生前、自ら出資して個人商店のような小さな会社を経営していた場合、この会社の財産等も相続財産となるのでしょうか。
父は生前、自ら出資して個人商店のような小さな会社を経営していましたが、誰もこの会社を承継する予定がないため、父の死亡を機に会社は解散する計画です。この会社は、父死亡時点で預貯金50万円、在庫商品50万円、機械などの設備が200万円あり、借入金はありません。
父の財産に係る相続税の計算をする上で、この会社の財産等も相続財産となるのでしょうか?
会社の財産等は会社所有物であるため、相続財産とはなりませんが、出資した会社の株式については、定められた評価方法により評価額を算出し、相続税の課税対象として計上します。
相続税は、被相続人が亡くなった時点で所有していた財産に対して課されます。従って、個人商店として事業を行っていた場合には、事業用の資産は個人の所有となりますので、それら資産についても相続税の課税対象となります。簡単に言うと、個人の青色申告決算書の貸借対照表に計上されている資産全てについて、相続税評価額にて相続財産に計上され、債務については債務控除の対象となります。
他方、会社形態で事業を行っていた場合には、事業用の資産の所有者は「会社」となります。それら資産はお父様の所有物ではないため、事業用資産(会社の財産等)に対して相続税は課されません。
その一方で、株主(出資者)は会社の“株式”という財産を所有しますので、お父様が出資した株式について相続税の課税対象となります。
証券市場に上場している会社の株式であれば、日々市場で取引され評価額は明らかですが、一般的に中小企業は証券市場に上場していないことが多く、その株式にどれぐらいの価値があるのかという、客観的な価額が分かりません。
しかし、評価額が分からなければ課税できません。そこで、このように上場していない会社の株式(以下、非上場株式)については、相続税財産評価基本通達で定められた評価方法により評価額を算出し、相続税の課税対象として計上します。
<参考:非上場株式の評価の概要>
①会社に対して経営支配権を有する株主の場合
会社の規模(大、中、小)、経営状況などに応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、これらの併用により評価額を算出します。
*類似業種比準方式とは、事業内容が類似する上場企業の株価を基にして、評価会社の1株当たりの配当金、利益金額、純資産価額の3要素を比較することにより評価額を算定する方法です。
*純資産価額方式とは、評価会社の資産から負債、含み益に対する法人税等相当額を控除して評価額を算定する方式です。
②会社に対して経営支配権を有しない株主の場合(少数株主)
会社の規模の大小に関わらず、配当還元方式により評価額を算出します。
*配当還元方式とは、その株式を持っていることで受け取れる1年間の配当金額を一律10パーセントという利率で還元して、元本の株式の価額を算出する方法です。
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