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トラブルにならないための~法律の相続対策 配偶者居住権とは

 今回は相談事例を通じて、配偶者居住権についてご紹介します。



 相続法の改正で、配偶者に関する権利が新設されると聞きました。どのような権利なのでしょうか。




 相続に関する民法の改正作業が進められており、1980年以来、約40年ぶりの改正となる予定です。
 今般の改正で、相続開始時点で被相続人と同居していた建物(以下、居住建物)に配偶者が引き続き居住できる権利が新設されます。これが、ご相談の被相続人の配偶者を保護する視点で設けられた制度であり、「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の2種類があります。




 「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」の概要をご説明します。

1.配偶者短期居住権

 「配偶者短期居住権」は、遺産分割が終了するまでの期間についての居住権を保護する目的の権利です。相続開始とともに当然に発生し、次のいずれか遅い日までの間、配偶者はそのまま無償で居住建物に住むことができます。

  • ①分割により居住建物の取得者が確定した日
  • ②相続開始から6箇月を経過する日

2.配偶者居住権

 一方「配偶者居住権」は、長期の居住権で、居住建物を終身無償で使用・収益できる権利です。相続開始とともに発生する「配偶者短期居住権」とは異なり、次のいずれかに該当する場合に取得することができます。

  • ①遺産分割において、配偶者が、配偶者居住権を取得したとき。
  • ②配偶者に、配偶者居住権が遺贈されたとき。
  • ③被相続人と配偶者間に、配偶者に、配偶者居住権を取得させる死因贈与契約があるとき。

 配偶者は居住建物の所有者に対し「配偶者居住権」の登記を請求でき、登記することで、第三者に対する権利の主張も可能となります。

 なお、「配偶者短期居住権」「配偶者居住権」は、いずれも譲渡することはできず、配偶者の死亡等により消滅します。配偶者の死亡によりこれらの権利が消滅した場合、原状回復義務等の義務は、配偶者の相続人が相続することになります。

 また、「配偶者短期居住権」は評価の対象とはなりませんが、「配偶者居住権」はその財産的価値に相当する価額を相続したものとして扱われますので、注意が必要です。


※改正法律案は以下の法務省サイトでご確認ください
 「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案


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お金に困らないための~税金の相続対策 無償での貸付宅地に係る小規模宅地等の特例-特定同族会社事業用宅地等

 貸付が相当の対価を得ずに行われている場合には、小規模宅地等の特例-特定同族会社事業用宅地等の要件を満たさないので、評価減はできません。




 私は、所有している土地を自分が代表者兼100%株主である同族会社(製造業)に、月30万円(適正地代)で貸し付けていました。しかしこの1~2年、会社の業績が悪化し、現在は無償で貸している状態です。この状態で、もし私の相続が発生し、息子(後継者、取締役)がこの土地を相続することになった場合、小規模宅地等の特例のうち、特定同族会社事業用宅地等として80%の評価減を適用できますか。




 ご質問の場合は無償での貸付けであるため、特定同族会社事業用宅地等として80%の評価減を適用することはできません。




 特定同族会社事業用宅地等の要件は、次のとおりです。



 ご質問の場合は、上記②の要件を満たしていません。この場合の“有償”とは、相当の対価を得て貸し付けられているかどうかで判断します。この場合の「相当の対価」は、次のように考えられています。




 なお、特定同族会社に該当する法人が不動産貸付業(駐車場業、自転車駐車場業等も含む)を行っている場合は、80%の減額割合が50%となります。

 会社の業績が悪化したとしても、安易に土地代を無償化せずに、相談者様に支払い続けることが大切です。 そのことにより、特定同族会社事業用宅地等に該当し、土地の評価額を大きく減らすことができます。

<まとめ>

  • ・特定同族会社事業用宅地等に該当するためには、同族会社は被相続人等に対し相当の対価を支払っていないといけません。


(措法69の4、措令40の2、措規23の2、措通69の4-23)


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家と財産を守るための~不動産の相続対策 平成30年地価公示について

 地価公示価格は引き続き上昇基調にあります。なお、地価公示価格は土地の相続税評価額の基準にもなります。




 先日、平成30年の「地価公示価格」が発表されたというニュースをみました。今回の地価の動きについて教えてください。また、地価公示価格と土地の相続税評価額との関係はどのようになっているのでしょうか?




