お知らせ

 相続した建物が未登記のようです。そのままにしておくことで問題はありますか?

 相続した実家の建物が登記されていないことが分かりました。建物が登記されていない理由は何が考えられるのでしょうか。また、そのまま登記しない場合、何か問題はありますか?

 建物の未登記の要因としては、“登記は任意である”と誤った認識をお持ちであった、という可能性が考えられます。また、未登記の状態であると、法律上の問題の他、第三者への対抗などでデメリットが生じると考えます。

1.建物の未登記

 建物を建築等した場合には、主に以下①→②の順に登記を行います。①建物表題登記:建物の構造・床面積等の物理的状況を明らかにする登記②所有権保存登記:所有権の登記のない不動産について、最初に行う所有権の登記

 ①は、不動産登記法により、その建物の所有権を取得してから1ヶ月以内に登記を行わなければならないと定められており、登記を行う必要があります。
 他方、②は、①のように義務ではなく任意となりますが、住宅ローンを利用する場合は、金融機関が当該建物に抵当権を設定するため、②の登記が必須となります。

 したがって、建物が未登記の理由の一つとしては、住宅ローンを利用せず建物を建築したため、②の登記が任意となり、①の登記も行う必要がないといった誤った認識のもと、未登記の状態になっていることが考えられます。実際、未登記建物は数多く存在します。

 なお、登記されていない建物は、「未登記建物」といわれています。2.未登記建物であることでの問題点(1)法律上の問題

 未登記建物であることの問題については、法律上の義務である上記1.①の建物表題登記がなされていない、厳密にいえば罰則が科せられる可能性がある状態であることとなります。
 また、相続による所有権の移転登記や住所変更登記に関しては、法律で義務付けられる改正がなされています。その点もあわせてご注意ください。(2)第三者への対抗

 未登記建物であると、その建物の所有について第三者へ主張することが困難です。(3)税務上の問題

 建物が未登記であるということは、その建物が建っている敷地部分に建物がない状態で固定資産税が課税されている可能性が考えられます。
 通常、土地の上に住宅が建っている場合の当該土地に係る固定資産税は、更地である状態よりも軽減措置が設けられています。3.未登記建物の登記手続き

 相続した未登記建物を第三者へ売却する際、上記1.①及び②の登記が必須となります。将来の売却を予定されている場合は、予め登記しておくとよいでしょう。なお、上記1.①には、登録免許税は課税されませんが、上記1.②の登記には課税(固定資産税評価額の4%)されますので、ご注意ください。

 また、この登記手続きは、通常、土地家屋調査士もしくは司法書士(以下、専門家)に依頼しますが、ご自身で行うことも可能です。なお、専門家に依頼される場合は、建築当時等の設計図面があれば、費用を軽減できる可能性がありますので、設計図面の有無について、事前に確認されるとよいでしょう。

 建物全体が未登記であることの他、増築や改築部分が登記されていないこともあります。建物が登記されている場合でも、建築当時の設計図面があれば、現状と比較し、増築や改築による未登記部分が生じていないか確認されるとよいでしょう。

 未登記建物を相続された場合は、専門家に相談の上、適切に対処されることをお勧めします。
 相続に関するご相談は、お気軽に当事務所へお問合せください。※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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 姪を生命保険の死亡保険金受取人としたいのですが、可能でしょうか。何か問題があれば教えてください

 近所に住んでいる姪(以下、Aさん)に、日頃から私の生活の介助をしてもらっています。私が死んだ後にお礼の意味も込めて、私が自らを被保険者として掛けている生命保険の受取人になってもらおうと思うのですが、可能でしょうか。可能であれば、この生命保険の受取人を子から変更をしようと思います。何か問題があれば教えてください。【生命保険の契約内容】

