貸地は自用地に比べて相続税対策になるのでしょうか。
高齢になる父が貸地を所有しています。貸地は自用地(自分で所有し、自らが使用している土地)に比べ、相続税や贈与税を計算する際の評価額(以下「評価額」といいます)が低いため、相続税対策になると聞きましたが、何か問題があれば教えてください。
評価額が減ることだけに注目すれば、貸地が有効な相続税対策になると思われる方もいらっしゃると思います。貸地の中には収益力が高く、相続税対策として成り立っている土地もありますが、戦前や戦後まもなくから貸しているような貸地などは、収益力が低く、相続税対策として成り立っていないこともあります。
相続が発生した際の貸地の評価額は、自用地の評価額から自用地の評価額に借地権割合を乗じたものを引いた額になります。借地権割合が50%の地域であれば、貸地の評価額は、自用地に比べ50%減ります。
収益力の低い貸地の売却価格を例にご説明します。自用地の評価額1億円の貸地の評価額は、借地権割合50%の地域であれば、5,000万円です。
ただし、貸地は自由に利用することができず、5,000万円で売れる可能性は極めて稀だと考えます。
また、貸地は市場性が乏しいため、売却するときは専門の不動産買い取り業者を頼るケースもあります。不動産買い取り業者は、土地を借りている人を立退かせた上で、更地として再販売し利益を得ることを目的としています。立退き交渉が不調となった場合、その土地は半永久的に貸地になり、転売できなくなるリスクがあるため、土地の買い取り価格は、更地価格の10~20%程度(収益力等が勘案されます)が目安だといわれています。
②貸地の売却価格 1億2,500万円×20%=2,500万円
①-②=2,500万円、貸地の評価額が貸地の売却価格(時価評価)を上回る。
上例では、収益力の低い貸地の評価額は、時価評価を上回る結果となり、相続が発生した際には、時価評価に比べ、多くの税金を支払うことになる上に、売却しても期待する金額にはなりません。このように、収益力は低いのに評価額の高い貸地は相続税対策として有効とはいえません。
評価額が時価評価を上回る等、相続税対策には適していない貸地については、下記対策を講じるなど、早めの対応が必要になります。
- 底地部分を借地権者に売却する
- 借地権者と共同で第三者に底地部分を売却する
- 借地権を借地権者から買い取る
- 借地と底地を部分的に交換する
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