 今回発表された「地価公示価格」は、一部地域の住宅地を除き上昇傾向にあるといえるでしょう。また、土地の相続税評価額算定には地価公示価格の水準が影響しており、正の相関関係があるといえます。




 地価公示という制度は、地価公示法という法律に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示するもので、主な役割としては以下のようなものがあります。

  • ・一般の土地の取引に対して指標を与えること
  • ・不動産鑑定の規準となること
  • ・公共事業用地の取得価格算定の規準となること
  • ・土地の相続税評価及び固定資産税評価についての基準となること
  • ・国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること


 ここで、地価公示価格と土地の相続税評価額との関係について説明します。上述のとおり、地価公示価格は相続税評価や固定資産税評価の基準になるとされています。相続税や贈与税の申告にあたっては一般的に路線価等(いわゆる相続税路線価)が用いられますが、相続税路線価は、地価公示価格の水準の80%程度で評価されており、その均衡化・適正化が図られています。なお、地価公示価格、相続税路線価ともに毎年1月1日が評価の基準日とされていますが、地価公示の発表は例年3月の中~下旬(今年は3月27日)、相続税路線価の発表は例年7月初旬となっており時間差があります。

 では、今回の地価公示の概況をみてみましょう。全国平均は、住宅地の平均変動率が昨年の横ばいから10年ぶりに上昇に転じました。商業地は3年連続の上昇、工業地は2年連続の上昇となり、それぞれ上昇基調を強めています。また、全用途平均は3年連続の上昇です。
 東京、名古屋、大阪の三大都市圏をみると、住宅地、商業地及び工業地のいずれも、各圏域で上昇を示しました。大阪圏は、住宅地はわずかな上昇でしたが、商業地の上昇率は三圏で最も高くなっています。地方圏をみると、住宅地は下落幅の縮小傾向が継続しています。商業地及び工業地は26年ぶりに上昇に転じ、全用途平均でも下落を脱して横ばいに転じました。地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では、全ての用途で上昇し、上昇基調を強めています。

 国土交通省では、土地の用途ごとに地価の動向と背景を下記のように分析しています。

(住宅地)

  • □ 雇用・所得環境の改善が続く中、低金利環境の継続による需要の下支え効果もあって、利便性の高い地域を中心に地価の回復が進展。

(商業地)

  • □ 良好な資金調達環境の下、以下の背景から不動産需要は旺盛であり、地価は総じて堅調に推移。
    • ・外国人観光客の増加などによる店舗、ホテル需要の高まり
    • ・都市中心部における再開発等の進展による繁華性の向上
    • ・主要都市でのオフィス空室率の低下などによる収益性の向上

(工業地)

  • □ 全国的に工業地への需要の回復が見られる。特に、インターネット通販の普及等もあり、道路アクセスの良い物流施設の建設適地では大型物流施設建設に対する需要が旺盛である。

 金融緩和の影響やインバウンドの増加などの影響もあり、地価上昇は大都市圏から地方圏にも波及しています。全用途の平均が3年連続で上昇したのは、バブル経済崩壊後初めてのことです。但し、人口減少が続いている地方圏においては、引き続き地価は下落傾向で推移していますし、今回、国土交通省が初めて公表したデータにでは、駅距離により地価の変動率に差があることも示されています。
 また、全国の住宅地の最高価格地点が東京の番町から赤坂に入れ替わるとともに、大阪では商業地の最高価格地点がオフィス主体のキタを訪日客で賑わうミナミが上回るなどトレンドの変化も見てとれます。
 したがって、7月に発表される相続税路線価についても、今回の地価公示の影響を受け、地価が大幅に上昇している地点の付近については相続税路線価も大幅に上昇し、相続税額にも影響を与える可能性があります。

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万一に備えるための~保険の相続対策 生命保険と信託

 生命保険を信託することで、保険金の使用目的を監視させ加入者の意図を反映させることができます。




 生命保険金が信託できると聞いたことがあります。それはどのような仕組みで、どのようなことができるのでしょうか?




