保険金受取人=母、長男(受取割合 それぞれ1/2)  
保険種類=終身保険、 保険金額=1,000万円

 今回のケースでは、お母様は相続放棄をしても、死亡保険金500万円を受け取ることができます。注意点は、詳細解説でご確認ください。

 相続放棄とは、被相続人が亡くなった後に家庭裁判所に申し立てることにより、最初から相続人でなかったこととする方法です(民法939条)。相続の放棄をすると、預金や不動産といったプラスの財産を一切引き継ぐことができなくなると同時に、借金や保証人の地位といったマイナスの財産も引き継がなくてよくなります。

 では、なぜ相続放棄をした場合でも、死亡保険金を受け取れるのでしょうか?

 契約者と被保険者が同じ人の場合、死亡保険金は死亡した人の財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となります。そのため、たとえ相続を放棄したとしても、死亡保険金を受け取ることができるのです。今回のケースでは、お母様は相続放棄をしても、死亡保険金500万円を受け取ることができます。

 但し、以下のような注意点があります。

    • ①死亡保険金は、税法上「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。

 

  • ②相続を放棄した人は、生命保険金の非課税金額(※)の適用を受けることはできません。

※生命保険金の非課税金額とは
 相続税の計算において、生命保険は、「500万円×法定相続人の数」の額が非課税となります。 但し、相続人が保険金を受け取った場合に限ります。

 今回のケースの場合

  • ・お母様は、死亡保険金500万円を受け取ることはできますが、生命保険の非課税の適用はありません(但し、配偶者の税額軽減の規定は適用されます)。
  • ・ご長男様は、死亡保険金500万円を受け取り、かつ、生命保険金の非課税金額の適用を受けられます。

 生命保険金の非課税金額の計算をする際の法定相続人の数には、相続放棄した人も含めます。よって、500万円×2人(法定相続人:母・長男)=1,000万円が非課税金額となり、ご長男様は受け取った死亡保険金500万円全額が非課税となります。

<参考条文>
 相基通19の2-3

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 今回は相談事例を通じて、遺産分割協議が不成立の場合の対応方法についてご紹介します。

 父親が亡くなり、兄弟で遺産の分け方を決めようとしていたのですが、皆、感情的になるばかりで自分たちではどうにも話がまとまりません。どうすればよいのでしょうか。

 相続人間で遺産分割の協議が整わない場合には、家庭裁判所に分割を決めてもらうよう請求することができます。

 家庭裁判所での遺産分割手続きには、「遺産分割調停」と「遺産分割審判」の2種類があります。  

 遺産分割調停が話し合いによる相続人間の自主的な解決を目的とするものであるのに対し、遺産分割審判は、裁判により強制的に分け方を決めるものになります。  
 遺産分割を家庭裁判所に求める場合、その旨を申し立てる必要があります。どちらを申し立てるのかは自由とされていますが、審判を求めた場合でも裁判所の判断で調停を行うことができ、まずは調停をするというのが一般的です。また、裁判所の手続といっても遺産について調べてもらえる訳ではないので、どのような遺産があるのか等の資料は各共同相続人が用意します。  

 調停の手続は、調停委員と裁判官が相続人の話を聞き、対立する相続人に伝えるという形で話し合いを行っていきます。調停の中で話し合いがまとまれば、調停調書が作成されます。1回で終わるものもあれば、何回も回数を重ねて行われることもあり、調停がまとまらない場合には、遺産分割審判の手続に移り、裁判で決着をすることとなります。  

 調停調書にも確定した審判にも、確定判決と同じ「決まった内容を強制的に実現する」効力があります。そのため遺産分割調停でも遺産分割審判でも、自分の考える通りの結果になるとは限りませんが、自分の主張はしっかりとしていかなければなりません。  

 裁判所での手続と聞くと大変なことのように思えますが、遺産分割調停では調停委員の方や裁判官が相続人の間に入ってくれますので、直接話し合いをする必要がなくなり、ご質問者様の状況のように、皆様が感情的な状態よりは冷静に話し合いを進められると思われます。遺産分割協議が整わないなと感じたら、裁判所に関与してもらうことも解決法の一つです。