  • 契約者(保険料負担者):私
  • 被保険者:私
  • 死亡保険金受取人:子

 ご相談者の“姪”であるAさんを、受取人とすることは可能ですので変更できるかと思いますが、念のため契約されている生命保険会社へ事前に問い合わせていただくとよいでしょう。なお、ご相談者の相続時には、この生命保険金は相続財産とみなされて相続税の課税対象となります。その際に、仮にお子さん等が存命であれば、Aさんはご相談者の養子でなければ相続人にはなれませんので、この生命保険金に係る非課税の適用を受けることができません。また、受取人変更に伴うトラブルにもご注意ください。

1.保険金の受取人

 保険金の受取人となることができるのは、保険会社によって異なりますが、「被保険者の戸籍上の配偶者および二親等内の血族」の範囲内と定められていることが一般的です。具体的には、被保険者からみて、祖父母、父母、子、兄弟姉妹、孫が該当します。ご相談のケースでは、受取人としたいAさんが被保険者であるご相談者からみて姪の立場であることから、受取人となることは可能だと考えます。

 この受取人の指定は、加入時に契約者が行いますが、契約後も被保険者の同意を得て途中で変更することが可能です。

 したがって、ご相談のケースでは受取人の変更も可能かと思われますが、念のため、契約された保険会社へ事前にお問合わせいただくとよいでしょう。

 なお、保険会社によっては、個別事情の詳細を報告することで、内縁関係にある者、婚約者、共同経営者等の指定を認める場合もあります。上述の範囲外の人を指定したい場合は、個別に保険会社や取扱代理店などに確認が必要です。2.税務上の取扱い

 受取人を指定・変更する際は、受取人を誰にするかで税務上の取扱いが変わることもあるため、注意が必要です。

 例えば、契約者=保険料負担者=被保険者=被相続人の契約において、死亡保険金受取人が相続人の場合、受け取った死亡保険金は、相続税の計算上、死亡保険金の非課税(500万円×法定相続人の数)を適用できます。他方、受取人が相続人以外の場合は、死亡保険金の非課税を適用することができません。

 ご相談のケースでは、お子さんがいらっしゃるようですので、仮にお子さんが存命である中で相続が発生した場合には、Aさんがご相談者の養子にならなければ相続人となることはできません。仮にAさんが相続人とならなければ、上記の非課税は適用できないことにご注意ください。

 なお、受取人を変更されるのであれば、変更後の受取人となるAさんへの事前説明や、今回の生命保険についてお子さんが受取人だと知っている場合には、お子さんへの説明も同時にご検討いただくとよいでしょう。特に、死亡保険金は相続税の課税財産となるため、相続税を計算する上で加算しなければならず、他の相続人にも当然知られます。そうなることによって、親族間でのトラブルに発展する可能性も考えられるため、受取人の変更は慎重に検討されることをお勧めします。

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 今回は相談事例を通じて、特別寄与料の制度についてご紹介します。

先日、義理の母が亡くなりました。私は、だいぶ前に夫を亡くしていますが、夫の存命中から夫の母と住んでいましたので、夫の死後も夫の母の世話をしており、亡くなる前の10年程は介護をしていました。
 夫の父は既に死亡しており、義理の母の相続人は、夫の妹だけです。離れて住んでいたので仕方ないかもしれませんが、夫の妹は母の介護を私に任せきりにしていました。夫の妹が母の遺産を全て相続することになると思いますが、あまりに不公平な気がしています。私が義理の母の遺産を少しでも分けてもらう方法はないでしょうか。

本件では、相談者は、亡くなった義理の母の相続人である夫の妹に対し、特別寄与料の支払いを請求することが考えられます。


特別寄与料の制度
 特別寄与料の制度とは、相続人以外の親族が、亡くなった方(被相続人)に対して、無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたときに、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求することができる制度(民法1050条)です。
 相続人が、遺産分割手続の中で、特別の寄与(寄与分)を主張することは従前より可能でしたが(同法904条の2①)、2019年(令和元年)7月1日施行の民法改正により、相続人以外のものからの同様の請求を認めたのが本制度であり、2019年(令和元年)7月1日以降に、被相続人が死亡したケースにおいて請求することができます。