 たとえば生命保険の加入者が死後に支払われる保険金について、受取人や受取時期、使用目的などを信託制度を用いて生前に設定することで、加入者の選択の自由が広がる他、目的どおりに使われているかどうかを受託者が監視することで、より委託者の意図を反映させることができます。




1.信託の仕組みと登場人物について

◆信託とは◆

信託の定義は、信託法第2条第1項で規定しています。

 特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的のために必要な行為をするべきことをいう。


■信託の仕組図  



■登場人物

 信託制度では、上記信託の仕組図にあるとおり、主に次の関係者が登場します。

    • □委託者…信託可能な財産を受託者へ信託する者です。

 

    • □受託者…委託者から財産を引き受け、目的に従って管理・処分する者です。
      受託者は信託業の担い手であり、信託銀行、都市銀行、地方銀行等の信託業務を取扱っている金融機関、 信託会社などが該当します。(*2)
      家族信託のように、親族が受託者となることもあります。

 

  • □受益者…信託財産から生じる利益を得る人です。
    受益者は誰でもなることができ、委託者自ら受益者になることもあります。

■信託の目的・財産

 信託制度を利用するには、信託の“目的”や“財産”が必要です。これらは何でもよいわけではなく、違法なことや公序良俗に反することを目的にはできませんし、財産にも制限があります。

  • □信託財産の例
    • ・お金、株式や国債などの有価証券、土地・建物、特許権や著作権などの知的財産権など(*3)
    • ・農地(農協など特定の対象が受託者となった場合(農地法第3条第2項第3号))


2.信託の例 ~高齢化への対策~

 配偶者や親が高齢により物忘れがひどくなり、自分自身の財産の管理が難しくなっているときに、ご自身で財産の処分が可能な間に財産を信託し、意思能力がなくなったらできなくなる行為を受託者に託すことができます。

  • □例
    • ・財産にかかる契約⇒賃貸契約、売買契約、資金の借入契約 など
    • ・贈与


3.生命保険の信託とは何か?

 生命保険の信託とは、生命保険の加入者が死後に支払われる保険金について、受取人や受取時期などを加入者の生前に設定することができる信託契約のことをいいます。
 元々の生命保険契約上で受取人を指定することは可能ですが、受取人の状況次第では加入者の意向どおりに死亡保険金が使われるとは限りません。そこで生命保険を信託することによって、加入者の意向を反映させることが可能となります。
 死亡保険金を信託するときに必要となるコストは、生命保険の保険料と信託契約の諸コストです。


4.生命保険の契約と生命保険の信託契約との違い

    • ■生命保険契約
      生命保険契約での保険金受取人は、基本的に配偶者、子などの親族です。

 

    • ■生命保険信託契約
      生命保険信託契約では、配偶者や子など親族以外の個人や法人を保険金の受取人にすることが容易である他、受取保険金の使用目的を具体的に指定することができます。
      また、受託者は目的どおりに使われているかどうかを監視します。

 

  • ■生命保険信託のメリット、デメリット
    生命保険信託の最大のメリットは、「誰に」「いつ」「どのように」保険金を渡すのか、加入者の意向によって決めることができることにあります。他方デメリットは、信託にかかる諸コストが必要となることです。

 今後、生命保険信託は広がりをみせ、資産家に限らずこの制度を利用する人が増えることでしょう。
 「知らなくて選択できなかった」ことと、「知っていて選択しなかった」ことは大違いです。
 今後のライフプランを考える機会があれば、生命保険信託も検討してみてはいかがでしょうか。

