相続の放棄があった場合でも、その放棄がなかったものとして相続税額を計算します。
私には長男、長女、次女、三女の4人の子がいます。夫は15年前に亡くなりました。夫の相続の際には、跡継ぎである長男がほとんどの財産を相続しました。その長男が、先日亡くなりました。長男は独身で子供もおりません。私が相続人になるということですが、私も年老いていますので、今更財産を相続するのも、と思っております。私が相続を放棄すると、他の子供たちが相続することになると聞きました。子供たちが相続した場合、相続税はどうなりますか?(長男の財産は1億3,600万円です。)
お母様が相続を放棄しなかったものとして、相続税を計算します。
被相続人の財産を相続する方には、優先順位があります。まず優先的に相続できるのは、配偶者と子供(子供が先に亡くなっている場合には孫)です。子供や孫がいない場合には、配偶者と両親や祖父母、子供(孫)も両親(祖父母)もいない場合には、配偶者と兄弟姉妹が相続することとなります。
両親はいるけれど、「相続放棄する。」と言う場合には、相続人は次の順位に繰り越され、被相続人の財産は兄弟姉妹が相続することとなります。
つまりご質問の場合には、長男の財産は長女、次女、三女の3人が相続することとなります。
これら相続に関するルールは、「民法」という法律に定められています。財産を相続する手続きは民法に従って行われますが、それにより発生する相続税は「相続税法」という別の法律に基づいて計算し、納税します。
相続税法は「課税」を目的とした法律ですので、人によって課税が不公平になることのないように、同じ相続に関するルールでも一部、民法とは異なる特別なルールが設けられています。
例えば、ご質問のようにお母さまが相続を放棄したために、相続人が次の順位の方(兄弟姉妹)に移行した場合にもこの特別ルールが適用されます。
これら法定相続人の数や法定相続分は、相続税の計算過程において、基礎控除や生命保険の非課税金額、相続税の総額の計算などで使用します。
ご質問の場合で、お母様が放棄した場合の相続税について確認してみましょう。
(*)相続税額の加算額
配偶者、および一親等の血族、すなわち子(代襲相続人となった孫を含み、代襲相続人となっていない孫養子を除く。)および直系尊属(父母)以外の方が相続等した場合には、その人の相続税額が20%加算されます。
ご質問の例ではお母様の相続放棄後の相続人全員が加算対象者ですので、相続税の総額全額に20%が加算されます。
お母様が放棄せず相続した場合には、加算されません。
民法上の相続人は3人ですが、相続税の計算上は1人。民法上の法定相続分は各人1/3ですが、相続税の総額を計算する上で用いる法定相続分は1/1となります。
<まとめ>
- 相続税法上は、相続放棄をした人がいても放棄をしなかったものとして、法定相続人の数、法定相続分を計算します。
- 民法上の法定相続人の人数と、相続税法上の法定相続人の人数は必ずしも一致しません。
- 相続税法における特別なルールは、税金を計算する際のみに適用されるルールです。
<参考条文> 相続税法第15条、第16条
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