趣旨及び要件
  特別寄与料の制度趣旨は、被相続人の推定的意思や関係者間の実質的公平を図る点にあるとされており、特別寄与料の請求が認められるには、

  1. ①「無償で」労務提供をしたこと、
  2. ②療養看護その他の労務提供により、被相続人の財産の維持又は増加について「特別の寄与」をしたこと

が必要とされています。
 従前の寄与分における特別の寄与が認められるためには、相続人が扶養義務を負っていることに鑑み、身分関係に基づいて通常期待される程度の貢献(通常の寄与)を超える高度なものが要求されるのに対し、特別寄与料における特別の寄与は、通常の寄与との対比ではなく、貢献の程度が一定程度を超えることを要求する趣旨であると考えられています。

請求の方法
 特別寄与料の支払いについては、原則として、当事者間の協議によることが予定されていますが、その協議が調わない場合または協議をすることができない場合には、特別寄与者は家庭裁判所に特別寄与料の調停、審判を求めることができます(同法1050条2項本文、調停前置とされている)。この場合、必ずしも相続人全員を相手方とする必要はなく、各相続人に対し、法定相続分又は遺言により相続分の指定がある場合には指定相続分に従った金額を請求することができます(同条5項)。
 また、基本となる被相続人の遺産分割の調停・審判事件が家庭裁判所に係属している場合は、併合されることが多くなるのではといわれています(必要的併合ではない)。

期間制限
 特別寄与料の制度の創設により、相続をめぐる紛争が長期化、複雑化することが懸念されることから、請求権者は親族に限定されるとともに(事実婚や同性のパートナーは対象外)、特別寄与者が「相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したとき」は、特別寄与料の請求はできないとされていることに注意が必要です(同条2項但書)。

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 相続税を計算する上で、配偶者居住権はどう評価するのでしょうか?

 2020年4月1日より、主人が亡くなってもマイホームに住み続ける権利(いわゆる「配偶者居住権」)を相続できると聞いています。この配偶者居住権は相続税が課税されると聞きました。具体的にどのように評価するのでしょうか?

 相続税を計算する上での配偶者居住権は、居住建物の所有権部分の「配偶者居住権存続期間終了時の価額(将来価値)」を求め、それを現在価値に割り戻し、居住建物の時価からその割り戻した所有権部分の価額を控除した金額により評価します。

1.配偶者居住権とは

 配偶者居住権とは、被相続人の所有する建物に相続開始時点で配偶者が居住していた場合に、相続後も配偶者がそのままその建物に無償で住み続けることができる権利です。

 配偶者は、遺産分割協議や遺言(相続又は遺贈、以下、相続等)によって、配偶者居住権を取得することができます。2.配偶者居住権の評価の考え方

 国税庁から公表されている「「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」について(情報)」によれば、配偶者居住権の評価の考え方として、以下の記述があります。

居住建物の所有者は、配偶者居住権存続期間終了時に居住建物を自由に使用収益することができる状態に復帰することとなります。この点に着目し、配偶者居住権の価額は、居住建物の所有権部分の「配偶者居住権存続期間終了時の価額(将来価値)」を求め、それを現在価値に割り戻し、居住建物の時価からその割り戻した所有権部分の価額を控除した金額により評価します。

具体的には、

  • ① 配偶者居住権存続期間終了時の居住建物の時価を減価償却に類する方法を用いて計算する
  • ② ①で計算した配偶者居住権存続期間終了時の居住建物の時価を法定利率による複利現価率を用いて現在価値に割り戻す(所有権部分の将来価値を現在価値に割り戻した価額を求める)
  • ③ 居住建物の時価から②で求めた価額を控除

して配偶者居住権の価額を求めようとするものです。

 また、イメージ図は以下のとおりです。

出典:国税庁「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」について(情報)」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/200701/01.htm3.配偶者居住権の評価方法

 上記2を踏まえた、配偶者居住権の価額は、次の算式により評価することとされています。

 この場合の居住用建物の時価とは、相続税法第22条に規定する時価を指すため、一般的には“相続税評価額”となります。そのため、一部賃貸用としている場合などは別途評価が必要となりますので、ご注意ください。