(*1) 「金融広報中央委員会 金融なんでも百科 図表 信託のしくみ」を参考に作成
(*2) (*3) 「金融広報中央委員会 金融なんでも百科 信託」より引用

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トラブルにならないための~法律の相続対策 休眠預金等活用法

 今回は相談事例を通じて、休眠預金等活用法の概要についてご紹介します。



 休眠預金等を使用するという法律ができたと聞きました。記帳だけは定期的にしており、しばらく入出金等はしていない預金があるのですが、それも休眠預金として活用されるのでしょうか。活用されてしまったら、預金を引き出そうと思っても引き出せないのでしょうか。制度について教えてください。




 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律(平成28年法律第101号)が成立し、2016年12月9日に公布、2018年1月1日に法律が施行されました。2009年1月1日以降に最後の入出金等の取引があった預金等が原則対象となります。

 「休眠預金等」とは、10年以上、「入出金等の取引」がない預金等のことを言います。休眠預金等になると、預金保険機構に移管され、民間公益活動に活用されます。(金融機関は、預金等の存在を預金者等に通知し、預金者等の所在が確認できない預金等については、HPで公告を行ったうえで、預金保険機構に移管します。)




「預金等」とは

 休眠預金等になりうる「預金等」は、預金保険法、貯金保険法の規定により預金保険、貯金保険の対象となる預貯金です。具体的には、普通預金、定期預金、貯金、定期積金等があります。
 一方で、財形住宅や財形年金などの特定の目的のための預貯金や、障がい者のためのマル優の適用となる預貯金、外貨預金等、預金保険制度の対象とならない預金は、「休眠預金等」の対象ではありません。  

「入出金等の取引」とは

 「入出金等の取引」とは、引き続き預貯金などを利用する意思表示をしたものとして認められるような取引などを言います。どの金融機関でも共通の取引事由と、各金融機関が行政庁から認可を受けて取引事由と認められるものがありますが、通帳の記帳についてはどの金融機関でも共通の取引事由として認められたものではありません。お預けの金融機関が取引事由として認可を受けている場合は、休眠預金として移管されることはありません。  

 また、休眠預金等として移管された後でも、取引のあった金融機関で引き出すことは可能です。引き出す期限についてもありませんので、いつでも引き出すことが可能です。休眠預金となっている期間の利子についても、元の預貯金契約どおりの利子相当額が支払われます。  

 ご自身の預金等が休眠預金等になっているか、制度の詳細については直接お取引先の金融機関にお問い合わせされると良いでしょう。またご自身の預金の管理をするうえでも、使用していない口座はご自身で閉鎖するなど、いま一度見直すこともお勧めします。


参考:金融庁「2018年1月より休眠預金等活用法が施行されます


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お金に困らないための~税金の相続対策 H30税制改正 小規模宅地等の特例 ~貸付事業用宅地等の適用制限

 行き過ぎた相続対策による租税回避を防ぐため、小規模宅地等の特例の適用が厳格化されました。貸付事業用宅地等については、対象が3年を超えて貸付に供されている宅地等に限られることになりました。




 平成30年度の税制改正で、小規模宅地等の特例の一部が改正されると聞きました。

 そのなかで、不動産貸付として利用していた宅地等を相続により取得した場合に減額できる「貸付事業用宅地等」について対象が制限されたそうですが、具体的にはどのような改正でしょうか?




 原則として、相続開始前3年以内に貸付を開始した貸付事業用の宅地等が「貸付事業用宅地等」から除外されることとなりました。




[1]貸付事業用宅地等とは

 亡くなった方(被相続人)が生前所有していた宅地等を相続又は遺贈(以下、相続)により取得したときに、相続税の計算上、その宅地等の評価額を減額できる制度(小規模宅地等の特例)があります。このなかには、被相続人若しくは被相続人の同一生計の親族の賃貸事業(不動産賃貸業、駐車場業、自転車駐車場業等)に供されていた宅地等で、次の要件すべてに該当する場合(これを「貸付事業用宅地等」といいます)に、200㎡を上限として土地の評価額を50%減額することができる特例があります。