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 被相続人から相続開始前3年以内に受けた贈与財産は、贈与税の申告をして納税をしていた場合でも、相続税額の計算上、相続財産に加算することになります。

 父が平成28年12月25日に亡くなりました。父は資産が多く、将来の相続税を心配し、以下のとおり毎年贈与をしていました(注:暦年課税で申告)。相続が発生したときには父の財産は基礎控除額の範囲内(4100万円)でしたので、相続税の申告はしなくても大丈夫でしょうか。なお法定相続人は姉(私)と妹の2人です。

 結論から言うと、相続税の申告は必要となります。
 相続開始前3年以内に受けた贈与財産は、相続発生時に相続財産として相続税が課税されるからです。
  これは、亡くなる直前に生前贈与をすることにより、相続税が不当に軽減されることを防止するためです。

  次のケースで考えてみましょう。

 平成25年10月1日に生前贈与を受けた財産は、相続開始前3年超の財産ですので、相続財産に加算はされません。
 また、平成28年に生前贈与を受けた財産は、相続開始年分の贈与となり、贈与税は課税されません。  
 贈与税も支払い、相続対策として行ってきた生前贈与ですが、相続発生日(亡くなった日)から過去3年以内に贈与された財産は、相続財産に加算され、相続税の課税対象となってしまいます。
 今回のケースの、お父様の相続税の計算は以下のとおりとなります。

※贈与税控除額 
 被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受け、相続税の課税価格に加算されたものがある場合には、その加算された贈与財産に対して課税された贈与税額は、算出相続税額から控除します。

  • ①平成25年分 170,000×1,300,000/(1,500,000+1,300,000)=78,928円
  • ②平成26年分 90,000円
  • ③平成27年分 40,000円      合計:208,928円

 なお、今回のケースには当てはまりませんが、納付した贈与税額が相続税額よりも多い場合であっても、超過する部分の贈与税の返還を受けることはできません。また、加算税、延滞税、利子税の額も控除する贈与税額には含まれません。

 ただし、相続開始3年以内であっても、以下に掲げる財産は加算されません。

《加算されない贈与財産の範囲》(国税庁HPより)

 被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。

  • (1)贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
  • (2)直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • (3)直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • (4)直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

(注)暦年課税
 贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。今回は「暦年課税」により課税された生前贈与財産の加算について説明しています。 「暦年課税」は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた残りの額に対して税金を課するものです。1年間にもらった財産の合計額が110万円までの場合、贈与税はかかりません(申告不要)が、相続税の生前贈与加算の対象となります。

<まとめ>

  • ・相続などにより財産を取得した人が、その相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産には相続税が課税されます
  • ・贈与税の基礎控除内(110万円)でも、相続開始前3年以内に贈与を受けていれば相続財産に加算され、相続税の課税対象となります
  • ・贈与税の配偶者控除を受けている場合等、加算されない贈与財産もあります

<参考条文>
〈相法19 21の2~6 相令4 借法70の2 70の2の2~5 相基通19-1 19-2〉

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 ソシアルビルへの投資は市況の変化に適切に対応することが必要であるため、高い資金力や人脈、ノウハウが必要であり、初心者に勧められる投資とはいえないでしょう。

 相続対策として不動産投資を考えています。ある人から、「一般的な居住用のマンションやアパートへの投資は、不動産価格の上昇により利回りが低くなっていることから投資として旨みがない。ソシアルビルへの投資であれば、現在のような経済情勢の下でも比較的高い利回りを確保できる」としてソシアルビルへの投資を勧められています。ソシアルビルへの不動産投資に当たって注意すべき点を教えてください。

 ソシアルビルへの不動産投資は、ハイリスクハイリターンの投資であるといえます。初めて不動産投資をするような方が投資対象とするのは、あまりお勧めいたしません。

 ソシアルビル(別名:ソーシャルビル)とは、飲食店や居酒屋など複数の店舗テナントが入居するビル、いわゆる雑居ビルをいいます。特にスナックやバー、クラブなど水商売や風俗系などのテナントが入居する歓楽街にあるようなビルを指すことが多いようです。