 また、耐用年数、経過年数、存続年数については、それぞれ以下のとおりです。

  • 耐用年数…耐用年数省令に定める住宅用の耐用年数を 1.5倍したもの
  • 経過年数…居住建物が建築された日(新築時)から配偶者居住権が設定された時までの年数
  • 存続年数…配偶者居住権が存続する年数として政令で定める年数(例.存続期間が終身の場合は、配偶者居住権設定時の配偶者の平均余命)

 なお、配偶者居住権の実際の評価については、上記の他、様々な留意点があります。配偶者居住権の評価を含めた相続に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問合せください。

<参考>
 国税庁「配偶者居住権等の評価に関する質疑応答事例」について(情報)」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/200701/01.htmなど
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2021年8月4日

夏季休業日のご案内

弊事務所では、下記期間を休業とさせて頂きますのでご案内いたします。

休業期間中は何かとご迷惑をお掛けすることと存じますが、
何卒よろしくお願い申し上げます。

■夏季休業日 8月14日(土)~8月18日(水)

 評価替えの年なのに、建物の固定資産税評価額が下がらないのはなぜですか?

 令和3年度は、固定資産税評価額の評価替えの年度ですが、建物(鉄筋コンクリート造の賃貸マンション)の固定資産税評価額が下がっていません。建物は経年により価値が減少していくのに、なぜ固定資産税評価額が同額なのでしょうか?

 通常であれば、経年劣化等により固定資産税評価額が減少すべき建物ですが、令和3年度については、物価上昇を背景に建物の固定資産税評価額が据え置きとなったものと考えられます。

1.建物の固定資産税評価額の算定方法

 建物の固定資産税評価額は、屋根・外壁・内壁・天井・床・基礎・建具・設備などにつき、それぞれに使用されている材料の種類や数量を把握し、国が定めた固定資産評価基準に基づいて算出されています。

<算式(従来分の家屋に係る固定資産税評価額)>基準年度の前年度の再建築価格 × 再建築費評点補正率 × 経年減点補正率再建築価格:再度その場所にその建物を建てるとした場合に必要とされる建築費再建築費評点補正率:基準年度と前回の基準年度との間に発生した物価変動の補正率経年減点補正率:建築後の年数の経過によって生ずる建物の傷み具合による価値の減少を率で表したもの(初年度は1年間経過したものとします)2.据え置きとなるケース

 算定の結果、固定資産税評価額が前年度の額を下回ったときは、建物の固定資産税評価額は引下げとなります。

 一方、固定資産税評価額が前年度の額を上回った場合、算式では建物の固定資産税評価額は引上げとなりますが、措置が講じられて据置きとなります。

 建築資材の高騰及び人手不足等による人件費の高騰により、近年、同等建物の建築物価は上昇しています。おそらく令和3年度は、措置により据置きになっているものと推測されます。

 なお、令和2年1月2日から令和3年1月1日までの間に、増改築や一部取壊し、そのほか特別な事情があった場合は、新たに評価をし直している点にもご留意ください。

 今後も現在の状況が続きますと、令和6年度の建物の価格も据置きとなる可能性があります。よって、建物の収益力を高め、建物の実質的な価値を高めることを常に心掛けることが必要でしょう。
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 契約者と保険金受取人が同時死亡した場合の死亡保険金の受取人と、相続税を計算する上での非課税枠の適用可否について、教えてください。

 父と母が交通事故で同時に亡くなりました。父は母を受取人とする生命保険に加入していましたが、誰が死亡保険金を受け取るのでしょうか。
 また、死亡保険金には非課税の規定があると聞いていますが、今回の場合、適用できるのでしょうか?
 なお、この相続に関して相続を放棄した人はいません。

【生命保険の契約内容】

  • 契約者(保険料負担者):父
  • 被保険者:父
  • 死亡保険金受取人:母
  • 保険金額:6,000万円
  • 特記事項:約款での別段の定めなし

 ご相談の場合、D様、F様、G様それぞれ均等に死亡保険金を受け取ることとなります。また非課税の規定は、すべての方が適用可能です。

1.死亡保険金の受取人は誰か

 生命保険契約では、保険事故発生前に指定されていた保険金受取人が死亡した場合には、契約者は当該受取人を再指定することができます。ただし今回のケースのように、契約者と保険金受取人が同時に死亡しているときは、再指定をすることができません。