[2]改正により相続開始直前の相続税対策は難しく

 この貸付事業用宅地等は要件のハードルが低いこともあり、相続税の負担を軽減するために、いったん現金を賃貸不動産に換え、貸付事業用宅地等としての要件を具備した上で特例の適用を受け、その後数年以内に売却する、というケースが多々見受けられました。

 もともと小規模宅地等の特例は、相続開始後の相続人等の生活保障という側面があるため、このような相続税対策は趣旨にあわず、これを封じるために今回の改正が行われています。

 具体的な改正は、次の通りです。


 基本的には、上記《改正後》(1)のように3年縛りが加わりましたが、(2)のように3年を超えて事業的規模の貸付事業を行っている方に係る貸付事業用宅地等はこの改正の適用から除外されること、さらに(3)のような経過措置があります。

 これまでの要件に加え、どのような方がいつから貸付をしているのかの確認をする必要がありますので、ご注意ください。

<参考条文等>
 措法第69の4、措令第40条の2、措規第23の2、措通第69の4の4、措通第69の4の13


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家と財産を守るための~不動産の相続対策 親の実家を相続するための方法

 実家など相続人が分割して取得することが難しい財産がある場合には、代償分割という方法があります。




 先日、同居していた母が亡くなり相続が発生しました。相続人は兄と私の二人です。遺産分割の件で、兄とは、遺産について均等に相続することで話を進めていますが、実家(不動産)の分け方について話がまとまりません。私は、住み慣れた実家で生活を続けたいのですが、兄は、実家を共有せず、売却して金銭にかえることを主張しています。兄を納得させ、私が実家を相続する方法はないのでしょうか。




 今回のケースは、代償分割により解決できるのではないかと思います。代償分割とは、不動産などの物理的に分けられない遺産に対して、複数の相続人がいる場合、その遺産を相続した者が他の相続人に差額の代償金を支払うことをいいます。




 遺産分割には、代償分割の他にも、遺産を現物のまま分割する方法(現物分割)、遺産を売却して、売却代金を分割する方法(換価分割)などがあります。

 代償分割を行うときに問題となるのは、相続財産の中から代償金を支払うことができないなど、代償金が用意できないことです。代償金を用意するのが難しい場合は、他の相続人の承諾を得たうえで、代償金を分割して支払うこと、相続する不動産を担保として融資を受けて代償金を準備し、金融機関に返済する方法、リースバックなどが考えられます。

 リースバックは、遺産である不動産(実家)を第三者に売却した後、売却代金を受け取り、売却した相手方と賃貸借契約を締結し、そのまま不動産を利用する方法です。ただし、リースバックには、時価よりも低い金額でしか売却できないこと、売却時に費用がかかることなど、デメリットもありますので、利用する場合は、制度をよく理解することが必要です。

 なお、代償分割を行う場合に、遺産分割協議書の中で代償分割により他の相続人に代償として金銭を支払うことを記載しなければ、代償金の支払いが単なる贈与であるとみなされ、贈与税が課税されることがありますので注意が必要です。また、税務上は、次の点にご留意ください。

    • ✓代償財産の価額は、代償分割の対象となった財産を現物で取得した人が他の相続人などに対して負担した債務の額の相続開始時の金額となります。よって、代償債務額を「代償分割時の時価」を基準に決定した場合には、相続税の課税価格の計算において調整が行われます。

 

    • ✓代償財産は現金である必要はありませんが、現金以外の場合には譲渡所得として所得税や住民税などの負担が生じる場合があります。

 

  • ✓代償財産が不動産である場合には、代償を受ける側に不動産取得税と登録免許税がかかり、代償分割による移転登記は登録免許税の税率が20/1000と、相続による場合(4/1000)に比べると負担増になります。

 <参考>
   国税庁タックスアンサー No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算

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万一に備えるための~保険の相続対策 相続を放棄した場合の死亡保険金の受け取り

 被相続人が加入していた死亡保険金は受取人固有の財産であるため、相続放棄をした人も受け取ることができます。但し、相続財産として相続税の課税対象となります。




 先日、父が亡くなりました。父が加入していた生命保険があり、受取人は母と私(長男)となっていました。母は、 父の相続にあたり、相続放棄し父の財産をもらわない予定です。ただ、父の葬儀費用や母の今後の生活費に充てるため、生命保険だけは母も受け取りたいと考えています。母が保険金を受け取ることは可能でしょうか?