 不動産投資に当たって、相続対策ということで、全額自己資金で不動産を購入できるだけの資金力があれば問題ないのですが、金融機関からの借り入れを併用して資金調達を行う場合、ソシアルビルについては、一般的な居住用のマンションやアパートと比べて融資を受けることが難しいケースが多いようです。特に風俗系のテナントが入居しているような物件については、融資に応じてくれる金融機関は一部ノンバンクなどを除きほとんどないと思われます。

 ソシアルビルは、権利関係が複雑なケースが多く、又貸しも当たり前のように行われていますし、賃料の滞納も居住用の不動産などに比べると多く発生します。したがって、投資される方自身で相当の時間を割いてビルの運営に当たるか、ソシアルビルの運営に長けた管理会社に管理を委託するなどしないと、早々に運営に行き詰まることになってしまうかもしれません。また、運営コストについても、ソシアルビルの場合、水道光熱費はオーナー負担であることが多く、エアコンなどの稼働時間も長くなりがちであることから、高額となることが多いようです。さらに、ソシアルビルの特性として、他の用途の不動産と比較して景気変動の影響を受けやすいという点も指摘されます。

 また、ビルの設備に不備があったことにより他人に損害を与えた場合には、所有者の責任が問われることがあります。2001年に44人もの死者を出した東京・新宿歌舞伎町のビル火災では、火災報知機や避難器具が実際には使用できない状態であったことから、ビルオーナーの責任が問われ、執行猶予付きの有罪判決を受けるとともに、民事上8億円以上の損害賠償金を支払うことになったとのことです。

 以上をまとめると、ソシアルビルへの不動産投資を行うためには、高い資金力が必要になるとともに、運営も独特の人脈やノウハウが必要となることから、初めて不動産投資をするような方が投資対象とするには相応しくないように思われます。一方、多額の資金を持ち、運営のノウハウがある方にとってソシアルビルは、他の用途と比べると相対的に高い利回りが確保できることから、まさにハイリスクハイリターンの投資であるといえるのではないでしょうか。

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 死亡保険金は相続税法上のみなし相続財産ですが、受取人固有の財産であり、分割対象の相続財産ではないことから、分割財産を超える額の代償金の交付は贈与となります。

 父が亡くなりました。遺産は、父名義の不動産(1億円)、相続人である次男が保険金受取人となっている生命保険(1億2000万円)、その他の財産8000万円です。
 相続人は長男(=今回の相談者)、次男、三男の三人です。
 相続人三人で分割協議をしたところ、次のようにまとまりそうです。

    •  ①長男:父名義の不動産1億円

 

    •  ②次男:死亡保険金1億2000万円、ここから三男に代償金2000万円を支払う

 

  •  ③三男:その他の財産8000万円、次男からの代償金2000万円

以上のように遺産分割した場合、課税関係はどうなるのでしょうか?

 上記遺産分割の場合、次男から三男への2000万円の代償金は贈与税の課税対象となります。

 ここで注意したいのは、死亡保険金は「遺産」ではなく、保険金受取人の「固有の財産」だということです。
 今回の遺産分割案で次男は生命保険のみを受取ることになり、父親の遺産を相続で取得していません。
 この場合、次男から三男への2000万円は代償分割ではなく、贈与に該当します。
 仮に、次男が父親から何らかの遺産を取得していれば、その取得した遺産相当額は贈与には該当しません。例えば500万円の遺産を取得していた場合、贈与税の対象となる金額は、
  2000万円(次男の固有財産)-500万円(遺産)=1500万円
となります。

<参考判例/抜粋>

~取得した保険金は相続財産か受取人固有の財産か~ (昭和48年6月29日・最高裁)

  •  保険金受取人を相続人と指定した契約は、特段の事情がない限り、被保険者死亡のときにおけるその相続人たるべきもののための契約であり、その保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺族から離脱したものと解すべきであることは、当裁判所の判例(昭和40年2月2日・最高裁判決)とするところであるから、本件保険契約についても、保険金請求権は、被相続人の固有財産に属するものといわなければならない。なお、本件保険契約が団体保険として締結されたものであっても、その法理に変わりはない。