 このように再指定をしないで死亡した場合には、約款等で別段の定めがある場合を除き、保険金受取人として指定されていた方の相続人が、当該保険金の受取人となります。

 今回のケースは、契約者であるお父様と保険金受取人であるお母様が同時にお亡くなりになっているため、再指定をすることができません。そのため、保険金受取人として指定されていたお母様の相続人である、C様とD様が受取人となります。

 ただし、C様は保険事故発生前に既に死亡しています。したがって、代襲相続人であるF様とG様、そしてD様がそれぞれ均等に2,000万円ずつ受け取ることになります。2.死亡保険金の非課税規定の適用可否

 死亡保険金の非課税規定が適用されるのは、今回のケースでは、お父様の相続人が取得した死亡保険金に限られます。

 この場合の相続人とは、代襲相続人を含み、相続を放棄した人や相続権を失った人は除かれます。

 したがって今回のケースでは、D様、F様、G様すべての方に非課税規定が適用できます。

 今回のケースでは、約款での別段の定めがないものとした保険でした。保険によっては、受取順位や受取分が約款で別途定められている場合があります。死亡保険金請求の前に、該当契約の約款を確認するか、保険会社に問い合わせをしましょう。※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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 今回は相談事例を通じて、相続手続きの流れについてご紹介します。

 先日、母が亡くなりました。私の知る限りでは、母の財産は預金と不動産のみです。父と二人で相続する予定ですが、母は急に亡くなったため遺言は無く、何から手を付ければよいか分かりません。相続手続きはどのような手順で進めればよいでしょうか。

 相続手続きの一般的な流れをご紹介します。具体的な内容は詳細解説をご覧ください。

 相続手続きは一般的に以下のような流れで行います。

① 戸籍謄本等を取得し、法定相続人を確定させる
 (民法第887・889・890条)。

 戸籍謄本は、金融機関や法務局などの手続先に対して、あなたとお父様が相続人であることを明らかにするために必要です。
② 遺産の内容・評価額の調査を行う(民法第915条2項)。

 財産を引き継ぐか相続放棄をするかの判断や、相続人同士で遺産分割協議を行うためには、まず財産の内容の確認が必要です。預貯金通帳・郵便物・権利書等を頼りに、どこにどんな財産がどのくらいあるか特定していきます。相続税の申告が必要な場合には、預貯金や証券口座に預託する金融資産の残高証明書を取得し、不動産があれば固定資産税課税明細書や評価証明書等によりそれぞれの財産や数量等を把握しておくことも必要です。
③ (必要な場合)相続放棄・限定承認の手続きを行う。

 相続放棄・限定承認を選択する場合、相続開始を知った日の翌日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。あなたとお父様がお母様の遺産を相続するのであれば、この手続きは必要ありません。
④ (必要な場合)準確定申告・納付を行う。

 お母様に一定額以上所得があれば、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に準確定申告を行う必要があります。
⑤ 遺産分割協議を行う(民法第907条)。

 遺産分割の目安は法定相続分(民法第900条)ですが、相続人全員が納得すれば法定相続分とは異なる分割でも有効とされています。
⑥ 協議が成立したら遺産分割協議書を作成する。

 相続人全員で署名と実印を押印し、印鑑証明書を添付します。必ず作成しなければならないものではありませんが、後から協議内容に疑義が生じるのを防ぐためには、作成しておいた方が安心です。また、不動産の相続登記や相続税の申告があるときなど、手続きの内容によっては、遺産分割協議書が必要になる場合があります。
⑦ 名義変更・換価処分を行う。