【契約内容】

契約者、被保険者=父、 
死亡保険金受取人=母、長男(受取割合 それぞれ1/2)  
保険種類=終身保険、 保険金額=1,000万円




 今回のケースでは、お母様は相続放棄をしても、死亡保険金500万円を受け取ることができます。注意点は、詳細解説でご確認ください。




 相続放棄とは、被相続人が亡くなった後に家庭裁判所に申し立てることにより、最初から相続人でなかったこととする方法です(民法939条)。相続の放棄をすると、預金や不動産といったプラスの財産を一切引き継ぐことができなくなると同時に、借金や保証人の地位といったマイナスの財産も引き継がなくてよくなります。

 では、なぜ相続放棄をした場合でも、死亡保険金を受け取れるのでしょうか?

 契約者と被保険者が同じ人の場合、死亡保険金は死亡した人の財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となります。そのため、たとえ相続を放棄したとしても、死亡保険金を受け取ることができるのです。今回のケースでは、お母様は相続放棄をしても、死亡保険金500万円を受け取ることができます。

 但し、以下のような注意点があります。

    • ①死亡保険金は、税法上「みなし相続財産」として、相続税の課税対象となります。

 

  • ②相続を放棄した人は、生命保険金の非課税金額(※)の適用を受けることはできません。

※生命保険金の非課税金額とは
 相続税の計算において、生命保険は、「500万円×法定相続人の数」の額が非課税となります。 但し、相続人が保険金を受け取った場合に限ります。

 今回のケースの場合

  • ・お母様は、死亡保険金500万円を受け取ることはできますが、生命保険の非課税の適用はありません(但し、配偶者の税額軽減の規定は適用されます)。
  • ・ご長男様は、死亡保険金500万円を受け取り、かつ、生命保険金の非課税金額の適用を受けられます。

 生命保険金の非課税金額の計算をする際の法定相続人の数には、相続放棄した人も含めます。よって、500万円×2人(法定相続人:母・長男)=1,000万円が非課税金額となり、ご長男様は受け取った死亡保険金500万円全額が非課税となります。

<参考条文>
 相基通19の2-3

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トラブルにならないための~法律の相続対策 遺産分割協議が不成立の場合

 今回は相談事例を通じて、遺産分割協議が不成立の場合の対応方法についてご紹介します。



 父親が亡くなり、兄弟で遺産の分け方を決めようとしていたのですが、皆、感情的になるばかりで自分たちではどうにも話がまとまりません。どうすればよいのでしょうか。




 相続人間で遺産分割の協議が整わない場合には、家庭裁判所に分割を決めてもらうよう請求することができます。




 家庭裁判所での遺産分割手続きには、「遺産分割調停」と「遺産分割審判」の2種類があります。  

 遺産分割調停が話し合いによる相続人間の自主的な解決を目的とするものであるのに対し、遺産分割審判は、裁判により強制的に分け方を決めるものになります。  
 遺産分割を家庭裁判所に求める場合、その旨を申し立てる必要があります。どちらを申し立てるのかは自由とされていますが、審判を求めた場合でも裁判所の判断で調停を行うことができ、まずは調停をするというのが一般的です。また、裁判所の手続といっても遺産について調べてもらえる訳ではないので、どのような遺産があるのか等の資料は各共同相続人が用意します。  

