お知らせ

 今回は相談事例を通じて、生前贈与の法律上の取扱いについてご紹介します。

 相続対策として、生前に子供(推定相続人)に贈与したいと思っています。贈与税や相続税についての留意点はよく聞くのですが、実際に相続が起きた場合に何か相続人間で問題になることはあるでしょうか。

 最近、相続対策としての「生前贈与」の活用をよく耳にします。皆さんの中にも、お子様へ生前贈与をされている方も多いのではないでしょうか。

 贈与税や相続税についての取り扱いについては、心配でご自身で調べたり税理士さんに相談したりする方も多いと思われますが、この生前贈与、実際に相続が起こったときの取り扱いについては意外と知られていないのが実情です。

 民法上、相続人間での遺産分割協議や遺留分減殺請求をする際には、相続人に対してされた生前贈与は、「特別受益」といわれ、生前贈与がされた時期に関係なく、各人の具体的相続分や遺留分の算定に、生前贈与を含めて(これを「持ち戻し」といいます)計算されてしまいます。贈与者の意思で特別受益の持ち戻しを免除することは認められていますが、それでも相続人の遺留分を侵害することはできず、将来的に生前贈与を巡って争いになることは決して少なくありません。

 特に、事業承継の一環として自社株を生前贈与した場合などは、相続開始時の評価で持ち戻しの計算をしますので、贈与当時から株価が上昇していると、想定外の事態に陥ることもあります。

 このように、生前贈与の取り扱いは、税務上だけでなく、相続人間でも重要な問題となりますし、その計算過程も複雑ですので、贈与をご検討の際には一度専門家に相談されることをおすすめします。

 

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 夫婦間での贈与について、税を優遇してもらえるような特例はありますか?

 親から子へ贈与した場合には、贈与税率が軽減されると聞きました。その他、親から子への贈与には将来の相続税との課税の選択ができる相続時精算課税制度があるとも聞いています。このように親子間の贈与では、色々な特例が設けられているようですが、夫婦間での贈与について、税を優遇してもらえるような特例はないのでしょうか?

 夫婦間の贈与で適用ができる特例といえば、「贈与税の配偶者控除」があります。

 贈与税の配偶者控除とは、夫婦間で、居住用の不動産又は居住用の不動産を取得するための金銭(以下、居住用不動産等)を贈与した場合、110万円の贈与税の基礎控除以外に最大2,000万円を控除することができる特例です。すなわち居住用不動産等については、最大2,110万円まで無税で贈与することができます。
 この制度の適用を受けるためには、原則として贈与を受けた年の翌年3月15日までに、一定の書類を添付した贈与税の申告書を税務署へ提出する必要がありますが、贈与税の申告が期限から遅れても、期限後申告を行うことで適用を受けることができます。
 この特例を適用した贈与は夫婦間で財産を分散させ、将来の相続税負担を軽減させるための対策として、広く検討されています。また相続開始前3年以内の贈与であっても、配偶者控除額に相当する部分は相続財産に加算する必要がありませんので、場合によっては相続直前の対策として非常に高い効果を発揮できます。
 ただし、同じ配偶者からの贈与については一生涯に一度しか適用できません。重複適用にご注意ください。

<制度の適用要件>

  1. 贈与する時点で、婚姻期間が20年以上である夫婦間の贈与であること。
  2. 贈与を受けた財産が、受贈者が居住するための不動産又は居住するための不動産を取得する金銭であること。
  3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その不動産又はその金銭で取得した不動産に、受贈者が居住し、その後も引き続き住み続ける見込みであること。

<添付書類>

  1. 戸籍謄本又は抄本(贈与後10日を経過した日以後に取得したもの)
  2. 戸籍の附票の写し(贈与後10日を経過した日以後に取得したもの)
  3. 居住用不動産の登記事項証明書等
  4. その居住用不動産に居住した日以後の住民票の写し

<まとめ>

  • 贈与税の配偶者控除とは、居住用不動産等を2,110万円まで無税で贈与できる特例です。
  • 同じ配偶者からの贈与について、一度しかこの特例の適用をすることはできません。
  • 相続開始前3年以内の贈与であっても、一定額までは相続財産に加算されません。

<根拠条文> 相法21の5、21の6、相規9、措法70の2の4

 

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