 取引のあった金融機関や法務局に払い出しや名義変更をするために求められる書類を提出することで、実際に相続人への換価処分や名義変更が行われます。①の戸籍謄本、⑥の遺産分割協議書と印鑑証明書の他にも、各手続先で手続き依頼書などを記入しなければならないケースが多いため、事前に確認しておくと良いでしょう。
⑧ (必要な場合)相続税の申告・納付を行う。

 相続財産が一定額を超えるようであれば、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告、納付手続きが必要になります。財産によって評価の方法が異なり、特例が使用できれば税額を抑えられるケースもあります。
 上記はあくまで一般的な手続きの流れであり、相続人の人数や財産の状況、遺言の有無、遺産分割協議が成立しない場合など、状況に応じてそれぞれ必要な手続きが異なります。

 期限が設けられている手続きもあり、スムーズに手続きを行うことが重要ですので、お悩みの方は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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 相続人に配偶者と障害者がいるとき、配偶者の税額軽減の特例を最大限受けることが相続税の負担を一番減らすことになるのでしょうか?




 我が家には、身体に重度の障害(身体障害者1級)を持った長女(52歳)がいます。先日、夫が亡くなったのですが、長女の将来を考え、長女には夫の遺産の大部分を相続させてやりたいと考えています。それについては、他の兄弟も納得してくれています。しかし、相続税の負担もなるべく減らしたいと考えています。そのためには、配偶者である私が法定相続分又は1億6,000万円までを相続し、配偶者の税額軽減の特例を最大限受けるのが一番よい選択なのでしょうか?




 配偶者の税額軽減の特例だけにこだわらなくても、障害者控除により全体の納付税額のご負担が軽減される可能性もあります。ご長女様の将来もよく考えながら、様々なご検討をなさることをお勧めします。




 配偶者の税額軽減の特例とは、被相続人の配偶者について一定の金額まで相続税が発生しないという特例制度です。これは残された配偶者の生活保障のため、という背景がありますが、相続税の計算においては各相続人の個別事情等に配慮して、この配偶者の税額軽減の特例以外にも、算出相続税額から控除できる税額控除がいくつか設けられています。

 その税額控除の中の1つに、「障害者控除」という制度があります。これは、社会的弱者である障害者が相続により財産を取得した場合には、算出相続税額から一定額を差し引くという制度です。

 では、障害者控除の適用要件や控除金額などを、具体的にみてみましょう。1.障害者控除を受けられる相続人

 次の要件すべてに当てはまる人は、障害者控除の適用を受けることができます。

  • 相続等で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一定の人を除く)
  • 相続等で財産を取得したときに障害者である人
  • 相続等で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、なかったものとした場合の相続人)であること

2.控除額

  • 一般障害者  10万円 ×(85歳-相続開始時の年齢)*
  • 特別障害者  20万円 ×(85歳-相続開始時の年齢)*
  1. * 85歳に達するまでの年数で、1年未満の期間があるときは、1年切り上げて1年として計算
  2. * 過去に他者からの相続において、障害者控除の適用を受けている場合には、控除額が制限されます。

3.障害者の区分

  1. 一般障害者
    身体障害者手帳の等級:3級~6級精神障害者福祉健康手帳の等級:2級、3級
  2. 特別障害者
    身体障害者手帳の等級:1級、2級精神障害者福祉健康手帳の等級:1級

4.留意点(1)障害者控除額が引ききれない場合

 障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引ききれない場合には、その引ききれない部分の金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。

 この場合の扶養義務者とは、配偶者、直系血族(父母や子、孫)及び兄弟姉妹などをいいます。なお、この扶養義務者は「同居」や「生計一」である必要はありません。

 扶養義務者が2人以上ある場合の、それぞれの控除額は扶養義務者間での協議により自由に配分することができます。(2)その他

 障害者控除は、その障害者が何も財産を相続していない場合には控除することができません。また、この場合には他の扶養義務者である相続人からも控除することはできません。5.今回の場合

 例えば算出相続税額が下表であった場合の配偶者の税額軽減と障害者控除の適用額は、それぞれ下表のとおりです。(単位:万円)

長女長男次男合計
算出相続税額5003001001001,000
配偶者の税額軽減-500-500
障害者控除-300-100-100-500
納付税額00000