~受取人固有の財産を、相続した積極財産の額を超えて代償金として交付した場合、その差額は贈与となるか~ (平成11年2月25日・東京地裁)

  •  代償債務のうち、・・・積極財産(※1)の額を超える部分は、現物をもってする分割に代える代償債務には該当せず、・・・新たに経済的利益を無償にて移転する趣旨でされたものというべきであり、・・・積極財産を超える部分については、・・・相続税の課税価格の算定に当たって、消極財産(※2)として控除すべきものではなく、・・・取得した代償債権の額は・・・贈与により取得したものというべき。

(※1)積極財産(権利)の例
 不動産、動産、貴金属類、現金、預貯金など、地上権、賃借権 などの権利
(※2)消極財産(義務)の例
 借金、連帯保証人債務、買掛金、ローン債務など

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 今回は相談事例を通じて、相続人不存在の場合の特別縁故者への財産分与についてご紹介します。

 私の実母は、私が3歳のときに亡くなりました。その後、私が7歳になる頃に父は再婚し、私は父とその再婚相手の方と一緒に暮らしていました。私は父の再婚相手の方を実の母のように思い、また、父の再婚相手の方も私を実の子のように思ってくれており、学校行事などにも母として参加してくれていました。
 5年ほど前、父が亡くなり、生活に困ることが無いよう、父の財産はすべて父の再婚相手の方が引き継ぐよう遺産分割協議を行いました。
 先般その父の再婚相手の方が亡くなったため、法律に詳しい友人に相談したところ、私と父の再婚相手の方で養子縁組をしていないので、私の相続権はないと言われてしまいました。友人の言うところでは、父の再婚相手の方に実子はなく、父母も死亡しており、兄弟姉妹はいないため、相続人不存在となり、相続財産は国庫に帰属してしまうとのことです。
 私と父の再婚相手の方は、7歳の頃から実の母子同然に暮らしてきました。養子縁組をし忘れただけで、父の相続財産を含めた相続財産が国庫に帰属することは納得がいきませんが、仕方がないのでしょうか。

 正確には、相続関係を証明する戸籍等を確認しなければなりませんが、お話を伺ったところ、お父様の再婚相手の方に相続人がいないことは間違いありません。また、最終的に相続人不存在で、残余の相続財産がある場合には、その残余の相続財産は国庫に帰属するよう法律で定められています。

 ただし、相続財産が国庫に帰属するまでには下記のように一定の手続きがあり、その手続きの中で、家庭裁判所が、相当と認める場合は「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」(これらの者を「特別縁故者」といいます。)の請求によって、特別縁故者に対して、清算(相続債務の弁済など、下記1~4の手続き)後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる(下記5)との、特別縁故者への財産分与の手続きが定められています。
 あなたは、お父様の再婚相手の方と幼い頃から母子同然に暮らしてきたとのことですので、この特別縁故者に該当する可能性があります。

 なお、この特別縁故者への財産分与は、家庭裁判所が職権で審判するため、必ず相続財産が分与されるとは限りませんが、一度、専門家へご相談することをおすすめします。

【相続人不存在による手続きの流れ】

    • 1.相続財産管理人の選任
       相続債権者などの利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所は管理人を選任する(民法952条1項)。

 

    • 2.管理人の公告
       家庭裁判所は管理人を選任した旨を掲示や官報で公告する(民法952条2項)。

 

    • 3.相続債権者・受遺者への公告
       上記2の公告期間(2ヶ月)経過後、管理人は、いっさいの相続債権者・受遺者に対し請求の申出をするよう公告し、知れたる債権者・受遺者へは各別に債権を申し出るよう通知する(民法957条)。

 

    • 4.相続人捜索への公告
       上記3の公告期間(2ヶ月以上)経過後、家庭裁判所は、管理人・検察官の請求により、相続人捜索の公告をする(民法958条)。

 

    • 5.特別縁故者への財産分与
       上記4の公告期間(6ヶ月以上)経過後、3ヶ月以内に特別縁故者からの請求があれば、相続債権者への清算後、残余すべき相続財産の全部または一部を特別縁故者へ分与できる(民法958条の3)。