 調停の手続は、調停委員と裁判官が相続人の話を聞き、対立する相続人に伝えるという形で話し合いを行っていきます。調停の中で話し合いがまとまれば、調停調書が作成されます。1回で終わるものもあれば、何回も回数を重ねて行われることもあり、調停がまとまらない場合には、遺産分割審判の手続に移り、裁判で決着をすることとなります。  

 調停調書にも確定した審判にも、確定判決と同じ「決まった内容を強制的に実現する」効力があります。そのため遺産分割調停でも遺産分割審判でも、自分の考える通りの結果になるとは限りませんが、自分の主張はしっかりとしていかなければなりません。  

 裁判所での手続と聞くと大変なことのように思えますが、遺産分割調停では調停委員の方や裁判官が相続人の間に入ってくれますので、直接話し合いをする必要がなくなり、ご質問者様の状況のように、皆様が感情的な状態よりは冷静に話し合いを進められると思われます。遺産分割協議が整わないなと感じたら、裁判所に関与してもらうことも解決法の一つです。


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お金に困らないための~税金の相続対策 生前贈与した財産に係る相続税の取扱い

 被相続人から相続開始前3年以内に受けた贈与財産は、贈与税の申告をして納税をしていた場合でも、相続税額の計算上、相続財産に加算することになります。




 父が平成28年12月25日に亡くなりました。父は資産が多く、将来の相続税を心配し、以下のとおり毎年贈与をしていました(注:暦年課税で申告)。相続が発生したときには父の財産は基礎控除額の範囲内(4100万円)でしたので、相続税の申告はしなくても大丈夫でしょうか。なお法定相続人は姉(私)と妹の2人です。




 結論から言うと、相続税の申告は必要となります。
 相続開始前3年以内に受けた贈与財産は、相続発生時に相続財産として相続税が課税されるからです。
  これは、亡くなる直前に生前贈与をすることにより、相続税が不当に軽減されることを防止するためです。




  次のケースで考えてみましょう。




 平成25年10月1日に生前贈与を受けた財産は、相続開始前3年超の財産ですので、相続財産に加算はされません。
 また、平成28年に生前贈与を受けた財産は、相続開始年分の贈与となり、贈与税は課税されません。  
 贈与税も支払い、相続対策として行ってきた生前贈与ですが、相続発生日(亡くなった日)から過去3年以内に贈与された財産は、相続財産に加算され、相続税の課税対象となってしまいます。
 今回のケースの、お父様の相続税の計算は以下のとおりとなります。



※贈与税控除額 
 被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受け、相続税の課税価格に加算されたものがある場合には、その加算された贈与財産に対して課税された贈与税額は、算出相続税額から控除します。

  • ①平成25年分 170,000×1,300,000/(1,500,000+1,300,000)=78,928円
  • ②平成26年分 90,000円
  • ③平成27年分 40,000円      合計:208,928円

 なお、今回のケースには当てはまりませんが、納付した贈与税額が相続税額よりも多い場合であっても、超過する部分の贈与税の返還を受けることはできません。また、加算税、延滞税、利子税の額も控除する贈与税額には含まれません。

 ただし、相続開始3年以内であっても、以下に掲げる財産は加算されません。

《加算されない贈与財産の範囲》(国税庁HPより)

 被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。

  • (1)贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
  • (2)直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • (3)直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • (4)直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

(注)暦年課税
 贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。今回は「暦年課税」により課税された生前贈与財産の加算について説明しています。 「暦年課税」は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた残りの額に対して税金を課するものです。1年間にもらった財産の合計額が110万円までの場合、贈与税はかかりません(申告不要)が、相続税の生前贈与加算の対象となります。

<まとめ>

  • ・相続などにより財産を取得した人が、その相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産には相続税が課税されます
  • ・贈与税の基礎控除内(110万円)でも、相続開始前3年以内に贈与を受けていれば相続財産に加算され、相続税の課税対象となります
  • ・贈与税の配偶者控除を受けている場合等、加算されない贈与財産もあります

<参考条文>
〈相法19 21の2~6 相令4 借法70の2 70の2の2~5 相基通19-1 19-2〉


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