 お母様が相続された部分は、一定額まで配偶者の税額軽減の適用があり、税負担が軽減されます。

 また、ご長女が相続された部分は、ご長女の算出税額から障害者控除(限度額:20万円×(85歳-52歳)=660万円)が控除されます。この場合、控除しても控除しきれない障害者控除額があるときは、その控除しきれない金額は上記表のとおり、ご長男やご次男の算出税額から控除することができます。

 このように、どのような配分にすることが最も相続税の負担が軽減されるかは、ケース・バイ・ケースといえます。相続税の負担だけがすべてではありませんので、ご家族皆様の将来を見据えて最もよい選択ができるよう、いろいろな角度から検討されるとよいでしょう。相続税について、分からないことがありましたら、お気軽に当事務所へお問合せください。


<参考>
 相法1の2、1の3、19の4、相令4の4、相基通1の2-1、国税庁タックスアンサー「No.4167 障害者の税額控除」など
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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 令和3年(2021年)の地価公示の結果と土地の相続税評価額の関係について、教えてください。

 令和3年(2021年)の「地価公示価格」が発表された、というニュースを見ました。今回の地価公示の結果の特徴について、教えてください。また、今回の地価公示の結果と土地の相続税評価額との関係は、どのようになっているのでしょうか?

 令和3年(2021年)の地価公示では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、全用途の全国平均は、平成27年(2015年)以来6年ぶりに下落に転じました。

 まず、地価公示の結果から確認しましょう。

1.令和3年(2021年)の地価公示

 用途別にみると、住宅地は平成28年(2016年)以来5年ぶり、商業地は平成26年(2014年)以来7年ぶりに下落に転じ、工業地は5年連続で上昇したものの上昇率は縮小しました。

 東京、名古屋、大阪の三大都市圏をみると、全用途平均・住宅地・商業地はいずれも平成25年(2013年)以来8年ぶりに下落となりました。工業地は7年連続で上昇しましたが、上昇率は縮小しました。

 地方圏平均をみると、全用途平均・商業地は平成29年以来(2017年)4年ぶりに、住宅地は平成30年(2018年)以来3年ぶりに下落に転じ、工業地は4年連続で上昇したものの上昇率は縮小しました。

 今回の地価公示では、新型コロナウイルス感染症の影響により全体的に弱含みとなりましたが、地価動向の変化の程度は用途や地域によって異なる結果となりました。昨年からの変化は、用途別では商業地が住宅地より大きく、地域別では三大都市圏が地方圏より大きくなりました。

2.地価公示の結果と土地の相続税評価額との関係

 次に、今回の地価公示の結果と土地の相続税評価額との関係についてみてみましょう。

 まず、地価公示価格ですが、相続税評価の基準になるとされています。相続税や贈与税の申告にあたっては、一般的に路線価等(いわゆる相続税路線価)が用いられますが、相続税路線価は、地価公示価格の水準の80%程度で評価されており、その均衡化・適正化が図られています。

 なお、地価公示価格、相続税路線価ともに毎年1月1日が評価の基準日とされていますが、地価公示の発表は例年3月下旬(今年は3月23日)、相続税路線価の発表は例年7月初旬となっており時間差があります。

 今回の地価公示で地価が最も大きく下落したのは、大阪ミナミや名古屋の錦といった繁華街・歓楽街でした。インバウンド客をはじめとする観光需要の消失や、会食需要の減退による飲食店の利用客減といった、まさに新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けた格好となりました。

 なお、昨年分である令和2年分(2020年分)の路線価では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は反映されていなかったことから、地価が20%超下落した大阪ミナミや名古屋の錦辺りでは、評価月によって路線価に調整率を乗ずる形で、地価変動補正が適用されました。

 今回の地価公示では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が反映された結果となっており、地価が大きく変動している地点の付近については、7月に発表される相続税路線価も大きく変動し、相続税額にも影響を与える可能性があります。

 土地の相続税評価については、当事務所までお気軽にご相談ください。

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