 

  • 6.5によって処分されなかった相続財産は国庫に帰属する(民法959条)。
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 個人事業主の事業を引き継いだ場合でも、個人事業主の税務上の身分は引き継がれませんので、改めて種々の届出等の手続きが必要になります。

 先日、私と一緒に飲食店をやっていた父が亡くなりました。父が亡くなるまでは、事業主は父で、私は給料をもらっていました。今後は、私が事業主となり飲食店を続けていこうと思っていますが、事業主の変更にあたり税務署へはどのような手続きが必要になりますか?

 事業主の変更にあたっては、前事業主は「個人事業の廃業届」を、新事業主は「個人事業の開業届」を提出することとなります。また、各種届出等(青色申告など)の効力は、お父様からあなたへ自動的には引き継がれませんので、これらの制度を利用したい場合には、それぞれ改めて届出書等を提出する必要があります。
 これらの制度の適用を受けるためには、提出期限までに届出書等を提出する必要がありますが、相続によって事業を引き継ぐ場合には、これら書類の提出期限が通常の場合と異なりますので、注意が必要です。

 以下に、事業を引き継いだ際に提出が必要となる主な書類とそれぞれの提出期限をまとめました。

【所得税青色申告承認申請書】
 相続人が、所得税の申告を青色申告で行いたい場合には、青色申告承認申請書の提出が必要です。

【消費税の課税事業者選択届出書】
 相続人に消費税の納税義務がない場合であっても、事業継承後消費税の課税事業者となりたいときには、消費税の課税事業者選択届出書の提出が必要です。

【消費税簡易課税制度選択届出書】
 事業承継後消費税の課税事業者となる相続人が、簡易課税制度により消費税を計算したい場合には、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。

<まとめ>

  • ・被相続人が税務署へ提出している各種届出等の効力は、相続により相続人へは引き継がれませんので、相続人にて改めて手続きが必要です。上記の他、給与支払いがある場合には、源泉所得税の納期の特例、青色専従者給与に関する届出書などがあります。
  • ・相続による事業承継の場合には、各種届出等の提出期限について特例が設けられています。
  • ・12月に入ってから相続が発生した場合などは、税務署長へ申請することにより、提出期限を延長することが可能です。

 事業承継にあたり適正に手続きをするためには、相続の発生日、被相続人の届出状況、相続人の事業の状況等について入念に状況把握を行うことが大切です。

<参考条文> 
 所得税法第125条、144条、166条、消費税法第9条第4項、第37条第1項、消費税法施行規則第11条第1項、第17条第1項、消費税基本通達1-4-16、1-4-17、13-1-5の2

 

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弊事務所の年末年始休業日をご案内いたします。

ご不便をお掛けいたしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

■年末年始休業日
 2017年12月29日(金)~2018年1月4日(木)

 相続人が隣接地問題を回避するためには、隣接地との境界を確定し使用について隣接地の所有者と合意しておくことが重要です。

 自宅の土地は隣接地との境界が不明であり、建物の一部が隣接地に越境している可能性があります。隣接地の方とは、挨拶を交わすなど関係は良好で、今のところ撤去を求められることはありません。しかし、知人から相続などが原因で所有者が変更となった場合に、越境している部分について撤去を求められることや、境界が確定できないことにより、相続人が自宅を売却できなくなることもあると聞いてしまい、相続人が争いに巻き込まれるのではないか心配です。現時点でできる対策を教えてください。

 土地の境界が不明とのことですので、まずは土地家屋調査士に境界確定測量を依頼し、土地の境界をはっきりさせることが必要です。

 境界確定測量とは、測量をして面積を求めるのと同時に、隣接地の土地所有者が立ち合いを行い、境界を確定させることをいいます。隣接地は、民有地(民民査定)だけでなく、公道や水路、公園などの公有地(官民査定)を含みます。測量には現況測量といわれるものがありますが、現況測量は、所有者の指示した地点により測量を行うものであり、主に面積を測ることを目的としています。そのため、隣接地所有者の立ち合いを求めませんので、現況測量のみで境界を確定させることはできません。
 境界確定測量を行うことで、登記簿に記載されている面積との違いが分かります。また、隣接地との境界が確定しますので、越境関係についても把握することができます。
 塀や雨どいなどの一部が相手側に越境している場合は、隣接地所有者との間で越境に関する覚書を交わすことにより争いを防ぎます。

