お知らせ

 大量消費が豊かさの象徴としてもてはやされ、
 欲しい物は躊躇なく手に入れ、使い終われば捨ててしまう。
 そんな風向きが大きく変化したのは、
 リーマンショックを前後として押し寄せたデフレの波でした。

 リサイクル、リユースへの志向が一気に強まり、
 洋服やバックなど、流行が過ぎると捨てられていたものまで、
 中古品市場で取引されるようになりました。

 最近では、インターネットのショッピングモールや、
 リユース企業の実店舗で取引されていたものが、
 フリマアプリなどネットを通じて個人間で直接売買する様になり、
 売れるものならば捨てる前に出品しようという風に変わりました。

 その様な個人売買のあおりを受けて、中古品取引大手のブックオフも、
 古本中心の事業からの転換を迫られています。
 百貨店などに買い取り窓口を設け競合の少ない、
 富裕層向けにサービスを拡充させています。

 ブックオフの創業者 坂本孝氏が、古本に目をつけたのは、
 1990年の春のことでした。
 たまたま通りかかった商店街で目にした光景は、本に群がる黒山の人だかり。
 よく見ると、コミック本の古本の山に若者が我先に争って手にとっていました。

 定価の何分の一で売りに出された、コミック本はあっという間に売れて、
 店主の手元に置かれた、かごの中にはお金が溜まっていったのです。
 中古のコミック本には、昔ながらの「古書」というイメージはまったく無く、
 一度読んでしまえば、タダ同然になってしまうのだと感じたのでした。

 このように、若者から若者へコミックを売買し、
 循環させるような仕組みは作れないかと、坂本氏は考えたのです。
 読み終えたコミック本を定価の1割で若者から買い取り、
 リフレッシュした後、定価の半分で売る。

 それまでは、古本屋の店主の目利きに頼っていた金額の査定を、
 アルバイトでも簡単に出来るようにしたのが、ブックオフだったのです。
 新・古本屋ともいえるスタイルの原動力となったのは、
 仕入れ値と販売価格の差額、いわゆる粗利率の高さなのです。

 このことが示しているのは、経営で使う用語「付加価値」なのです。
 ブックオフの場合、お客として買う立場に立ってみると、
 さほど汚れていない古本を半額で手に入れることができ。
 また、(お客として)売る立場に立ってみると、古紙回収に出せばタダ同然のものが
 定価の1割で引き取ってもらえるのです。

 つまり、顧客は両方の立場で、メリットがあるのです。
 そんな、ブックオフへ古本を持ち込む若者は、
 読み終えたコミック本や文庫本を何十冊と携えて来店し、
 売ったその代金で、気に入った古本やCDを買って帰るのも珍しくありません。

 「付加価値」が高ければ、販売に関するいろいろなことを
 充実させることが出来るのです。
 そうなれば、人が多く集まるような家賃が高い場所に出店することが可能になり、
 給与を多く払ってでも、良い人材を募集することも出来ます。

 また、従業員の教育にお金をかけたり、様々な形で広告費を行うこともできます。
 このようなことが、良い形で循環することにより、
 会社としては利益を生み出せる体質に変わっていくことになるのです。

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