 越境に関する覚書は、境界についてお互いで確定し、越境している部分については現状のまま利用することは容認し、将来、現在の建物や構築物などの建て替えなどをするときに、境界をお互いに順守し、再建築、再構築を行うという内容になります。また、相続や譲渡などにより、所有者が変更となる場合も、覚書の内容をお互いに引き継ぐことを記載します。

 境界確定測量を行い、境界を確定させることと、越境部分が発覚した場合は、越境についての覚書を取り交わしておけば、相続人や譲受人も、確定した境界や覚書の内容を引き継ぐことになりますので、次世代の方が争いに巻き込まれることが避けられます。

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 生命保険の契約では、契約者の意向を十分に把握し、長期のスタンスで提案してくれる窓口を選ぶことが重要です。

 会社を経営している関係で取引銀行や証券会社からも生命保険を勧められることがあります。
 これまで生命保険は知り合いの代理店で契約していましたが、今回、銀行の担当者から相続対策として「銀行専用の商品で、生命保険代理店では取り扱っていない」という商品を提案されました。窓口によって商品や手数料に違いがあるのでしょうか?

 契約窓口によって取り扱っている商品に違いはありますが、値引き等は法で禁止されていますので、同じ保険商品で契約者の負担が異なることはありません。生命保険は長期にわたる契約ですので、中立的な立場の専門家から総合的なアドバイスをもらい、じっくり検討されるとよいでしょう。

 生命保険を契約する窓口と主な特徴は 次のとおりです。

    • 1.生命保険会社
       営業社員(ライフプランナーと呼ぶ会社も多い)
        自社商品のみ取り扱う

 

    • 2.生命保険代理店保険
       販売を専業とする専業代理店(プロ代理店)の他、損保代理店やコンサルティング業、その他税理士や社労士などの事業者が生命保険代理店業を営んでいる副業代理店がある。
       ①乗り合い代理店
        複数の保険会社の商品を取り扱う
       ②専属代理店
        1つの保険会社の商品のみ専属契約で取り扱う

 

    • 3.銀行・証券会社などの金融機関の窓口販売
       取り扱う保険会社、商品は銀行、証券会社等により異なる

 

  • 4.通販(広告、インターネット)
     通販商品として認可された商品に限定されている

     最近増えてきた来店型の保険ショップは2.①に該当します。

     3.で取り扱う商品の中には今回、銀行の営業の方がおっしゃるとおり、銀行等の金融機関専用として設定されているものが多くあります。

     生命保険会社によって商品の特徴や保険料に差がありますので、複数の会社の商品を比較することが大切ですが、1.の営業担当者から提案をうけ検討される場合、他社商品の情報を収集するには他の窓口に依頼することになります。2.①で複数の生命保険会社と代理店契約をしている場合でも、代理店によって取扱い保険会社が異なっていますので、どの生命保険会社と代理店契約をしているか、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

     また、生命保険では、保険会社が契約時期や商品ごとにあらかじめ事務費などの事業費率を見込んで保険料を決めていますので、加入時に契約者が直接負担する手数料は発生しません。よって、窓口によって契約者の負担が異なることはありません。募集にあたって、特別な利益を提供すること、保険料の値引き等が法令で禁じられていますので、値引きで差が出ることもありません。

     生命保険は、長期にわたる契約ですので、加入窓口を決めるに際しては、
    ・契約者の意向を十分に把握し、長期のスタンスで多くの選択肢を前提に提案してもらっているか?
    ・後々、相談やメンテナンスなど、アフターフォローをしっかり行ってもらえるか? 不都合が生じないか?
    という点に重きをおいて、中立的な立場の専門家にアドバイスをもらいながら、じっくり検討されることをお勧めします。

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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